製造業の予知保全は、設備の状態と保全履歴を分析し、故障の兆候や劣化の進み方から点検・補修の時期を判断する取り組みです。設備と金型で使うデータ、運転条件の比較、通知後の対応と試験導入の評価方法を解説します。
この記事で分かること
- 01保全方式の違い周期・状態・予測による判断
- 02データの集め方設備の状態と金型の摩耗を調べる
- 03異常通知への対応点検の結果を補修につなげる
- 04導入効果の検証検知結果と保全の負担を比べる
予知保全とほかの保全方式の違い
故障した後に修理する方法を事後保全と呼びます。故障を未然に防ぐ予防保全には、周期に沿う定期保全や、状態を調べて対応する状態監視保全、将来の故障を予測する予知保全があります。
予知保全では、状態データと点検・補修履歴を分析し、劣化の進行や故障の兆候を捉えて、点検・処置の時期を判断します。次の表では、保全を行う時期の判断に注目して違いを示します。
| 保全方式 | 時期を判断する基準 | 保全の内容 |
|---|---|---|
| 事後保全 | 故障が発生した後 | 原因を調べて修理する |
| 定期保全 | あらかじめ定めた周期 | 計画に沿って点検・交換する |
| 状態監視保全 | 現在の状態や変化の傾向 | 状態に応じて点検・処置する |
| 予知保全 | 分析から予測した将来の故障 | 予測を保全時期の判断に使う |
予知保全は、定期点検をすべて置き換えるものではありません。停止による影響や、安全・品質上の条件、故障の起こり方に合わせて保全方式を組み合わせます。
故障の起こり方に合うデータを集める
最初に、対象設備のどの部位で、どのような故障が起こり得るかを整理します。軸受の損傷や金型の摩耗など、調べたい変化を捉えられる測定方法を選びます。
状態データには、設備番号、対象部位、測定時刻、製造していた品番、運転速度や負荷などの条件を対応付けて記録します。運転条件が変わったときは、その前後を区別してデータの傾向を調べます。
例えば、設備の運転速度を上げた後に振動の測定値が大きくなった場面を仮定します。同じ動作と速度の条件で測定値を比較し、振動の周波数と点検結果も調べて、損傷の有無と必要な処置を判断します。
設備の状態と運転条件を合わせて調べる
回転機では、振動データを集めて異常の有無や変化を調べる方法があります。診断機器には対象となる設備や運転条件があるため、測定する部位と、速度・負荷などの適用条件を確かめます。
振動の大きさを基準値と比べる診断と、周波数を分析して異常箇所を推定する診断では、分かる内容が異なります。測定値が高い場合は、運転条件の変化や点検結果も調べ、原因と必要な処置を判断します。
センサーを取り付ける際は、設備の動作や作業を妨げない位置と方法を選びます。欠損や通信断が起きた時刻、計測器を交換した時期を記録し、その前後の測定値を区別して確認できるようにします。
金型の摩耗と使用・修理履歴を合わせて調べる
金型では、金型番号と部位を使って、ショット数、成形条件、修理内容、摩耗・破損の記録を同じ金型の履歴として確認できるようにします。
製品の寸法や外観の変化を調べ、金型の点検・寸法測定の結果と合わせて摩耗の進み方を追います。ショット数を記録することに加え、どの部位がどれだけ変化し、いつ補修したかを残すことが、次の点検時期を考える材料になります。
製品寸法が変化した際は、成形条件の変更履歴と金型の測定結果を比較します。製品検査やショット数の記録に加え、同じ部位の点検結果と補修履歴を集め、摩耗の傾向を確認します。
異常の通知を点検・補修へつなぐ
通知を受ける人、点検を行う人、設備の停止と再開を判断する人を定め、夜間・休日の連絡先も確認します。
異常を知らせる仕組みを入れたら、通知を受けて現場で状態を調べ、必要な処置を行う流れまで試します。通知された設備・部位・時刻を手がかりに、運転条件と点検結果を調べます。
異常の表示と現場で見つかった状態を結び付け、補修や交換が必要かを判断します。停止や点検の安全手順に従い、安全・品質への影響と設備の使用条件を踏まえて対応します。
点検後は、確認した状態と補修内容を記録し、次の判定に使います。通知した時刻から点検・処置までにかかった時間も残すと、連絡や作業のどこで待ち時間が生じたかを見直せます。
試験導入で検知結果と保全の負担を比べる
最初は、故障による停止や品質への影響が大きく、対象部位の変化を測定できる設備に絞ります。現在の点検・補修にかかる時間と費用を残し、試験導入後の結果と比べます。
試行では、通知の数、点検で分かった状態、通知されずに起きた故障を調べます。次の表は、検知結果から実際の対応までを評価する際の着眼点です。
| 評価する対象 | 調べる内容 | 見直す内容 |
|---|---|---|
| 異常の検知 | 通知と点検結果の一致、見逃した故障 | 測定条件、収集するデータ、判定基準 |
| 点検への対応 | 通知から点検・処置までの時間 | 通知先、連絡方法、点検の進め方 |
| 時間と費用 | 点検・補修の時間、導入・運用費用 | 監視する範囲と保全作業の負担 |
故障が起きなかった短い期間のデータでは、対象とする故障を検知できるか評価できない場合があります。確認できた運転条件と、まだ検証していない故障や条件を分けて残します。
通知が多くても異常が見つからない場合は、測定条件や判定基準を調べます。見逃した故障があれば、その前に状態の変化が記録されていたか、監視していた部位やデータが適切だったかを見直します。
通知を受けても点検・処置が遅れる場合は、連絡方法と担当者の作業量を見直します。改善した方法を再び試し、検知結果と点検負担を確かめてから対象を広げます。
まとめ
製造業の予知保全では、防ぎたい故障に合う状態データと点検・補修履歴を使い、保全の時期を判断します。設備や金型を絞ってデータ収集から点検・処置まで試し、検知結果、対応にかかる時間、保全の負担を比べながら改善します。
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よくある質問
予知保全と予防保全の違いは何ですか?
予防保全は故障を未然に防ぐための保全で、予知保全もその中に位置づけられます。予知保全は状態データから将来の故障を予測し、点検や処置の時期を判断する方法です。
どの設備から予知保全を始めるべきですか?
故障による停止、安全・品質への影響が大きく、対象部位の変化を捉えられる設備を選びます。点検や補修の結果を残せる範囲で試し、検知と対応の両方を評価します。
振動や温度のデータだけで故障を判断できますか?
振動や温度が高いという情報だけで、故障の原因や処置の必要性を確定することはできません。設備の運転条件、測定した部位、点検結果を調べ、必要に応じて詳しい診断を行います。