鋳物の引け巣は、凝固収縮を溶湯で補えない部分に発生します。厚肉部や交差部の空洞を手掛かりに、肉厚・凝固順序・押湯を調べる方法と、形状や鋳造方案を見直す考え方を解説します。
この記事で分かること
- 01発生の仕組み凝固収縮と補給不足の関係
- 02原因の調査欠陥位置から凝固の順序を調べる
- 03形状と方案肉厚・押湯・冷し金を検討する
- 04対策の検証解析と実物の検査で結果を確かめる
鋳造の引け巣ができる仕組み
引け巣は、冷却や凝固に伴う体積の減少を溶湯で補えず、鋳物に空洞が残る欠陥です。内部に空洞ができる内引けと、表面がくぼむ外引けがあります。
凝固が進む間は、まだ液体の金属が周囲から流れ込み、不足する体積を補います。周囲が先に固まって補給が途切れると、遅く固まる部分に引け巣が生じます。
鋳物にできる孔には、ガスによるものもあります。原因を調べる際は、次のような状態を観察し、製造条件と合わせて検討します。
| 状態 | 見え方 | 調べる内容 |
|---|---|---|
| 内引け | 鋳物内部の空洞。加工後に現れる場合もある | 空洞の位置、断面の凹凸、周囲の肉厚 |
| 外引け | 鋳物表面のくぼみ | くぼみの位置と、その下の肉厚・内部の状態 |
| ガスによる孔 | 丸みを帯びた孔や、内面が滑らかな孔 | 孔の断面、溶湯や鋳型から生じるガス、巻込み |
外観や断面の観察で原因が分からない場合は、金属組織や成分などの追加調査を行います。引け巣とガスによる空洞が重なる場合もあるため、観察結果から必要な調査を選びます。
発生位置と凝固順序の調べ方
引け巣が見つかった位置を図面に示し、表面からの深さ、周囲の肉厚、押湯までの形状を確認します。加工後に見つかった場合は、鋳造した素材の形状と加工で削った範囲を使って、元の空洞位置を調べます。
厚肉部と補給が途切れる箇所を調べる
厚肉部やリブの交差部、ボスの根元は周囲より冷えにくく、最後に固まる部分になりやすい箇所です。引け巣の位置がこれらの箇所と重なるかを確認します。厚肉部以外でも、最後に固まり、溶湯の補給が不足する部分には引け巣が生じます。
押湯から欠陥部までの間に薄い部分があると、そこが先に固まり、補給の通路を塞ぐことがあります。製品の断面と鋳型内での向きを調べ、どこから固まり、どこに溶湯が残るかを検討します。
継続して作っていた製品に引け巣が増えた場合は、良品時と不良発生時の図面・方案、材料、注湯温度や注湯時間を比較します。欠陥位置と変更内容を結び付け、調べる箇所を絞ります。
押湯と冷し金による引け巣対策
押湯は、鋳物の収縮で不足する金属を補給するために設ける部分です。冷し金は、局部の冷却を速めるために鋳型へ配置する部材で、金属や黒鉛などを使います。押湯を使う鋳造方法では、製品から押湯へ向かって凝固が進み、遅く固まる箇所へ溶湯を補給できるように検討します。
押湯から製品へ補給が続く形状にする
押湯に溶湯が残っていても、製品との接続部が先に固まると、必要な箇所へ補給できません。押湯の位置・大きさと、接続部の形状、欠陥部までの距離を合わせて見直します。
冷し金を検討するときは、冷やす部分と、その結果として最後に固まる部分がどこへ移るかを確認します。押湯による補給と冷し金による冷却を組み合わせ、製品内に補給できない部分が残らない形状を考えます。
押湯を設ける位置は、補給できる範囲に加えて、鋳造後に切り離せる形状かも確認します。接続部の切断と仕上げに使う空間を、製品図と作業方法から検討します。
製品形状と鋳造条件の見直し
局部的に厚い部分や急な肉厚変化がある場合は、必要な強度や組付け寸法を保ちながら、形状を変更できるか検討します。リブの交差部やボスの根元など、厚みが集中する箇所を断面で確認してください。
検討例として、厚い取付ボスと押湯の間に薄い壁がある断面を考えます。ボスを肉抜きする案、押湯の接続位置を変える案、局部の冷却を変える案について、必要な強度と凝固の順序を比較します。薄い壁が先に固まる場合は、ボスへの補給が続く経路を検討します。
補給経路の途中が先に固まる場合には、その部分の冷え方や、押湯へつながる形状も検討します。各部の肉厚を調整するときも、溶湯が必要な箇所へ届く凝固順序を考えます。
鋳鉄では黒鉛の晶出と鋳型の条件も確認する
鋳鉄では、黒鉛が晶出するときの膨張が、金属の収縮に影響します。成分や溶湯処理、鋳型の強度、形状などが引け巣の発生に関わるため、押湯の寸法に加えて、これらの条件を良品時と比較します。
注湯温度を変える場合は、その材質と製品形状に合う温度範囲で検討します。温度を変更すると湯の流れや凝固の状態も変わるため、変更後は引け巣に加えて、湯回りやガスによる欠陥も確認します。
凝固解析と実物の検査で引け巣対策を確かめる
凝固解析では、製品や方案の形状、材料、鋳造条件を使って、固まる順序や引け巣が生じやすい箇所を予測します。実際の欠陥位置と予測結果を比較し、押湯や冷却条件を変えたときに、最終凝固位置がどう動くかを調べます。
解析の入力には、図面の版、材質、鋳型、注湯温度などを記録します。実際と異なる条件で予測した場合は、その違いを確認してから試作品の欠陥位置と比較します。
解析結果と実物を対応させるため、欠陥位置を示した断面図と、試作品の検査位置をそろえます。方案を変更した試作品について、予測した箇所に空洞が残っていないかを調べ、検査結果を解析の入力条件と比較します。
解析で良い結果が出た方案は、実際に鋳造した製品でも検査します。検査方法と合否基準は、材質、肉厚、欠陥の位置と大きさ、製品に必要な性能に合わせて決めます。
改善後の品質と作業負担を確認する
対策を試す前に、変更する形状や条件と、検査する箇所を決めます。比較する製品では検査方法と合否基準をそろえ、引け巣の位置、大きさ、発生数がどう変わったかを記録します。複数の条件を変更する場合も、各試作の変更内容を残してください。
記録例として、試作品の識別番号、変更した方案・条件、検査位置、検査方法、合否基準と結果を一つの記録へ対応させます。対策前後で調べる位置と検査条件をそろえると、空洞の残り方を比較できます。
押湯を大きくしたり接続部を変えたりすると、使う金属量や、押湯を切り離して仕上げる作業が増える場合があります。品質の改善に加えて、鋳込みに使った金属量と、切断・仕上げの作業時間を比較します。
対策後に続けて作った製品でも同じ検査を行い、改善した状態が続くかを確認します。効果を確認できた形状と鋳造条件を、図面や作業手順へ反映してください。
まとめ
引け巣が見つかったら、欠陥の断面と図面から、遅く固まる部分と溶湯の補給が途切れる箇所を調べます。肉厚、押湯、冷却条件を見直し、製品内に補給できない部分が残らないように形状と方案を検討してください。
試作品の検査で対策の結果を確かめ、継続して作った製品の品質と、切断・仕上げなどの作業負担も確認しましょう。
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よくある質問
引け巣は押湯を大きくすれば改善しますか?
押湯から製品へ通じる部分が先に固まる場合は、押湯の容量を増やしても補給が続かないことがあります。欠陥部までの距離や接続部の形状、凝固の順序を調べ、位置と大きさを検討します。
引け巣とブローホールはどう見分けますか?
欠陥の位置と断面を観察し、凹凸のある空洞か、丸みを帯びた滑らかな孔かを調べます。観察結果に、凝固の順序、溶湯や鋳型の状態を合わせて判断します。必要に応じて金属組織や成分を追加で調査します。
加工後に見つかった引け巣は、加工で発生したものですか?
引け巣は鋳造時の冷却・凝固で生じます。内部にあった空洞が機械加工で表面に現れる場合があるため、鋳造した素材の形状と加工した位置を使って、空洞があった箇所を調べます。