射出成形の不良は、成形条件を一つ変更すれば必ず改善するものではありません。製品形状、金型、材料、成形機、周囲環境が関係し、一つの対策が別の不良を招くこともあります。
この記事で分かること
- 01ヒケ・反り・ウェルド・ショートの特徴
- 02製品設計・金型・材料・条件を確認する方法
- 03外観基準と重要寸法を合意するポイント
- 04対策の履歴を標準条件に反映して再発を防ぐ方法
不良対策では、症状を正しく記録し、発生位置と条件の関係を確認して原因候補を絞ります。ここでは、射出成形に関わる人が把握しておきたい代表的な不良として、ヒケ・反り・ウェルドライン・ショートショットを取り上げ、設計と量産管理の観点から整理します。
射出成形の不良対策は症状の定義と再現条件の確認から始める
同じ名称で呼ばれる不良でも、発生位置や形状によって原因が異なります。まず良品との差を写真、寸法、重量、発生率で記録し、いつ、どのキャビティや金型内の位置で発生したかを確認します。
発生位置と成形履歴を残す
多数個取り金型では、どのキャビティで発生したかを識別します。材料ロット、乾燥条件、成形機、金型温度、開始直後か連続運転中かも記録します。発生率だけでなく、金型内の発生位置の偏りや時間による変化を確認すると、原因候補を絞りやすくなります。
一度に複数条件を変えない
圧力、速度、温度、時間を同時に変更すると、どの条件が有効だったか分からなくなります。安全性と設備の許容範囲を守りながら、一項目ずつ変えて結果を記録します。成形条件の調整だけで無理に合格基準を満たそうとせず、金型や製品形状の修正が必要かどうかも判断します。
ヒケは厚肉部の収縮と保圧不足を中心に確認する
ヒケは、成形品の表面が局所的にくぼむ現象です。リブやボスの裏側、肉厚が大きい部分で発生しやすく、内部が冷えて収縮すると表面にくぼみが生じます。
厚肉とリブ・ボス形状を見直す
基本肉厚に対してリブやボスが厚すぎると、局所的な冷却遅れが生じます。必要な剛性と締結機能を保ちながら、肉抜き、リブ厚、付け根の形状を見直します。意匠面の裏側に構造を置く場合は、試作段階で外観への影響を確認します。
ゲート固化と保圧の伝わり方を確認する
樹脂が冷えてゲートが固まるまで、保圧が成形品の末端まで伝わる必要があります。ゲートが小さい、ヒケ部から遠い、流路抵抗が大きい場合は圧力が届きにくくなります。保圧条件だけでなく、ゲート位置と大きさ、材料温度、冷却の均一性を確認します。

反りは収縮差・配向・冷却差を抑えて防ぐ
反りは、成形品が設計形状から曲がったりねじれたりする不良です。場所や方向による収縮差が主な要因で、製品形状、ゲート、繊維配向、金型温度が関係します。
肉厚や形状の偏りを抑える
肉厚の偏り、片側だけに設けたリブ、広い平面部は、収縮のばらつきを生みやすくなります。肉厚をそろえ、剛性が偏らない形状を検討します。金型から取り出した直後の変形だけでなく、時間経過や吸水後の寸法も用途に応じて確認します。
ゲートと冷却回路のバランスを確認する
樹脂の流れ方向によって分子や繊維が配向すると、方向別の収縮差が生じます。ゲート位置を変えると配向が変わるため、流動解析や試作で反りの方向を確認します。金型の固定側と可動側、厚肉部周辺の冷却差も調べます。
ウェルドラインは樹脂の合流位置と接合状態を管理する
ウェルドラインは、穴や障害物を回り込んだ樹脂、または複数のゲートから流れた樹脂が合流した跡です。外観上の線だけでなく、接合が不十分だと強度低下につながります。
合流位置を重要部から遠ざける
荷重が集中する爪、ねじ締結部、外観面に合流位置が来る場合は、ゲートや肉厚、流れを誘導する形状を検討します。ウェルドラインを完全になくせない形状もあるため、外観や強度への影響が小さい位置へ移し、許容基準を決める考え方が現実的です。
空気抜きと樹脂温度を確認する
合流部に空気や発生ガスが残ると接合を妨げます。金型のベント(空気抜き)が適切かを確認します。材料の乾燥状態、樹脂温度、金型温度、射出速度も接合状態に影響します。ただし、材料の劣化を招くような高すぎる温度設定は避けてください。
ショートショットは流動抵抗と空気の逃げ道を調べる
ショートショットは、樹脂が製品形状の末端まで充填されず、一部が欠ける現象です。薄肉部、流動末端、空気が閉じ込められる箇所で発生しやすくなります。
| 不良 | 主な確認箇所 | 設計側で検討する内容 |
|---|---|---|
| ヒケ | 厚肉、保圧、ゲート固化 | 肉抜き、リブ・ボス厚 |
| 反り | 収縮差、配向、冷却差 | 肉厚均一化、剛性バランス |
| ウェルドライン | 合流位置、温度、空気抜き | 穴・ゲート・重要部の位置関係 |
| ショートショット | 流動抵抗、材料供給、ベント | 薄肉部と流動距離の見直し |
材料供給と成形機の状態を確認する
計量不足、逆流防止部品の摩耗、ノズル詰まり、材料供給の不安定がないかを確認します。必要な射出容量と圧力に対して成形機が適切かも重要です。射出圧力や温度などの設定値を上げる前に、設備と材料の基本状態を点検します。
ゲート・肉厚・ベントを見直す
細いゲート、長い流動距離、急な薄肉化は流動抵抗を高めます。また、樹脂に押された空気が逃げられないと充填を妨げます。ゲート位置と断面、製品肉厚、ベントの位置と詰まりを確認し、必要に応じて金型修正を検討します。
合格基準と変更履歴を残して再発を防ぐ
対策後は、良品条件だけでなく、変更した理由、確認結果、許容範囲を記録します。外観限度見本、重要寸法、測定方法、キャビティ別の識別を合意すると、関係者間で合否判定を統一しやすくなります。
不良名や金型部位の意味は「プラスチック成形の専門用語解説」、関連する設計・発注のテーマはプラスチック成形の記事一覧からご確認いただけます。用語を統一し、現品・写真・データを合わせて共有することが再発防止の基礎です。
まとめ
射出成形の不良は、製品設計、金型、材料、成形条件を分けて確認します。ヒケは厚肉と保圧、反りは収縮差、ウェルドラインは合流状態、ショートショットは流動抵抗と空気抜きが主な確認点です。
対策では発生位置と条件を記録し、一度に複数条件を変えずに効果を検証します。合格基準、限度見本、標準条件、変更履歴を発注者と成形メーカーで共有することが、安定量産と再発防止につながります。
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よくある質問
射出圧力を上げればショートショットは直りますか?
改善する場合もありますが、材料供給、成形機、ゲート、薄肉、空気抜きなどが原因なら根本対策になりません。設備の許容範囲内で、原因を特定しながら対策を検討します。
ウェルドラインはすべて不良ですか?
形状上発生を避けにくい場合があります。外観と強度に影響する位置かを確認し、位置の移動、接合状態の改善、許容基準の設定で管理します。
不良対策は金型完成後でもできますか?
成形条件や金型修正で対応できることはありますが、製品形状に原因があると制約が大きくなります。設計の初期段階で肉厚・ゲート・離型・外観面を成形メーカーと確認しておくほうが、対策の選択肢は広がります。