ダイカストの設計では、製品の機能と寸法を満たし、溶湯が行き渡って金型から取り出せる形状にします。肉厚・抜き勾配・ゲート・冷却の検討条件と、図面や金型トライで確かめる内容を解説します。
この記事で分かること
- 01製品形状と金型構造金型の分割位置と取り出す方向の関係
- 02肉厚と抜き勾配引け巣・離型傷を抑える形状の考え方
- 03ゲート・排気・冷却溶湯とガスの経路、金型の熱を逃がす方法
- 04金型トライの評価試作品の外観・寸法・内部品質の確かめ方
ダイカスト製品の取り出しと金型の分割を考える
製品の用途や荷重、相手部品との組み合わせ、外観の要求を形状へ反映することが製品設計です。ダイカストでは、その形状を金型で鋳造し、取り出せる構造も検討します。
金型の固定型と可動型が合わさる面を分割面といい、製品にはその境界の線であるパーティングラインが残ります。
型を開く方向へまっすぐ抜けず、引っ掛かる形状がアンダーカットです。製品形状や分割位置を変えるほか、横方向へ引き抜く中子などを使って取り出せる構造を検討します。
製品を金型から押し出す押出ピンは、押した力で製品が変形しにくく、跡が外観や機能を損なわない位置へ配置します。
検討例として、型を開く方向と直角に横穴がある製品を考えます。製品図に型の開く方向と分割位置を示し、横方向へ動く中子の範囲を検討します。穴を後加工する案も含め、機能に必要な穴の位置と、金型から抜ける構造を決めます。
肉厚・リブ・抜き勾配を設計する
肉厚は、必要な強度・剛性と、溶湯が行き渡る形状の両方から検討します。製品の大きさや合金が変われば作りやすい厚さも変わるため、個々の製品に合う肉厚を選びます。
厚肉部を減らし、肉厚をそろえる
局所的な厚肉部は凝固が遅れ、収縮によって内部に空洞ができる引け巣が生じやすくなります。肉抜きやリブを使い、必要な強度・剛性を確保しながら肉厚をできるだけそろえます。
例えば、薄い壁に厚い取付ボスがつながる形状では、ボスの内側を肉抜きし、周囲をリブで支える案を検討します。取付荷重に対する強度・剛性と、厚肉部の凝固、穴や接触面の後加工に必要な形状を確認して、肉抜きの範囲を決めます。
厚さを変える部分は緩やかにつなぎ、内側の隅や外側の角には丸みを付けます。これにより、急激な形状変化による応力の集中を抑え、製品や金型の割れを防ぎやすくします。
抜き勾配と寸法の基準を決める
抜き勾配は、製品を金型や中子から取り出しやすくするため、抜く方向に付ける傾斜です。勾配が不適切だと、製品が金型とこすれ、かじりと呼ばれる傷が付き、変形することもあります。
勾配の大きさは合金や形状、抜く部分の深さに合わせて検討します。傾斜を付けると端と奥で寸法が変わるため、図面には寸法の基準位置を示し、相手部品とはめ合う部分が要求寸法を満たすか確かめます。
後加工する面には、削って仕上げるための仕上げ代を設けます。鋳造後の変形や加工の基準となる面を考慮し、必要な寸法まで加工できる形状にします。
はめ合う面に勾配を付ける場合は、図面上で寸法を指定する断面を決めます。鋳造したまま使う面と後加工する面を分け、加工後の基準面から要求寸法を測れるようにします。
ゲートと排気の経路を設計する
ランナーは溶湯を導く通路で、ゲートは製品の形を作る空洞であるキャビティへの入口です。溶湯を入れる経路と、型の中の空気やガスを外へ逃がす経路を一緒に検討します。
湯流れ解析などで、溶湯が最後に届く場所や、ガスを巻き込んだ溶湯が残る場所を調べます。そこからガスを逃がせるよう、製品部の外に設けるオーバーフローとエアベントの位置・大きさを検討します。
表は、溶湯とガスの経路を作る部分の役割と、設計時に検討する内容を示しています。
| 部分 | 役割 | 設計時の検討内容 |
|---|---|---|
| ランナー・ゲート | 溶湯をキャビティへ導く。 | 製品の肉厚に沿った湯流れと、溶湯が金型へ強く衝突する箇所を検討する。 |
| オーバーフロー | 製品部からガスを巻き込んだ溶湯を受ける。 | ガスを含む溶湯が残る位置に合わせ、配置と容積を検討する。 |
| エアベント | 型の中の空気やガスを外へ排出する。 | 溶湯が最後に届く箇所から、ガスが型の外へ抜ける経路を設ける。 |
製品の仕様や金型の分割位置によって、排気のための部分を置ける場所は限られます。配置できる場所を踏まえて湯流れを比較し、ガスを製品部に残しにくい形状を検討します。
ゲートを切り離した跡が外観面や相手部品との接触面にかかる場合は、切断位置と仕上げ方法を決めます。残る突起や削る範囲が、要求する外観・寸法に収まるかを製品図で確認します。
冷却回路は熱の分布と金型強度から検討する
冷却穴に水を通すと、金型から熱を奪えます。温度が高くなる部位へ冷却穴を配置するときは、穴を加工できる方向や、穴を設けた後の金型の強度も考慮します。
冷却穴と製品面の距離に注意する
冷却穴を製品面に近づけるときは、その間に残る金型の厚さを確認します。金型の厚さが不足したり、内部に大きな温度差が生じたりすると、機械的な力や熱応力によって割れるおそれがあります。
冷却穴の形状と周囲に残る金型の厚さを含め、使用時に受ける力と熱応力を評価します。冷却能力を確保しながら、金型の材料と形状がその負荷に耐えられるかを検討します。
温度分布と製品品質を調べる
金型の各部の温度を測り、局所的に高温になる箇所を調べます。冷却水の流量・温度と、製品の焼付きや引け巣の状態も記録し、冷却回路の位置や冷却条件を見直します。
金型の一部を構成する入子では、内部の冷却回路を立体的に配置する方法もあります。金属積層造形で作る場合は、その材料の強度や疲労に対する性質を確かめ、使用時に受ける力に耐えられる形状を検討します。
金型トライで外観・寸法・鋳巣を評価する
金型トライでは、実際に鋳造した試作品を使い、設計した形状や冷却方法を評価します。製品に求める寸法・外観・内部品質に応じて、確認する箇所と検査方法を選びます。
取り出した製品にかじり傷や押出しによる変形があれば、抜き勾配、押出ピンの位置、金型表面の状態などを調べます。寸法は図面の要求範囲に入るかを測定し、内部欠陥が問題になる部品では鋳巣の位置や大きさも評価します。
冷却回路や鋳造条件を変更したときは、変更前後の金型温度と試作品の品質を比較します。どの形状・条件で作った試作品かを記録し、不具合の位置と状態をもとに製品形状や金型の修正を検討します。
記録の作り方として、試作品ごとに図面の版、測定位置、鋳造条件、冷却水の流量・温度をまとめます。寸法を評価する基準面と、傷・鋳巣を調べる位置を図面へ示すと、条件を変更した試作品を同じ対象で比較できます。
まとめ
ダイカスト製品と金型の設計では、製品に必要な機能と、溶湯の充填・凝固・取り出しを両立させます。肉厚と抜き勾配、ゲートと排気の経路、冷却穴と金型の厚さを関連づけて検討します。
設計した形状は金型トライで確かめ、試作品の寸法、傷や変形、必要な内部品質を評価します。測定した温度や不具合の位置を、製品形状や金型の修正に役立ててください。
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よくある質問
ダイカスト製品の肉厚は薄いほどよいですか?
必要な強度・剛性と鋳造しやすさを満たす厚さにします。局所的な厚肉を肉抜きやリブで減らす場合も、変更後の形状が製品に求める性能を満たすか評価します。
抜き勾配の角度はどう決めますか?
合金、形状、抜く部分の深さをもとに検討します。取り出しやすさに加え、相手部品とはめ合う位置の寸法や、後加工の要否も確かめます。
冷却穴は製品面に近いほどよいですか?
冷却の効果と金型の強度を合わせて評価します。冷却穴と製品面の間の厚さ、穴の形状、金型が受ける力と熱応力を検討し、使用条件に耐えられる冷却回路を決めます。