製造業のDXでは、データやシステムを使って業務を変え、その結果をKPIで確かめます。目標に合う指標の選び方、導入前後の比較方法、利用状況・業務成果・投資効果の評価を解説します。
この記事で分かること
- 01目標とKPI目標に関係する仕事の変化を測る
- 02製造現場の指標不良・納期・停止・作業時間の例
- 03導入前後の比較対象と計算方法をそろえて評価する
- 04投資効果業務の成果と費用の関係を調べる
製造業のDXとKPI・KGIの関係
KPI(重要業績評価指標)は、目標に向けた業務の進み具合や成果を測る指標です。KGI(重要目標達成指標)は、企業や取組で最終的に目指す成果の達成度を測る指標です。
KPIを選ぶ際は、達成したい目標と、そのために変える業務を具体的にします。例えば納期遅延を減らす取組なら、納期遵守率を最終成果の指標にし、工程の停滞時間や生産の進み具合を関連するKPIとして調べる考え方があります。
進捗を共有するシステムを導入した場合は、製造の状況を把握する時間や、納期遅れがどう変わったかを測ります。データを使って仕事がどう変わり、その変化が目標に結び付いたかを評価します。
部門ごとの数値を改善しても、会社全体では在庫や欠品が増えることがあります。生産量や調達費用などを評価するときは、後の工程や納品への影響も確認します。
製造現場で使うKPIの例
KPIは、改善したい業務と、変化を知りたい対象に合わせて選びます。次の表は、製造現場の指標と測定範囲の例です。
| 改善したいこと | 指標の例 | 測定する範囲 |
|---|---|---|
| 工程内の不良を減らす | 工程内不良率 | 生産数量に対する不良発生数量の割合。廃棄と手直しを含める範囲を決める |
| 納期を守る | 納期遵守率 | 評価対象の数量に対する、計画期日内に納めた数量の割合 |
| 設備の故障による停止を減らす | 故障停止時間 | 対象設備が故障で停止した時間の合計 |
| 日報の集計作業を減らす | 日報集計時間 | 対象の日報を集計するために人が作業した時間 |
割合で測る指標は、分子と分母の対象を一致させ、100を掛けて百分率で示します。納期遵守率を数量で測る場合は、どの製品と期日を評価対象にするかを決めます。
設備の改善には、設備総合効率(OEE)も使われます。OEEは時間稼働率・性能稼働率・良品率を掛け合わせ、停止、速度低下、不良による損失をまとめて評価する指標です。
OEEを計算するときは、各割合を0〜1の値で掛け合わせ、最後に100を掛けて百分率にします。数値が変わった理由は、停止時間、運転速度、不良のそれぞれから調べます。
導入前後を比べるための測定方法
導入前の実績を、比較の基準として記録します。対象の製品・設備、集計期間、計算式、数える範囲を明確にすると、前後の値が同じ内容を表しているか確認できます。
不良率の比較例として、同じ製品を同じ基準で検査し、導入前は1,000個中20個、導入後は2,000個中30個が不良だったと仮定します。不良率は前が2%、後が1.5%で、差は0.5ポイントです。不良品の数は増えていますが、生産数量に対する割合は下がっています。生産数量と不良数、検査基準、手直し品を数える範囲を併記して、どの条件で得た割合か分かるようにします。
日報や設備ログ、検査記録などから、KPIの計算に必要なデータを取得します。部署やシステムで項目名が同じでも意味や単位が異なる場合は、集計する対象と単位をそろえます。
目標値は導入前の実績を踏まえ、どの業務をどれだけ改善するかと、達成する期限を設定します。改善に使える人員や設備、業務を変える方法も具体的にします。
製品の構成や生産量、稼働日数が変わると、同じ業務でも集計結果が変わります。製品別・設備別の値や生産量も調べ、DX施策による変化を評価します。
検査基準や測定方法を変えた場合は、変更した内容と時期を記録します。導入前後の差に、検査や集計の方法を変えた影響が含まれるか確認します。
システムの利用状況と業務成果の評価
入力率や利用率は、システムを使う業務がどの程度実施されているかを示します。日報入力の電子化なら、入力された日報の割合と、集計にかかる時間や入力漏れの件数を合わせて見る方法があります。
入力率が上がった場合は、情報を集める手間や確認待ちがどう変わったかを調べます。利用状況と仕事の結果を結び付けることで、業務を変えた効果を評価できます。
期待した成果が出ない場合は、必要なデータが集まっているか、その情報を使って業務を変えられているかを確認します。成果が表れるまでに時間がかかる取組では、評価する期間も検討します。
製造分野DX度チェックのような自己診断は、取組の現状と課題を把握するために使えます。業務がどれだけ改善したかは、不良率や停止時間など、その業務に合うKPIで確かめます。
ROIによる投資効果の評価
ROI(投資利益率)は、投資に対してどれだけ利益を得たかを割合で示す指標です。導入・運用費が0円より大きく、金額効果を同じ期間で集計する単純な計算では、次の式を使います。
ROI(%)=(金額効果-導入・運用費)÷導入・運用費×100
この式の金額効果は、DX施策によって減った費用や増えた利益を、導入・運用費を差し引く前の額で集計します。費用には、機器・ソフトウェア、導入設定やデータ移行、教育、利用料や保守など、評価期間内に必要なものを含めます。
短縮した作業時間について、残業代や外注費が実際に減ったか、他の仕事に使える時間が増えたかを確認します。短縮した時間を人件費で換算した見積額と、実際の支出減を区別して記録します。
同じ効果を、作業時間の換算額と残業代の減少額の両方に重複して含めないようにします。金額に換算しにくい効果は、納期や品質などのKPIでも評価します。
まとめ
製造業のDXで使うKPIは、達成したい目標と変える業務に合わせて選びます。対象と計算方法をそろえた導入前後の値から、仕事の進み具合や成果がどう変わったかを確かめます。
システムの利用状況、業務の結果、ROIによる投資効果は、それぞれ測る対象が異なります。数値が変わった理由と他の業務への影響を調べ、次の改善に役立てます。
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よくある質問
KPIとKGIはどう違いますか?
KGIは企業や取組で最終的に目指す成果の達成度を測り、KPIはその目標に関係する業務の進み具合や成果を測ります。何を目指す取組かを明確にし、その目標に関係する指標を選びます。
製造業のDXでは、どのKPIを使えばよいですか?
不良を減らすなら工程内不良率、設備の故障停止を減らすなら故障停止時間など、変えたい業務に対応する指標を選びます。指標を改善した際の納期や品質、在庫などへの影響も確認します。
導入前のデータがない場合はどう評価しますか?
これから業務を変える場合は、導入前に必要な実績を測定します。すでに変えた場合は、日報や検査記録など、過去のデータから同じ範囲で集計できるか確認します。比較できる記録がなければ、その時点から実績を蓄積し、以後の改善を評価します。
作業時間の短縮を、そのまま費用削減としてよいですか?
短縮した時間の換算額と、残業代や外注費など実際に減った支出を区別します。他の業務に使える時間が増えた効果も記録し、ROIに含める金額は重複しないように計算します。