ダイカスト用材料は、製品に必要な軽さ、強度、耐食性、外観から候補を絞ります。例えば、同じアルミニウム合金でも、鋳造しやすい材質と耐食性に優れる材質では選ぶ理由が異なります。代表的な材料の特徴と、合金記号・表面処理・製品形状を基に選ぶ方法を解説します。
この記事で分かること
- 01材料の特徴軽さ・強度・外観の違い
- 02合金の選び分けADC12とADC6の特徴
- 03耐食性と仕上げ使用環境と表面処理の関係
- 04試作品の評価形状と機能を確かめる方法
ダイカスト用材料は製品の用途から選ぶ
ダイカスト用材料には、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金などがあります。持ち運ぶ製品では軽さ、荷重を支える部品では強度、人の目に触れる部品では仕上がりの良さが、材料を選ぶ理由になります。次の表は、代表的な材料を比較したものです。
| 合金 | 特長 | 用途例 |
|---|---|---|
| アルミニウム合金 | 軽さと強度を両立しやすい | 自動車部品、機械のケース |
| 亜鉛合金 | 細かな形状を作りやすく、めっきに適する | 装飾金具、ドアハンドル |
| マグネシウム合金 | 密度が低く、軽量化に向く | 電子機器の筐体、自動車部品 |
実際に必要な強度や重さは、製品の形状と使い方によって変わります。表の特徴から候補を絞り、使用中の荷重や温度に耐えられるかを具体的な材質で比較します。
亜鉛合金は使用温度と長期荷重も考える
亜鉛合金には、荷重が掛かり続けると時間とともに変形する「クリープ」という性質があります。変形の程度は合金の種類、荷重、温度、使用時間に左右されます。力が長く掛かる部品では、使う温度でどの程度変形するかを調べ、必要な寸法や機能を保てるかを判断します。
マグネシウム合金は製品の形状を含めて重さを比べる
マグネシウム合金は、アルミニウム合金や亜鉛合金より密度が低い材料です。一方、曲がりにくさを表す剛性を確保するため、肉厚を増したり、補強用のリブを設けたりすることがあります。軽量化の効果は、必要な剛性を満たす形状にしたときの製品質量で比較します。
アルミニウム合金は合金記号まで比較する
アルミニウム合金は、けい素、銅、マグネシウムなどを加えることで、強度や鋳造性などを調整した材料です。添加する成分によって、腐食への強さや表面処理への適性も変わります。材料を具体的に比較するときは、「アルミニウム合金」から一歩進め、ADC12やADC6などの合金記号で材質を特定します。
ADC12とADC6の違い
ADC12は鋳造しやすく、切削加工にも適したアルミニウム合金です。ADC6は耐食性に優れますが、鋳造のしやすさではADC12に劣ります。
| 合金記号 | 主な特徴 | 選定時の注意点 |
|---|---|---|
| ADC12 | 鋳造性と切削加工性が良い | 使用環境に対する耐食性と、希望する表面処理への適性 |
| ADC6 | 耐食性に優れる | 薄肉部や複雑な形状まで鋳造できるか |
耐食性を優先して材質を変える場合も、製品の形状を作れるかを合わせて検討します。
材料メーカーの物性表には、引張強さや熱伝導率などの参考値が示されています。数値を比べるときは、試験温度や鋳造後の熱処理の有無など、データの条件をそろえます。製品の性能は形状や鋳造状態にも影響されるため、候補材質を使った試作品で必要な性能を確かめます。
鋳造したままの特性と熱処理後の特性を分ける
アルミニウム合金ダイカストは、通常、鋳造後に溶体化処理を行いません。溶体化処理は、合金の成分を高温で母材中に溶け込ませる熱処理です。高温で加熱すると、鋳造時に内部へ取り込んだガスが膨張し、表面の膨れにつながる場合があります。
熱処理を前提とする製品では、使う合金と鋳造方法が予定する処理に対応するかを製造先へ相談します。比較する物性値が、鋳造したままの状態か、熱処理後の状態かを区別します。試作品も予定する処理を施した状態で評価し、必要な強度に加えて、寸法と外観が要求を満たすかを確かめます。
使用環境に合う耐食性と表面処理を選ぶ
腐食の起こりやすさは、水分や塩分、接触する金属によって変わります。屋内でも結露する場所と、乾燥した場所では必要な防食対策が異なります。
異なる金属が電気的につながり、その部分に導電性のある水分が付くと、片方の金属の腐食が進むことがあります。これが「異種金属接触腐食」です。金属同士の間を絶縁する、水がたまらない形状にするなど、接触状態と水分の両方から対策を考えます。
例えば、屋外で鋼製のねじと接するアルミニウム合金部品を検討するなら、接触部に水がたまるか、絶縁材を組み込めるかを図面で確認します。接触部の配置と水の抜け道を具体化すると、材料と防食対策を合わせて選べます。
表面処理は、材料を選ぶ段階で検討します。アルミニウム合金の表面に酸化皮膜を作る陽極酸化処理では、合金の成分が仕上がりに影響します。装飾性を重視する場合は、陽極酸化処理に適したダイカスト合金も候補になります。
ADC12では、けい素の影響で酸化皮膜が不均一になったり、灰色や黒っぽい色調になったりすることがあります。外観を比べる場合は、見える面の色、光沢、許容する色むらを決め、候補の合金に予定する処理を施した試作品で仕上がりを確かめます。
亜鉛合金では、めっきや塗装によって外観や耐食性を高められます。希望する色や光沢に加え、雨や結露などの使用環境に合う処理を選びます。試作品に表面処理を施し、外観と、使用環境を想定した試験での腐食状態を確かめます。
製品形状と試作品で材料の適否を確かめる
鋳造のしやすさは、材料の性質と製品形状の組合せで変わります。薄い部分では溶けた金属が途中で固まり、先端まで満たせないことがあります。厚い部分では、固まるときの体積の収縮により、内部に空洞が残ることがあります。候補の合金で製品を作れるかは、肉厚、金属を流し込む位置、金型の温度などを合わせて検討します。
試作品では、薄い部分まで形状ができているか、必要な寸法が得られているかを調べます。荷重を支える部品なら、使用中に掛かる力と温度を想定し、必要な強度と剛性を満たすかを評価します。この結果を材料と形状の選定に戻し、量産に使う材質を絞り込みます。
まとめ
ダイカスト用材料は、軽さ、強度、耐食性、外観など、製品に求める性質から候補を絞ります。同じアルミニウム合金でも、ADC12とADC6では鋳造性や耐食性に違いがあります。合金記号まで具体化し、使用環境と表面処理、製品形状を合わせて選ぶことが大切です。最後に、候補材質を使った試作品で必要な形状と性能を確かめます。
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よくある質問
ダイカスト用材料は、何を基準に選びますか?
製品に必要な軽さ、強度、耐食性、外観から候補を絞ります。その材質で求める形状を作れ、使用中の温度や荷重に耐えられるかを試作品で確かめます。
アルミニウム合金ダイカストならADC12でよいですか?
ADC12は鋳造性と切削加工性に優れる材質です。耐食性や表面処理の仕上がりを重視する製品では、ほかの合金との比較も必要です。
軽量化にはマグネシウム合金が適していますか?
密度が低いため、軽量化の候補になります。必要な剛性を得るための肉厚やリブを含め、製品全体の質量で効果を評価します。
表面処理は材料選定に影響しますか?
影響します。合金によって適した処理や仕上がりが変わるため、求める外観と使用環境に合う表面処理を、材質と合わせて選びます。