鍛造品の割れは、製品の表面や内部に亀裂が生じる不良です。原因を調べるには、割れを発見した工程と発生位置を確認し、素材、加熱温度、変形の進み方、金型の状態を調べます。原因の調査と、対策後の検証で確認する内容を解説します。
この記事で分かること
- 01割れの観察亀裂の位置と形、発見時点を記録する
- 02割れの原因材料の延性と加工中の力の関係を知る
- 03加工条件と発見時期温度区分と検査の時期を確認する
- 04対策の検証割れの検出と要求品質を確認する
鍛造品の割れの観察と記録
鍛造品の割れには、表面に現れる亀裂と、内部で生じる亀裂があります。表面は目視や顕微鏡で位置と形を観察し、内部は超音波探傷など、材質や形状に合う方法で調べます。割れを発見した工程を記録し、その前後の検査結果と製造履歴から、発生した段階を検討します。
例えば熱処理後の検査で見つかった割れを調べる際は、鍛造直後の検査結果と熱処理の記録を確認します。前の工程で同じ箇所をどの方法で検査したかも、発生時点を考える手掛かりになります。割れの写真、位置、方向、大きさを残し、製造ロットと工程の記録に対応付けます。
例えば、熱処理前に目視検査を行い、熱処理後に浸透探傷試験で亀裂を見つけた場合は、前後で検出条件が異なります。熱処理中に割れたと判断するには、前の検査で同じ部位の亀裂を検出できたか、表面の状態や検査範囲も調べる必要があります。
| 調査項目 | 記録する内容 | 原因の調査に使う情報 |
|---|---|---|
| 割れの位置・形 | 部品全体と亀裂の写真、位置、方向、大きさ | 割れのある部位の形状、金型との接触、成形中の材料の流れ |
| 発見した段階 | 検査した工程、日時、対象箇所、検査方法 | その前後の検査結果と、加熱・成形・冷却・熱処理の記録 |
| 製造ロット | 使用材料、使用設備、製造日時、加工条件 | 割れの発生状況と、材料・設備・金型・潤滑の変更との関係 |
| 検査結果 | 外観、破面・断面、組織、非破壊検査の結果 | 亀裂の範囲や進展、材料の状態と、検査で確認できた範囲 |
鍛造品の割れに関係する素材・加熱・成形・金型
材料には、破断するまで変形できる性質である「延性」があります。鍛造中の変形に材料が耐えられなくなると、割れが生じる場合があります。材料の種類や金属組織、表面のきずなどを、材料証明や受入れ時の検査結果から確認します。加熱状態も、材料の変形しやすさに関係します。熱間鍛造では加熱不足で変形しにくくなり、過熱によって材料の性質を損なう場合もあるため、設定温度と実際の素材温度、加熱から成形までの時間を確認します。
材料を圧縮する鍛造でも、材料の流れ方によって一部に引張応力が生じます。例えば、材料を上下から押し縮める据込みでは、金型との摩擦が大きいと材料の胴が樽のように膨らみ、側面が引っ張られて割れにつながることがあります。成形中の割れを調べる際は、割れた位置と、材料の変形、金型との接触、潤滑の状態を対応付けて考えます。金型の摩耗や形状、潤滑条件を変更した場合は、その変更前後の製品も比較します。
表面に筋状のきずがある場合は、材料表面が内部へ折れ込んだ「折込み」も調べます。折れ込んだ面に酸化膜や潤滑剤が残ると、接触した面が十分に接合せず、きずとして残ることがあります。断面の観察と成形途中の材料の流れを合わせて、引張応力による割れか、折込みによるきずかを検討します。
割れを見つけたときの対応例
- STEP 1対象品を識別割れがある製品と同じ条件で作った製品を確認
- STEP 2流出を防ぐ対象品を隔離し、必要な範囲を検査
- STEP 3原因を調べる割れの状態と材料・加工条件を確認
- STEP 4対策を検証変更後の割れの発生状況と品質を確認
割れを発見した段階と加工温度を確認する
熱間鍛造は材料を加熱して変形しやすくする方法で、冷間鍛造は常温付近で加工する方法です。材料の変形しやすさや必要な加工力、潤滑の条件が異なります。温度の記録を比較するときは、測定位置と時点をそろえます。炉の設定温度と、炉から出した後の素材温度は、区別して記録します。
熱間鍛造で確認する条件
熱間鍛造では、素材の材質に適した加工温度と実際の温度を確認します。炉から出して成形するまでの待機・搬送時間、金型との接触による温度変化も調べます。温度と割れの関係を調べる際は、同じ材料・形状で正常に成形できたときの記録と比較します。過熱が疑われる場合には、金属組織の観察も検討します。
冷間鍛造で確認する条件
冷間鍛造では、材料の延性と、一回の成形で与える変形の大きさや各工程での形状を確認します。材料の流れが不均一になると、表面だけでなく内部にも引張応力が生じ、割れる場合があります。潤滑の状態は、金型との摩擦や材料の流れに関係します。潤滑剤や被膜の種類・状態、金型の表面、加工荷重の変化を確認します。
鍛造後の冷却・熱処理
鋼の焼入れでは、冷却による収縮や金属組織の変化に伴う膨張により応力が生じ、割れる場合があります。部品の形状や材質によって応力の生じ方が変わるため、加熱温度や保持時間、冷却方法と割れた部位を確認します。熱処理後に割れを発見した場合は、鍛造直後から発見までの検査結果と製造記録を調べ、どの段階で生じたかを検討します。
材料と要求品質に応じた割れの検査方法を決める
検査方法は、材料の性質と、表面・内部のどこを調べたいかに応じて選びます。浸透探傷試験は表面に開いた亀裂など、磁粉探傷試験は強磁性材料の表面や表面近くの傷を調べる方法です。内部の傷を調べる方法には超音波探傷試験がありますが、材質や形状、傷の位置・向きに応じた検査条件が必要です。原因を詳しく調べる場合は、破面や断面、金属組織を観察し、亀裂の起点や進み方、材料の状態を調べます。観察結果を材料や加工条件の記録と組み合わせて、割れが生じた理由を検討します。
対策後は、変更した条件を記録し、変更前と同じ検査方法・判定基準で割れの発生状況を比較します。必要な寸法、硬さ、強度なども、図面や品質基準に基づいて確認します。
比較する製品の検査部位、表面の処理状態、検出できるきずの条件、抜取り検査の個数もそろえます。検査で亀裂が見つからなかった場合は、記録した検査範囲と検出条件の中での結果として評価します。
まとめ
鍛造品の割れの原因を調べるには、亀裂の位置と形を観察し、材料の状態、温度、変形、金型との接触や潤滑の条件を確認します。発見した工程と発生した工程を検討するために、鍛造直後や熱処理後など、各段階の検査記録を使います。原因に応じて条件を変更した後は、割れの発生状況と要求品質を確認し、対策の効果を評価します。
よくある質問
鍛造品の割れの原因は材料だけで決まりますか?
材料のほか、温度、成形中の変形、金型との摩擦、鍛造後の冷却や熱処理も関係します。割れの位置と形、発見した時点を確認し、材料と製造の記録から原因を調べます。
熱間鍛造と冷間鍛造では、何を確認しますか?
どちらも割れの状態と材料・加工条件を調べます。熱間鍛造では加熱から成形までの温度、冷間鍛造では材料の延性や各工程の変形、潤滑の状態などを確認します。
対策の効果はどのように確認しますか?
変更した条件を記録し、変更前と同じ検査方法・判定基準で割れの発生状況を比較します。寸法や硬さ、強度など、製品に必要な品質も確認します。