製造業の品質管理のDX推進|検査記録の活用と製造履歴の追跡

更新日 2026/10/05(月)
製造業のDX
製造業の品質管理のDX推進検査記録の活用と製造履歴の追跡

検査結果を製品や製造ロットと結び付けると、不具合が起きたときに使った材料や加工工程を調べられます。品質管理のDXを進めるために、測定値の転記を減らし、検査記録を異常への対応や不良の改善に使う方法を解説します。

この記事で分かること

  1. 01検査の入力測定値の転記を減らす
  2. 02異常への対応保留と再検査の結果を共有する
  3. 03製造履歴の追跡不具合の影響が及ぶ製品を探す
  4. 04品質の改善条件をそろえて測定値を比べる

測定値の転記から検査記録の活用へ

品質検査では、製品の寸法や外観、機能などが基準に合っているかを調べ、その結果を記録します。紙の検査表に書いた測定値を表計算へ入力し直している場合は、対応する測定器からデータを直接取り込むことで、数値を書き写す作業を減らせます。目視検査の結果など、人が判断する項目は、その場で端末へ入力する方法が考えられます。

検査記録を共有し、基準外の結果への対応や製造条件の見直しにつなげることが、品質管理のDXを進める目的です。

測定値と検査した製品を結び付ける

検査記録には、測定値とともに、製品・ロット・工程、図面の改訂番号、測定方法、判定基準を残します。これらをそろえると、再検査や不具合の調査で、どの条件で測定した結果かを確認できます。

次の表は、寸法検査の記録を後から使うための項目例です。

記録する内容項目の例後から調べること
対象の識別製品、ロット、工程、設備、図面の改訂番号どの製品を、どの条件で作ったか
検査条件測定箇所、測定機、方法、判定基準同じ条件で測った結果を比較できるか
結果と処置測定値、合否、再検査、保留、処置理由基準外の結果にどう対応したか
記録の変更訂正前後の値、訂正者、時刻、理由どの値を、なぜ訂正したか

直接取り込む場合も、測定器の出力方式とソフトウェアの対応を調べ、製品名・測定項目・単位が正しく保存されるかを試します。測定機器は校正などの管理を続け、検査に使える状態を保ちます。

基準外の結果を保留・再検査につなげる

基準外の値が出たときは、対象製品を保留として記録し、社内の品質手順に従って次工程や出荷へ進むのを止める運用にします。例えば、現場が測定値を入力し、品質部門または責任者が基準外の処置を承認する役割分担が考えられます。

担当者は測定方法や製造条件を調べ、再検査を行った場合は最初の結果と再検査結果の両方を残します。結果を共有するときは、処置の内容と、誰が出荷を認めたかまで追えるようにします。システムの合格表示と出荷承認の関係は、実際の品質手順に合わせます。

検査の目的に合わせて結果を使う

受入検査、工程内検査、完成品の検査では、確認する対象や結果の使い方が異なります。以下は、検査記録を次の判断に使う例です。

実施場面主な判断残す記録の例
受入購入した材料・部品を使えるか受入ロット、検査結果、使用可否
工程内加工状態を調べる必要があるか工程、設備、測定値、条件、時刻
出荷前対象ロットを出荷できるか出荷ロット、合否、成績書、承認

測定不能や通信断で結果が記録されなかった場合は、未記録の項目を識別できるようにします。後から入力するときは、残っている測定記録を使い、元の測定時刻と入力した時刻を区別します。値を確認できなければ、社内の品質手順に沿って再検査や出荷保留の判断につなげます。

検査記録から製造履歴を追跡する

製造業でいうトレーサビリティは、製品の生産・加工・流通の履歴を追跡できることです。不具合が見つかった製品の番号から、使った材料、加工した設備、検査結果をさかのぼって調べます。同じ材料や設備の影響が疑われる場合は、それらを使ったほかの製品と出荷先を探します。

この追跡には、製品の識別番号と各工程の記録が結び付いていることが必要です。

番号が変わる箇所でも履歴をつなぐ

材料の受入ロットと製品の製造ロットが異なる場合は、どの材料をどの製品に使ったかを記録します。材料ロットの分割や統合で新しい番号を付ける場合は、元のロットと変更後のロットの対応を残します。個々の製品を追跡する場合はシリアル番号、製造のまとまりで追跡する場合はロット番号が使われます。追跡する単位や範囲は、製品の用途、顧客要求、不具合時に調べる必要がある範囲に合わせます。

連携後も、識別子の欠損、重複、訂正履歴を定期的に点検します。過去のロットを選び、検査結果から製造履歴へ、材料の記録から対象製品へ実際にたどれるかを試すと、記録のつながっていない箇所が分かります。分割・統合したロットも試験対象に含め、材料ロットを起点に、関係する製品が抜けなく見つかるかを確かめます。

品質データを比べて改善対象を選ぶ

同じ製品の測定値を時刻順に並べると、値が変化し始めた時点や、ばらつきの変化を調べられます。設備別や材料ロット別に結果を比べることで、詳しく調べる設備や材料を絞れます。こうしたグループごとの違いを調べる考え方を、品質管理では層別と呼びます。

比較するときは、測定方法や判定基準が同じデータを使います。図面の改訂や設備の変更があった場合は、変更前後を区別して結果を見ます。

グラフは異常の候補を見つける手段であり、原因の確定そのものではありません。変化した時点の製造条件や測定の状況を調べ、対策を行った後も同じ条件でデータを集めて効果を確かめます。

検査作業を限定して導入前後を比べる

まずは、転記や記録探しに手間がかかる製品・検査作業で試します。現場で端末を操作し、測定から記録までの時間、入力漏れ、製品を取り違えた記録の有無を調べます。

過去の検査結果を探す時間も測り、導入前と比べます。操作が検査の妨げになる場合は、入力項目や画面の順序を見直し、無理なく使えることを確かめてから範囲を広げます。

まとめ

製造業の品質管理のDXでは、測定値の転記を減らし、検査記録を基準外の結果への対応、製造履歴の追跡、品質の改善に使います。測定値を製品と検査条件に結び付け、必要な記録を実際に探せるか、同じ条件で結果を比べられるかを確かめます。取り組む検査作業を限定し、入力や検索の手間と記録の正しさを導入前後で検証しながら、製品や工程の範囲を広げていきます。

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よくある質問

紙の検査記録を電子化するだけで十分ですか?

紙の内容を保存することに加え、必要な製品の結果を検索できるか、測定値を集計できるかが重要です。検査記録を異常への対応や品質の改善に使うところまで試します。

すべての測定器から自動で取り込めますか?

取り込めるかどうかは、測定器の出力機能とソフトウェアの対応によります。対応する機器で実際のデータを取り込み、対象製品・項目・単位が正しく保存されるかを確認します。

トレーサビリティはどこまで記録すべきですか?

製品の用途、不具合時に遡る必要がある範囲、顧客要求、工程の実態で決めます。材料から対象製品と出荷先まで追う必要がある場合は、番号が変わる箇所を含めて、記録をたどれるようにします。

検査記録の訂正はどのように残しますか?

訂正前後の値、訂正者、時刻、理由を残す運用にします。入力間違いの訂正と再検査による値の変化を区別し、訂正や承認ができる人の操作権限を、社内の品質手順に合わせて設定します。