樹脂成形品の工程能力|寸法特性と成形条件の評価

更新日 2026/10/05(月)
射出成形
樹脂成形品の工程能力寸法特性と成形条件の評価

射出成形の工程能力は、成形品の寸法がどの程度ばらつき、仕様で定めた許容範囲に収まるかを評価するものです。工程能力指数のCp・Cpkを読むと、寸法のばらつきと平均の偏りを調べる手掛かりになります。指数の意味、評価前に確かめる測定方法と工程の安定性、キャビティや材料ロットによる違いの調べ方を解説します。

この記事で分かること

  1. 01指数の意味寸法のばらつきと平均の偏り
  2. 02評価前の確認測定方法と工程の安定性
  3. 03データの扱いキャビティ差と期間全体の変動
  4. 04改善後の評価寸法・外観・機能の確認

射出成形の工程能力とは|CpとCpkの意味

工程能力は、安定した工程から得られる測定値の分布を、仕様で決めた上限・下限と比較して評価します。射出成形品では、組付けや機能に関わる寸法などを対象にします。個々の製品を寸法検査で判定することに加え、同じ条件で作り続けたときに、寸法が許容範囲に収まるかを調べる考え方です。

Cpはばらつき、Cpkは平均の偏りも表す

Cpは、仕様の上限と下限の幅を、工程のばらつきと比べた値です。Cpkは、寸法の平均が上限側や下限側に寄っていることも含めて評価します。

次の式は、上限と下限があり、測定値の分布を正規分布として扱える場合の代表的な計算です。正規分布は、平均を中心に左右対称の釣り鐘形になる分布です。標準偏差は、測定値が平均の周りにどれほど散らばるかを表し、値が大きいほどばらつきが大きくなります。

指数計算式表すこと
Cp(上限 − 下限)÷(6 × 標準偏差)仕様幅に対して、工程のばらつきがどの程度か。
Cpk(上限 − 平均)÷(3 × 標準偏差)と
(平均 − 下限)÷(3 × 標準偏差)の小さい方
平均に近い側の仕様限界まで、ばらつきに対してどの程度の余裕があるか。

計算の仕組みを見るため、下限19.90mm、上限20.10mm、工程の標準偏差0.02mmという仮の例を考えます。平均が20.00mmならCpとCpkはともに約1.67ですが、平均が20.04mmへ寄ると、Cpは変わらずCpkは1.00になります。同じばらつきでも、平均の位置によって上限を超えやすくなることが分かります。

この数値は合格基準を示すものではありません。上限または下限だけが指定されている寸法では、その側の仕様限界を使って評価します。

工程能力の評価前に確かめる測定方法と工程の安定性

製品のばらつきと測定のばらつきを区別する

同じ製品を繰り返し測ったときに値が変わると、その差も測定データのばらつきに含まれます。測定箇所や基準面、製品の置き方、使用する測定機をそろえ、繰り返して測る場合と測定者を替える場合の差を確認します。

樹脂成形品は、成形後の経過時間や温度によって寸法が変化することがあります。ナイロンなど吸湿する材料では、水分の吸収も寸法に影響します。成形後いつ、どの温度・状態で測るかを製品の要求に合わせ、異なる状態の測定値を比較しないようにします。

測定機の分解能や測定方法による差が、調べたい寸法の変動に対して大きくないかも確認します。必要に応じて測定系解析を行い、製品の差と測定による差を調べます。

時間順に並べて工程の変化を調べる

工程が安定しているとは、平均やばらつきが時間とともに変化せず、同じ分布の状態を保っていることです。測定値を採取した順に並べ、管理図などで平均の移動やばらつきの増大を調べます。成形開始後の温度変化、材料の切替え、設備停止や条件変更の時刻と比べると、変化の理由を調べやすくなります。

管理図の管理限界は、工程の測定データから求める、安定性を判断するための値です。寸法の合否を決める仕様限界は、図面や製品の要求によって定められた値で、役割が異なります。

例えば、採取した製品の寸法はすべて図面の公差内ですが、管理図では部分群の平均が管理上限を超えた場合を考えます。製品の寸法合否と、工程の変化を調べる判断は分けて行います。該当する採取時刻の設備停止、材料切替え、条件変更の履歴を調べ、工程の安定性を改めて確かめます。

ヒストグラムなどで分布の偏りや複数の山も確認します。正規分布での評価が適さない場合は、分布に合う方法やデータの変換を検討します。連続した測定値が強く関連して変動する場合も、採取方法や解析方法を確認する必要があります。

短い時間のばらつきと期間全体の変動を区別する

同様の条件で短い時間に採った製品のまとまりを、部分群と呼びます。Cp・Cpkでは、こうした部分群の中のばらつきから求める標準偏差を使います。これに対し、Pp・Ppkは、採取したデータ全体の標準偏差を使い、部分群の間の変動も含めて評価します。

同じ材料ロットの短い区間を測る評価と、材料ロットの切替えを含む期間の評価では、捉える変動の範囲が違います。生産で起こる変動を含むよう採取する期間と間隔を決め、使用したデータと標準偏差の推定方法を残します。一個ずつ採取して評価する場合も、群内と全体の標準偏差の求め方が同じになるとは限りません。

キャビティ・材料ロット・条件変更による違いを調べる

多数個取りではキャビティごとの寸法を確認する

金型の加工寸法や樹脂の流れ、温度などの違いにより、キャビティごとに寸法の平均やばらつきが異なる場合があります。

測定した製品のキャビティ番号と採取順を残し、同じキャビティの時間変化と、キャビティ間の差を調べます。全製品をまとめると、キャビティ間の平均差も全体のばらつきへ加わるため、どのキャビティを改善すべきかが見えにくくなることがあります。

材料ロットと条件変更の影響を確認する

材料ロットや成形条件を変更した時点を測定結果と対応させ、寸法の平均やばらつきがどう変わったかを確認します。材料ロットごとの評価では、各ロット内の安定性を調べます。量産全体を評価するときは、ロット間の寸法の変動も対象に含めます。

樹脂温度、金型温度、保圧、冷却時間などを変更した場合は、変更前と変更後の工程状態を分けて調べます。変更直後の値が落ち着くまでの変化も残し、安定した状態のデータで変更後の工程能力を評価します。比較に使った期間や除外したデータの理由を記録し、その結果がどの生産条件を表すのかを明らかにします。

平均の偏りとばらつきに応じて改善する

Cpに比べてCpkが低い場合は、寸法の平均が仕様範囲のどちら側に寄っているかを調べます。Cpも低い場合は、ばらつきが広がる原因を調べます。成形条件、金型の状態、材料の変化と測定結果を比較し、平均の位置とばらつきのどちらに改善が必要かを確認します。

条件を変更した後は、評価している寸法に加え、ほかの重要寸法、外観、製品の機能が要求を満たすかを確かめます。工程能力指数は採取したサンプルによって変わる推定値なので、合否判断に使う基準と採取方法、データ数、評価期間をそろえて結果を比較します。

まとめ

射出成形の工程能力では、寸法のばらつきと平均の位置を仕様限界に対して評価します。測定方法と工程の安定性を確かめ、キャビティごとの違い、材料ロットや成形条件の変更による変動を調べます。どの期間・条件を評価した数値かを明らかにし、改善後の寸法・外観・機能まで確認することが大切です。

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よくある質問

CpとCpkは何が違いますか?

Cpは仕様幅に対する工程のばらつきを表し、Cpkは平均が仕様範囲のどちら側に寄っているかも含めます。同じCpでも、平均が上限や下限に近づくとCpkは低くなります。

測った製品がすべて寸法合格でも、工程能力を評価する意味はありますか?

採取した製品の合否に加え、工程の平均とばらつきから、同じ状態で作り続けた場合の寸法の収まりを調べられます。評価には、工程の安定性と適切な採取・測定方法が必要です。

多数個取りではキャビティ別に評価しますか?

キャビティごとの平均・ばらつき・時間変化を確認すると、寸法差のある箇所を調べられます。出荷する製品全体の評価では、キャビティ間の違いも含めて検討します。

Cpkはいくつあれば合格ですか?

基準は製品の要求や顧客との取り決めによって異なります。対象寸法、測定方法、採取期間とデータ数、使用する計算方法を確認し、定められた基準で評価します。