鍛造金型用材料の選び方|鍛造温度・荷重・損傷に応じた選定

更新日 2026/10/04(日)
鍛造
鍛造金型用材料の選び方鍛造温度・荷重・損傷に応じた選定

鍛造金型の材料は、温度、荷重、摩耗・変形・割れに応じて選びます。工具鋼と超硬合金の特徴、成形面と支持部の役割、熱処理・表面処理・潤滑の条件を整理し、損傷から材料と使い方を見直す方法を解説します。

この記事で分かること

  1. 01温度による負荷の違い熱間・温間・冷間鍛造
  2. 02材料の特徴工具鋼・ハイス・超硬合金
  3. 03部品ごとの役割成形する部分と支える部分
  4. 04寿命を左右する条件熱処理・表面処理・使い方

鍛造金型用材料に求められる特性

鍛造金型は、金属素材に力を加えて製品の形を作るために使います。素材と接触する面には圧力や摩擦が働き、熱間・温間鍛造では素材から熱も伝わります。こうした負荷に耐え、成形面の形状を保てる材料が必要です。

材料を比較する際は、摩耗や変形を抑える性質と、割れに耐える靭性を確認します。工具鋼の硬さを高めると摩耗や圧縮による変形を抑えられる場合がありますが、硬さと靭性の関係は鋼種や熱処理によって変わります。使用中の金型を見直す場合は、摩耗した面、変形した箇所、割れが始まった位置を調べると、改善したい特性を具体化できます。

熱間・温間・冷間鍛造で金型に加わる負荷が変わる

金型が受ける熱や力は、素材の種類と温度、変形させる量、金型との接触時間によって変わります。加熱した素材の温度と、接触・冷却を繰り返す金型表面の温度は区別して考えます。同じ熱間鍛造でも、ハンマーで短時間に打撃を加える場合と、プレスで押す場合では、衝撃と熱の受け方が異なります。

熱間鍛造の金型に生じる軟化と熱疲労

熱間鍛造では、加熱した素材との接触によって金型表面の温度が上がります。高温にさらされて硬さが低下すると、摩耗や変形が進みやすくなるため、高温での強度と硬さを保つ性質が重要です。また、加熱と冷却を繰り返すと表面に熱応力が生じ、細かな割れへ進むことがあります。この熱疲労による割れはヒートチェックとも呼ばれ、材料の性質に加えて、金型の予熱や冷却の仕方が関係します。

温間鍛造で重なる熱と圧力

温間鍛造の金型は、素材から熱を受けながら、大きな接触圧力にも耐える必要があります。熱間鍛造から素材温度を変える場合は、素材の変形抵抗と成形条件を確認し、金型に加わる圧力や摩耗・変形への影響を検討します。高温での硬さの維持、耐摩耗性、靭性を、実際の素材温度と金型温度に合わせて比較します。

冷間鍛造の摩耗・変形・割れ

冷間鍛造では、高い接触圧力の下で素材が動くため、成形面の摩耗や金型の塑性変形が問題になります。角部や断面が急に変わる部分には力が集中しやすく、割れや欠けへの対策も必要です。細いパンチでは、圧縮する力に加えて、曲げが生じる使い方や支持方法も検討します。硬さと耐摩耗性、圧縮に耐える性質を基に候補を選び、部品形状に応じた靭性を確保します。

熱間工具鋼・冷間工具鋼・高速度工具鋼・超硬合金を比べる

鍛造金型に使う代表的な材料には、熱間工具鋼、冷間工具鋼、高速度工具鋼、超硬合金があります。熱間工具鋼の例はSKD61、冷間工具鋼の例はSKD11です。熱間工具鋼では高温での強度や軟化しにくさ、冷間工具鋼では耐摩耗性と割れに耐える性質を比較します。

高速度工具鋼はハイスとも呼ばれ、冷間鍛造のパンチやダイにも使われます。粉末ハイスは、硬い炭化物を細かく均一に分散させた組織を得やすく、耐摩耗性と靭性の両方を検討するときの候補になります。同じ材料群でも鋼種によって性質が異なるため、必要な硬さでの靭性や熱処理条件を比べます。

超硬合金は、炭化タングステンなどの硬い粒子をコバルトなどの金属で結合した材料です。高い耐摩耗性を生かして、冷間鍛造のダイや入れ子に使われます。圧縮には強い一方、引張りによる割れや欠けに注意が必要で、材種と支持構造を合わせて検討します。

材料の例主に生かす性質材料と併せて検討する条件
熱間工具鋼高温での強度
軟化しにくさ
靭性
金型温度
熱処理
加熱と冷却の繰り返し
冷間工具鋼硬さ
耐摩耗性
圧縮に耐える性質
割れ・欠けが生じる部位
使用硬さ
支持
高速度工具鋼高い硬さでの耐摩耗性と靭性鋼種
炭化物の状態
部品形状
熱処理
超硬合金高い耐摩耗性と圧縮強さ材種
引張応力
欠け
補強構造

温間鍛造などでは、異なる材料群の候補を比較することもあります。使用温度と負荷に対して、熱処理や表面処理を行った材料がどのような性能を示すかを確認します。

ダイ・パンチ・インサート・補強部品の役割に合う材料を選ぶ

ダイは素材を受けて形状を規制し、パンチは素材に力を加えて変形させます。例えば押出しでは、パンチで押された素材がダイの穴を通ったり、パンチの周囲へ流れたりして形が作られます。素材と接触する部位や力の向きが違うため、ダイとパンチで必要な硬さや靭性を検討します。

インサートは、金型の一部に組み込む入れ子です。成形面に耐摩耗性を重視した材料を使い、その外側を別の部品で支えるなど、部位ごとに材料を使い分けられます。摩耗した部分を交換できる構造にする場合は、交換後の位置や寸法、支え方も含めて設計します。

冷間鍛造の超硬ダイでは、入れ子を補強リングで締め付け、あらかじめ圧縮力を与える構造が使われます。加工中に素材が内側からダイを広げようとする力によって生じる、引張応力を抑えるためです。入れ子とリングの寸法、締め付ける強さ、各部品の材料を合わせて検討します。材料を変える際は、変形のしやすさも変わるため、従来の寸法や組立条件をそのまま使えるか確認します。

例えば、超硬の入れ子に縦方向の割れが生じた場合は、割れの位置を記録し、図面の内外径、組立時の締め代、加工中の圧力を確認します。入れ子と補強リングの材料特性を基に、組立時と加工時の応力を検討します。材料を替える案と、支持構造や加工条件を変える案を比較するための検討例です。

熱処理・表面処理・潤滑・補修方法を合わせて決める

工具鋼は、焼入れ時の加熱・冷却と焼戻しの温度・時間によって、硬さや靭性が変わります。大型の金型では表面と内部の冷え方が異なるため、必要な部分まで硬さが得られる焼入性も検討します。材料の特性を比較するときは、金型の大きさと実際に行う熱処理を前提にします。

窒化は表面から窒素を浸透させて硬い層を作る処理で、硬質皮膜処理は表面を硬い膜で覆う方法です。摩耗対策として使われますが、母材の硬さ、処理温度、層や膜の状態によって性能が変わります。窒化では、内部へ広がる硬化層と表面に生じる化合物層を分け、層の状態、部品形状、負荷に合う処理条件を検討します。

潤滑は素材と金型の摩擦に関係し、熱間鍛造では潤滑剤の噴霧による冷却も金型表面の温度を変えます。予熱、素材との接触時間、冷却を合わせて調整し、大きな温度変化による熱疲労を抑えます。金型を加工した後は、粗い切削跡や放電加工で生じた変質層が割れの起点になることがあるため、成形面と角部の仕上げも重要です。

補修を繰り返して使う場合は、摩耗部の再加工や溶接補修が可能か、どこまで形状を回復できるかを検討します。金型材料や処理条件を変更した後は、製品の寸法・外観と、金型の摩耗・割れの進み方を確認します。製作時の費用に加え、交換や補修に要する回数・作業も比べると、継続して使う材料を判断しやすくなります。

まとめ

鍛造金型用材料は、使用温度、加わる力、摩耗・変形・割れの状態から必要な特性を考えます。工具鋼と超硬合金の違いを踏まえ、成形面と支持部の役割に合う材料を選びます。熱処理、表面処理、潤滑、金型の支持や仕上げまで含めて比較し、実際の製品品質と損傷の変化を確認してください。

鍛造金型の製作を相談できる企業を探す

相型MATCHINGでは、加工分野から登録企業を探し、金型の製作を相談できます。図面、鍛造する素材と温度、金型の使用条件、現在の損傷が分かる情報を用意すると、材料や処理方法を相談しやすくなります。

無料会員登録して企業を探す鍛造の記事を見る

よくある質問

SKD61とSKD11はどう使い分けますか?

SKD61は熱間工具鋼、SKD11は冷間工具鋼の例です。金型が受ける熱と力を基に候補を選び、熱処理後の硬さや靭性が使用条件に合うかを確認します。

硬さを上げると金型の寿命は延びますか?

摩耗や圧縮による変形を抑えられる場合があります。一方で、硬さを高めたときの靭性は鋼種や熱処理によって変わるため、割れ・欠けの発生状況と合わせて使用硬さを検討します。

超硬合金は金型のどの部品に使いますか?

冷間鍛造のダイや入れ子など、耐摩耗性や圧縮強さを生かす部分に使われます。引張応力による割れを抑えるため、補強リングなどの支持構造も検討します。

割れや欠けが増えたときは何を見直しますか?

割れが始まった位置を調べ、角部の形状、表面の加工跡、金型の支持、素材と金型の温度を確認します。その負荷に対する材料の靭性と熱処理の状態を調べ、形状や使用条件も含めて対策を検討します。