レガシーシステムは、必要な改修や保守が難しくなったシステムです。製造業のDXに向けて、更新する機能の選び方と段階移行、新旧システムのデータ連携、通信が止まった場合の備えを解説します。
この記事で分かること
- 01更新の優先順位業務の目的・保守期限・接続先
- 02段階移行新旧の並行運用と切替・復帰の準備
- 03データ連携入出力の仕様と二重登録への対策
- 04クラウドの使い分け通信断時の動作と旧システムの廃止
レガシーシステムの課題と更新の優先順位
仕様が分からない、変更できる人が限られるといった状態では、必要な機能を追加したり、不具合を直したりすることが難しくなります。システムの使用年数に加え、業務の変化に対応できるか、保守を続けられるかを調べます。
更新を検討するときは、生産管理や受発注の機能を、実際の仕事の流れと対応付けて調べます。たとえば生産実績を集計する機能なら、実績を入力する端末、保存するデータ、集計結果を使う業務まで確認します。接続先との関係が分かると、変更によって影響を受ける範囲を調べられます。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 業務の目的 | 必要な機能と、標準的な製品の機能へ合わせられる業務 |
| 保守の継続 | 保守期限、仕様書の有無、改修できる人と体制 |
| 接続先 | データの入力元、保存先、ほかのシステムとの受渡し |
| 業務の停止 | 切替中に止まる業務、許容できる停止時間、代替手順 |
保守期限が迫る機能や、必要な改修ができない機能は、更新を急ぐ必要があるか検討します。生産や出荷への影響が大きい機能では、切替中の代替手順も含めて移行方法を考えます。保守を続けられ、必要な変更に対応できる機能は、既存システムで活用する選択肢もあります。
自社独自の処理は、その処理が現在の業務にも必要かを見直します。標準的な製品の機能に業務を合わせられる部分は、既存の仕様をすべて作り直す対象から外せるか検討してください。
段階移行の進め方と切替時の確認
段階移行は、既存システムの機能を順に新しいシステムへ移す方法です。未移行の機能を旧システムで使いながら、移した機能の動作を確かめます。新旧の機能を分離し、必要なデータを連携できることが前提です。
たとえば参照用の帳票を更新処理から分離できる場合は、帳票の表示を先に移す方法を検討できます。複数の機能が同じ処理やデータに強く依存している場合は、まとめて移す範囲も検討します。移行順は、接続先への影響と、新旧が共存できる期間から検討します。
生産実績の入力と修正を旧システムに残し、参照用の帳票を新システムへ移す場面を仮定します。この場合、新しい帳票は旧システムの実績を受け取って表示します。入力した実績が正しく送られるか、修正後の値も帳票へ反映されるかを試します。
並行運用中は、受注や生産実績をどちらのシステムに入力し、どちらへ送るかを決めます。両方で同じデータを変更できる構成では、変更が競合した場合の扱いも必要です。移行前に試験用の環境で、入力から集計・出力までを試し、データと結果が正しいか確認してください。
切替には、データの同期や動作確認のために業務を止める時間が必要になる場合があります。切替作業と試験、問題が起きた場合に戻す作業について、所要時間を事前に確かめます。
旧システムへ戻す場合は、新システムで入力した受注や実績も戻せるように準備します。切替前のバックアップには、その後に追加・変更したデータが含まれないためです。戻す判断をする条件と担当者を決め、データを含む復帰手順を試しておきます。
新旧システム間のデータ連携
APIは、ほかのソフトウェアから機能やデータを利用するための仕組みや取り決めです。CSVは、表の各項目の値をカンマで区切って記録するファイル形式です。どちらを使う場合も、送信元と受信先が必要なデータを入出力できるかを確認します。
連携する項目は、双方で意味が一致するように対応付けます。たとえば、同じ品番が同じ製品を指しているか、数量の単位が一致しているかを確認します。CSVでは、項目の並びや文字コードなど、出力側と取込側の仕様も合わせます。品番の先頭にゼロがある場合は、そのゼロを含めて同じ品番として取り込まれるか、実際の形式で試します。
更新頻度は、受け取ったデータをいつ業務で使うかから決めます。日次の集計なら定時の受渡しを検討でき、頻繁な更新が必要な業務では、その頻度で送受信・処理できる構成を選びます。APIが使えること自体は、必要な速さでデータが反映される保証にはなりません。
連携では、受信先の処理結果も確認できるようにします。通信の応答が返らなくても、相手のシステムへの登録は済んでいる場合があります。そのまま再送すると二重登録につながるため、登録済みかを判別する方法と、再送してよい条件を設けます。
生産実績を送った後、応答が返らない場面を仮定します。同じ実績を送り直す際は、最初の送信と同じ処理番号を付け、受信側が処理済みかを識別して結果を返す構成を検討します。番号と処理結果を受信側に記録し、再送しても実績が重複しないかを試します。
処理に失敗したデータを誰が確認し、どう修正して再処理するかも決めておきます。
クラウドへ移す機能と工場に残す機能
クラウドのサービスと、社内のサーバーで動かす機能を組み合わせる方法もあります。社内にサーバーなどを設置して運用する方法をオンプレミスと呼びます。移行先は、設備との接続、通信が止まった場合の業務、保守方法から検討します。
通信が止まっても続ける必要がある業務は、工場内の機能で続けられるか、代替手順が必要かを確認します。データを工場内に一時保存する構成では、保存できる量と期間、通信復旧後の送信を試します。クラウドと接続できる場合と、接続できない場合の両方で、必要な操作を確認してください。
移行後は、旧システムを使う人や、そこへ接続する機能が残っていないかを調べます。過去の生産実績や品質記録を参照する方法も用意し、必要な業務とデータを引き継いでから、旧機能の停止を判断します。
まとめ
製造業のレガシーシステム対策では、変更・保守を難しくしている問題と、業務上必要な機能を明らかにします。保守期限、接続先、生産や出荷への影響から、残す範囲と更新の優先順位を検討してください。
段階移行では、新旧の機能が共存できるかを確かめ、入力から出力まで試験します。切替後のデータを含めて戻せるように準備し、通信が止まった場合の業務も確認しておきます。
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よくある質問
古いシステムは必ず刷新すべきですか?
年数が経っていても、保守を続けられ、必要な機能改良ができるシステムは活用できます。業務の変更に対応できない箇所や保守期限を調べ、更新する範囲を判断してください。
CSV連携でも段階移行はできますか?
新旧システムが必要なデータをCSVで入出力でき、業務に必要な更新頻度を満たす場合は、連携方法として検討できます。項目の意味と入出力の仕様を合わせ、処理の失敗や二重登録への対策も用意します。
段階移行なら業務を止めずに切り替えられますか?
段階的に移す場合も、データの同期や切替のために停止時間が必要になることがあります。移行方法と接続先との関係を調べ、試験と復帰にかかる時間を含めて、停止できる時間内に作業が終わるか確かめてください。