ダイカスト金型の材料選定|熱疲労・摩耗への耐性と補修性

更新日 2026/10/04(日)
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ダイカスト金型の材料選定熱疲労・摩耗への耐性と補修性

ダイカスト金型は溶湯を受けて形を作るため、加熱・冷却の繰り返しや摩耗に耐える材料が必要です。SKD61と改良鋼の特性、熱処理・表面処理の条件、補修を考慮した選び方を解説します。

この記事で分かること

  1. 01金型に使う鋼材SKD61と改良鋼の選び分け
  2. 02損傷と材料特性熱疲労・摩耗・割れへの対策
  3. 03表面処理の違い窒化とPVDの仕組みと制約
  4. 04補修性の考え方溶接補修と入子交換の判断

ダイカスト金型の材料|SKD61と改良鋼の選び方

溶湯に接する型面や入子には、高温で使う金型に適した熱間工具鋼が使われます。代表的な鋼材がSKD61で、これを基に高温での強度や靭性などを改善した鋼材もあります。靭性とは、亀裂や衝撃による破壊に耐える性質です。改良鋼は銘柄ごとに特性が異なるため、抑えたい損傷と金型の大きさに合う鋼材を選びます。

大きな金型では、焼入れの際に内部が冷えにくく、必要な靭性を得にくい場合があります。そのため、内部まで必要な硬さと組織を得やすい、焼入性を高めた鋼材が選択肢になります。使用する金型の寸法を前提に、候補材の熱処理条件と処理後の特性を比較します。 比較する特性値は、試験時の硬さや温度、試験片の方向が同じ条件かも確かめます。小さな試験片で得た靭性と、厚い金型の内部で得られる靭性は、焼入れ時の冷え方によって差が生じます。

熱がこもる小形の入子には、熱伝導率を高めた工具鋼を部分的に使う方法もあります。水冷孔のあるピンや入子向けの積層造形材料もありますが、造形と熱処理の条件が鋼材とは異なります。使用部位の冷却構造と、材料ごとの加工・熱処理条件を合わせて検討します。

損傷の仕組みと必要な材料特性

ダイカスト金型の表面は溶湯に触れて加熱され、製品を取り出した後に冷却されます。表面と内部の温度差によって膨張・収縮が妨げられ、表面に圧縮と引張りの力が繰り返し作用します。この熱疲労によって生じる細かな亀裂が、ヒートチェックです。溶湯が亀裂へ入り込むと製品に凸状の跡が付き、外観の不良につながります。

熱疲労への対策では、高温での強度と、加熱によって軟らかくなりにくい性質が重要です。硬さを高めるとヒートチェックを抑えられる場合がありますが、同時に靭性が低下することがあります。大きな割れを防ぐため、必要な靭性を保てる鋼種と焼入れ・焼戻しの条件を組み合わせます。

損傷起こり方重視する材料特性
ヒートチェック加熱・冷却の繰り返しによる表面の細かな亀裂高温強度、加熱による軟化への耐性
摩耗接触する部品との摩擦などによる表面の減少使用温度での硬さ、耐摩耗性
焼付き・溶損溶湯の付着や金型との反応、流れによる侵食溶湯への耐侵食性、高温強度
大きな割れ角部などに集中する力や急激な温度変化による破壊靭性

溶湯の流れが強く当たる場所では、材料の性質に加えて湯流れや冷却方法の改善も必要になります。

また、鋳造中の急激な冷却は表面の熱応力を大きくするため、運転時の冷却条件も調整します。鋼材を硬くするための焼入れ時の冷却条件と、金型を使う際の冷却条件は、目的も適切な設定も異なります。

例えば、製品の外観面に細かな凸状の跡が現れ、対応する型面に細かな亀裂が見つかった場合を考えます。金型鋼の高温強度や軟化への耐性、表面仕上げ、加熱・冷却の条件が検討対象になります。一方、冷却孔や角部から深い割れが伸びている場合は、材料の靭性と応力が集中する形状も検討対象です。これは損傷に応じて材料を選ぶための例で、亀裂の深さや再使用の可否は実際の金型を調べて判断します。

窒化・PVDと母材の組合せ

窒化やPVDは金型の表面を改質し、摩耗や焼付き・溶損を抑えるために使われます。両者は硬い層を作る仕組みが異なります。

処理表面を変える仕組み選定時の要点
窒化窒素を鋼材へ拡散させて表層を硬くする鋼種・目的に合う処理方法、化合物層の有無、拡散層の深さ
PVDコーティング気化させた材料などから表面に硬い膜を作る抑えたい損傷に合う膜の種類と母材への密着性

窒化の化合物層は表面にできる層で、拡散層は窒素が鋼材の内部へ入って硬化した部分です。ヒートチェックを抑えたい型面と、焼付き・溶損を抑えたい部位では、必要な層の性質が異なります。前者では化合物層を作らず拡散層を浅くする方法、後者では化合物層を形成して拡散層を厚くする方法が検討されます。損傷の状態と使用部位を前提に処理層を選び、処理後も亀裂や減耗の状態を確かめます。

表面処理を施す母材には、金型に必要な強度と靭性を持たせておきます。処理時の加熱で母材が軟化する場合があるため、鋼種と焼戻し温度に合う処理温度を選びます。処理後の寸法や表面の仕上がりも、金型が作る製品の品質に関わります。

放電加工した面には、溶融・再凝固による加工変質層や微細な亀裂が残る場合があります。亀裂の起点となる層や加工傷を仕上げ研磨などで取り除き、必要な寸法と表面状態を確かめます。

補修を考慮した材料選定

金型の一部が摩耗・損傷した場合には、その部分へ金属を盛る肉盛り溶接で形状を修復する方法があります。補修材は母材との相性に加え、補修部の硬さやヒートチェックへの耐性から選びます。

溶接時の局部的な加熱と冷却による割れを抑えるため、母材と補修材に合う予熱の温度や、溶接後の熱処理の要否を確かめます。後熱の要否や条件は補修材によって異なり、ある補修材で後熱なしの性能が示されていても、他の補修へ同じ条件を使えるわけではありません。

溶接する前には、油や付着した溶湯などの汚れと、損傷部に残る亀裂を取り除きます。補修後は修復部の形状を測定し、必要な探傷検査などで割れや溶接欠陥を調べます。表面処理をやり直す場合も、修復した形状と表面の状態を基に処理条件を決めます。

窒化やコーティングを施した金型は、補修後にその表面処理を再び行えるかも材料選定の条件になります。再処理できるかは補修材や既存の処理層によって変わるため、処理方法と補修方法を合わせて検討します。

交換できる入子として設計されていれば、損傷した部分を入子ごと取り替える方法も選べます。深い割れや広い範囲の変形がある場合は、補修後に必要な寸法と製品品質を保てるかを基に、再使用できるか交換が必要かを判断します。

まとめ

ダイカスト金型の材料は、SKD61や改良鋼の特性を、損傷の起こり方と金型の大きさに合わせて比較します。熱疲労への強さと靭性を両立できる鋼種・熱処理を選び、冷却や表面仕上げも整えます。窒化・PVDの適用や溶接補修後の再処理まで考えることで、使用中の保全に合う材料を選べます。

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よくある質問

ダイカスト金型にはどのような鋼材を使いますか?

溶湯に接する型面や入子には、SKD61などの熱間工具鋼が使われます。高温強度、靭性、焼入性などを改善した鋼材もあり、損傷と部品寸法に合わせて選びます。

硬さを高めれば金型の寿命は延びますか?

硬さを高めることでヒートチェックや摩耗を抑えられる場合がありますが、靭性の低下による割れにも注意が必要です。鋼材、熱処理、金型の形状や使用温度を合わせて検討します。

窒化とPVDの違いは何ですか?

窒化は鋼材へ窒素を拡散させて表層を硬くする処理で、PVDは表面に硬い膜を作る処理です。金型の鋼種や熱処理、抑えたい損傷に合う方法を選びます。

溶接で補修した金型は再窒化できますか?

再窒化に対応する補修材はありますが、すべての補修部に同じ処理を使えるとは限りません。母材と補修材、溶接後の状態に合う処理条件を確認します。