製造業のDXで設備をネットワークへ接続するときは、不正な通信や操作への対策が必要です。設備の動作や人の安全に配慮しながら、侵入経路の把握、通信・権限の制限、更新、復旧の準備を進めます。
この記事で分かること
- 01工場で守る対象設備の制御と操業を守る理由
- 02侵入経路への対策接続先・遠隔保守・操作権限の制限
- 03安全に更新する条件事前試験と計画的な設備停止
- 04復旧に必要な準備保存するデータ・機器と復元試験
工場のセキュリティ対策が必要な理由
工場のセキュリティでは、情報漏えいの防止に加え、設備が意図どおりに動くことと人の安全を守ります。設備や工程を監視・制御する技術をOTと呼びます。
制御プログラムや設定の不正な変更、通信の妨害は、設備の誤動作や生産停止につながることがあります。一方、対策として導入するソフトや通信制限が、設備の動作に影響する場合もあります。製造・保全と情報システムの担当者が協力し、操業への影響を踏まえて対策を進めてください。
工場設備と侵入経路の把握
最初に、工場内の設備・端末と、それぞれの接続先を一覧や構成図にまとめます。制御機器、生産管理システム、クラウド、外部からの保守接続のつながりを追い、保護する範囲を把握します。
次の表を参考に機器やソフトの情報を整理し、設備の追加や接続変更に合わせて更新します。
| 調べる対象 | 一覧・構成図に残す情報 |
|---|---|
| 制御機器 | 機種、設置場所、用途、管理部門、接続先 |
| 端末とソフト | 利用者、OSやソフトの名称・バージョン、更新の対応状況 |
| 通信経路 | 接続元と接続先、やり取りするデータ、外部保守の経路 |
持ち込むパソコンやUSBメモリーも、不正なプログラムが入り込む経路になります。許可した機器・媒体だけを使い、接続前に不正なプログラムが含まれていないか検査する手順を設けます。
ネットワークの調査ソフトが機器へ問い合わせる処理も、制御機器に影響することがあります。稼働中の設備を調査するときは、その方法を事前に試し、必要に応じて計画停止中に実施してください。
通信と操作を必要な範囲に制限する
業務システムと設備の制御システムのネットワークを分け、その境界で必要な通信だけを許可します。データの送り先と送信元、用途を把握し、ファイアウォールなどで不要な通信を制限します。ネットワークを分けても、同じ区画内で不正なプログラムが広がる可能性は残るため、端末や操作権限への対策も必要です。
遠隔保守の接続を作業に必要な範囲へ絞る
外部から保守作業を行う場合は、作業者、対象設備、作業時間を限定し、現場の担当者にも予定を伝えます。不要になった接続権限は無効にし、保守用の接続を開いたままにしない運用にします。
例えば、遠隔保守で設備の状態を確認する場面を仮定します。対象設備への閲覧権限を許可し、設定を変更する作業は変更内容の承認を受けてから行います。作業終了時に接続権限を無効にし、実施した操作の履歴を残します。
遠隔接続には多要素認証も検討します。これは、パスワードに加えて認証機器などの異なる要素を使い、本人であることを確かめる方法です。認証や接続の仕組みを追加する際も、通常の設備操作や緊急時の作業を妨げないか試してください。
操作権限を絞り、変更の履歴を残す
利用者には業務に必要な操作だけを許可し、データの閲覧と設備設定の変更を区別します。退職や担当変更で不要になった権限、保守作業後も残っている外部担当者の権限は見直します。
接続や設定変更の履歴を残すと、不審な操作があったときに、時刻・利用者・変更内容を調べる手掛かりになります。記録できる内容は機器によって異なるため、保存容量や記録処理の負荷も含めて、取得する履歴を選びます。
設備への影響を試してから更新する
OSやソフトの弱点を修正する更新プログラムは、不正な侵入を防ぐ対策の一つです。ただし、更新によって制御用ソフトが動かなくなったり、処理の性能が変わったりする場合があります。
設備の仕様や保守資料を参照し、本番の操業に影響しない環境で動作を試してから、停止できる時間に適用します。作業前には、更新がうまくいかなかった場合に元へ戻す方法も用意してください。
すぐに更新できない設備では、不要な通信や操作の制限などで危険を減らし、適用できる時期を検討します。サポートが終了したOSでは更新プログラムが提供されない場合もあるため、設備の更新計画と合わせて扱う必要があります。
バックアップと復旧手順を試す
バックアップには、生産データ、設備の制御プログラム、設定を含めます。保守資料で復旧に必要な専用ソフト、ライセンス、接続用ケーブル、互換性のある交換部品を確認し、必要なものを準備します。
保存先にアクセスできる人や書き換えの可否を制限し、バックアップ自体が不正に変更・削除されないように保護します。
復元試験は、本番の操業に影響しない環境で行います。保存物を復元できるか確認した後、復旧した設備やシステムが必要な監視・制御の機能を果たすかを調べます。
| 確認項目 | 復元試験で確かめること |
|---|---|
| データと設定 | 必要なデータ・制御プログラム・設定を復元できるか |
| 設備の動作 | 復元後に必要な監視・制御の機能が使えるか |
| 復旧時間 | 作業に必要な時間が、操業上許容できる停止時間に収まるか |
復旧前に、戻す設定や設備の状態が安全に起動できる条件を満たすか確認します。操業上許容できる停止時間と、失ってよいデータの期間をあらかじめ定め、復元試験の結果で復旧手順を見直します。
停止中に紙の記録や手作業へ切り替える場合は、安全と品質を守れる作業に限ります。復旧手順と連絡先は、システムが使えないときにも読めるよう、紙などでも保管してください。
まとめ
工場設備をつなぐDXでは、接続経路を把握し、必要な通信と操作だけを許可することが対策の出発点になります。更新や通信制限は設備への影響を試し、復旧の準備にはデータ・設定・必要な機器と復元試験を含めます。
製造・保全と情報システムの担当者で、安全に停止・再開できる条件を共有して進めましょう。
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よくある質問
インターネットにつながなければ安全ですか?
直接つながっていなくても、保守用のパソコンやUSBメモリーを通じて不正なプログラムが入り込む可能性があります。許可した機器・媒体だけを接続し、持ち込み時の検査も行います。
業務系と制御系は完全に切り離す必要がありますか?
必要なデータ連携がある場合は、用途と通信経路を把握したうえでネットワークを分け、境界で通信を制限する方法があります。生産や安全に必要な通信まで止めないよう、設備の動作を踏まえて構成を設計します。
不審な通信があれば、すぐに切断してよいですか?
対象の通信を止めたときに、設備の監視・制御と安全の確保にどのような影響が出るかを確認します。事前に用意した安全な停止・隔離の手順に沿い、現場と情報システムの担当者が連携して対応します。