金型のトラブルには、表面が削れる摩耗、刃先などの欠け、接触部のかじり、荷重による変形などがあります。損傷が生じる仕組みと、プレス・射出成形・ダイカストで異なる材料や熱の影響を説明します。
この記事で分かること
- 01損傷の種類摩耗・欠け・かじり・変形の違い
- 02接触と荷重表面が傷む仕組みと負荷の影響
- 03工法による違い樹脂・冷却水・加熱と冷却の影響
- 04原因の調べ方損傷面と使用条件から分かること
金型トラブルの種類と損傷の見え方
金型は、製品材料との接触や、加工・成形時の荷重と熱を受けて使われます。表面の材料が減る、刃先の一部が欠ける、接触する金属が付着するなど、使われ方によって異なる損傷が生じます。
主なトラブルの状態と、発生の仕組みの例を示します。
| トラブル | 金型に生じる変化 | 発生の仕組みの例 |
|---|---|---|
| 摩耗 | 表面が削られたり、はがれたりして材料が減る | 冷間加工で硬い粒子が金型面を削る |
| 欠け・割れ | 刃先や角部が欠ける、亀裂が広がる | 大きな負荷や繰返し荷重で亀裂が発生・進展する |
| かじり | 接触部に相手の金属が付着し、面が荒れる | 金属面が局所的に結び付き、すべるときに材料が移る |
| 塑性変形 | 力を取り除いた後も形が元に戻らない | 金型内部の応力が材料の降伏強度を超える |
| 腐食 | 表面が化学的な作用で傷む | 樹脂から発生する腐食性ガス、冷却水や湿気などが金型材に作用する |
これらは損傷の例です。熱間金型では、熱疲労による細かな亀裂がつながり、欠けや摩耗につながる場合もあります。
摩耗・かじりを引き起こす接触と金型材料
冷間加工の金型では、製品材料に含まれる硬い粒子や表面の硬い突起が、金型面を削ることがあります。摩耗への抵抗は、金型材の硬さや、材料中にある硬い炭化物の状態によって変わります。
金属同士の接触面では、微小な部分が強く結び付く「凝着」も起こります。そのまますべると、結び付いた部分が引きはがされ、一方の材料が相手の面へ移ります。
金型の材料が引きはがされると摩耗となり、製品材料の金属が金型面へ付着すると、かじりにつながります。接触する金属、面の状態、潤滑、表面処理は、この凝着や移着に関係します。
摩耗やかじりを抑えるには、金型材と表面処理の組合せ、接触面の状態、潤滑条件を検討します。鋼材の硬さを変える場合は、欠けや割れへの抵抗も含めて材料を選ぶ必要があります。
欠け・割れ・変形に関わる荷重と金型材料
冷間加工の金型では、刃先や角部に一時的な大きい負荷がかかり、欠けが生じることがあります。繰返し荷重によって小さな亀裂が進み、欠けや割れへつながることもあります。
亀裂の発生や進展には、金型の形状と材料の性質が関係します。鋭い角部や加工痕は応力が集中する箇所になり得るため、損傷が始まった位置と周囲の形状を調べます。
欠けや割れに抵抗する性質を靭性といいます。金型材では硬さと靭性の関係を考え、摩耗への強さと、欠け・割れに耐える性質の両方を検討します。
応力は、材料の内部に生じる単位面積当たりの力です。金型内部の応力が材料の降伏強度を超えると、力を取り除いても元に戻らない塑性変形が起こります。これは金型の一部が失われる欠けとは異なり、形が変わって残る損傷です。
工法で異なる摩耗・腐食・ヒートチェック
射出成形金型の摩耗・腐食を起こす材料と環境
ガラス繊維で強化した樹脂の射出成形では、強化材が金型の摩耗に関係します。摩耗の進み方は、樹脂の種類や強化材の量、金型材、硬さ、表面処理の組合せによって変わります。
ガラス繊維の含有量を40%・50%・60%とした特定のポリアミド樹脂の試験では、同じ金型材と成形条件でゲート部の摩耗量を比較しています。この試験では、含有量が多い条件で摩耗量が増えました。実際の材料選定では、使う樹脂の銘柄と強化材の量を確認し、使用する条件での耐摩耗性を検討します。
樹脂から発生する腐食性ガスや、冷却水、周囲の湿気によって金型が腐食する場合もあります。樹脂やガスに触れる面か、冷却水に触れる場所かを確かめ、損傷した場所にどの物質が接していたかを調べます。
ダイカスト金型では加熱と冷却の繰返しで亀裂が生じる
ダイカスト金型では、加熱と冷却の繰返しによって表面に細かな亀裂が生じることがあり、これをヒートチェックといいます。温度の変化によって、金型表層に引張りと圧縮の応力が繰り返し作用することが関係します。
ヒートチェックの発生には、金型材の高温での強度や靭性、金型表面の加工状態、局所的な加熱や冷却の状態が影響します。亀裂が生じた場所の温度変化と冷却条件を、材料や表面の状態とともに検討します。
金型トラブルの原因を調べる方法
摩耗やかじりでは、材料が減った場所と、金属が付着した場所を観察します。接触していた製品材料や金型部品、潤滑の状態を調べることで、表面が削られたのか、凝着して材料が移ったのかを検討できます。
欠けや割れでは、破面から亀裂が始まった位置や進んだ方向を調べます。外観や顕微鏡による観察と、金型材の性質、使用時の荷重や環境の情報をもとに、破損の仕組みを検討します。
熱や腐食が関係する損傷では、金型の温度と冷却の状態、樹脂から発生するガスや冷却水など接触する物質も調査に必要です。発生時の使用条件と、材料・表面処理・潤滑などを変更した時期を確認し、観察した損傷との関係を調べます。
例えば、絞り金型の同じ位置に金属の付着があり、成形品に縦傷が生じた場面を仮定します。金型の付着位置と製品の傷の位置、潤滑剤の塗布の偏り、接触面の形状や粗さを確認します。潤滑条件や表面の仕上げを変更した場合は、変更箇所と条件を記録し、試し成形後の傷と付着の状態を同じ検査項目で確認します。
まとめ
金型のトラブルは、硬い粒子による摩耗、金属同士の凝着、荷重による亀裂や変形、熱の繰返しや腐食など、異なる仕組みで生じます。工法と接触する材料に応じて、関係する負荷や環境も変わります。
損傷した場所と面の状態を観察し、金型材、製品材料、荷重、温度、潤滑などの使用条件から原因を検討しましょう。
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よくある質問
金型の摩耗とかじりはどう違いますか?
摩耗は、金型表面の材料が削られたり、はがれたりして減る現象です。冷間加工のかじりでは、接触した製品材料の金属が金型へ付着することがあります。どちらにも金属面の凝着が関係する場合があります。
金型を硬くすると欠けも防げますか?
金型材は硬さと靭性の関係を考えて選びます。摩耗への抵抗を高める際にも、欠けや割れに耐えられる性質が必要です。損傷の種類と負荷に合わせて鋼種や熱処理条件を検討します。
ヒートチェックとはどのような損傷ですか?
加熱と冷却の繰返しによって、ダイカスト金型の表面に細かな亀裂が生じる現象です。金型表層に繰り返し作用する応力が関係するため、温度変化や冷却条件と、金型材・表面の状態を調べます。
金型の腐食を調べるときは何を確認しますか?
腐食した場所に触れていた樹脂や発生ガス、冷却水、保管中の湿気などを確認します。使用環境と金型材の性質を調べ、表面に生じた変化との関係を検討します。