金型の表面処理は、表面の硬化や膜の形成によって摩耗や材料の付着を抑える処理です。窒化・コーティングの違いと、母材の熱処理や面仕上げに合う選び方、処理後の寸法と試作品の確認方法を解説します。
この記事で分かること
- 01表面を変える方法窒化と膜を形成する処理の違い
- 02母材への影響処理時の加熱と下地仕上げの注意点
- 03損傷への対策摩耗・付着・離型不良で考えること
- 04処理後の検査型の寸法、表面と試作品の確認
金型の表面処理の目的と種類
金型に用いられる表面処理には、窒化のように表面層を硬化させる方法、物理蒸着法(PVD)や化学蒸着法(CVD)によって硬質膜を形成する方法、めっきなどがあります。
表面処理で改善したい性質には、摩耗しにくさ、加工する材料の付着しにくさ、製品の取り出しやすさなどがあります。処理方法に加え、形成する膜や硬化層の性質を、使用する金型の用途に合わせて選びます。
| 処理方法の例 | 表面に施す処理 | 選定時の注意 |
|---|---|---|
| 窒化 | 鋼の表面から窒素を拡散させ、表面層を硬化させる。 | 硬化層の深さや表面の化合物層は、摩耗、熱による割れ、焼付きなど、抑えたい損傷に応じて検討する。 |
| PVD | 真空中で蒸発させた材料などを金型の表面に付着させ、膜を形成する。 | 母材の表面の凹凸が膜の表面にも反映されるため、成膜前の仕上げが重要になる。 |
| CVD | 反応ガスを用いて、金型の表面に膜を形成する。 | 高温で処理する方法では、母材の硬さや寸法への影響と、処理後に必要な熱処理を検討する。 |
PVDやCVDは膜を形成する方法を指します。一方、DLCは炭素を主成分とする膜の名称です。膜の名称と処理方法を分けて仕様を読むと、母材にどのような処理を施すのかが分かります。
母材の熱処理と表面仕上げを確かめる
コーティングの膜の密着性は、母材の材質や硬さ、表面粗さに影響されます。母材の状態を調べ、必要に応じて下地を窒化してからコーティングする方法を検討します。
処理時の加熱で母材の硬さが変わる場合があります。鋼種と熱処理記録から焼戻し温度を調べ、候補となる処理の温度で硬さを保てるかを確かめます。PVDでも加熱を伴うため、処理の温度と母材の熱処理条件を確認します。
PVDの膜には下地の凹凸が反映されます。成膜前に必要な表面粗さへ仕上げ、膜の密着を妨げる酸化層や汚れを除去します。
樹脂成形型では、金型に付けたシボの凹凸が製品の表面模様に転写されます。必要な模様を保ち、凹凸の深さと抜き勾配を確認して、取り出した製品の側面に傷が生じていないかを調べます。
摩耗・付着・離型不良への対策を考える
金型の表面が硬い粒子で削られる場合は、耐摩耗性を高める窒化や硬質膜を検討します。あわせて、削った材料の粉や異物が接触面に入り込んでいないか、潤滑が不足していないかを調べます。
加工する材料が金型に付着する場合は、その材料との反応や摩擦を抑える膜を検討します。膜を選ぶ際は、対象となる材料と使用温度で付着を抑えられるかを評価します。
アルミダイカストでは、溶けたアルミニウム合金が金型の鋼と反応して付着し、焼付きや溶損が生じる場合があります。接触を隔てる窒化の化合物層やコーティングに加え、金型温度や離型剤の付着状態も調べます。
樹脂成形品を取り出す際の離型抵抗には、抜き勾配や金型の表面粗さ、製品の表面温度も影響します。取り出しにくい箇所でこれらを調べ、型の形状や潤滑状態を含めて対策を考えます。
熱間で使う金型では、窒化層を深くすると割れや欠けにつながる場合があります。硬さや層の深さを増やす前に、抑えたい損傷が摩耗なのか、熱による割れなのかを調べ、層の構成を検討します。
表面処理後の検査と使用中の点検
コーティング後は、処理する予定の範囲に膜が形成されているか、傷や剥離がないかを調べます。型の寸法と表面粗さは、図面や仕上げの指定を満たすか測定します。
コーティングでは膜厚、窒化では硬化した層の深さを検査対象とします。処理方法に合った測定結果で指定を満たすかを確認し、組付け後は可動部に干渉や動作の異常がないかを調べます。
例えば、コーティング後に金型の摺動部が動きにくくなった場面を仮定します。膜を付ける範囲の指定と実際の処理範囲を確認し、処理前後の部品寸法と膜厚を調べ、組み合う穴と軸の寸法が図面の公差を満たすかを確かめます。
金型の寸法・表面粗さが基準内であることと、試作した製品が品質基準を満たすことの両方を確認してから、量産での使用を再開します。
使用中は、処理した面の摩耗、材料の付着、膜の剥離と、製品の寸法や表面の傷を点検します。不具合が再発した場合は、金型のどこで損傷が進んだか、製品のどの箇所に変化が出たかを調べ、膜や下地、潤滑などの見直しにつなげます。
コーティング後に再研磨する場合は、研磨による膜の剥離や除去に注意が必要です。研磨した箇所に膜が残っているか、母材が露出しているかを調べ、金型の寸法と合わせて再処理の必要性を判断します。
まとめ
金型の表面処理は、改善したい損傷に応じて、窒化やコーティングなどから検討します。母材の熱処理と処理時の加熱、下地の仕上げを確認すると、型の硬さや必要な表面形状を保てる方法を選びやすくなります。
処理後は型の寸法と表面、試作品の品質を確かめます。使用を始めてからも、処理した箇所の損傷と製品の変化を追い、表面処理や型の補修を見直してください。
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よくある質問
金型の表面処理は何を基準に選びますか?
抑えたい摩耗や付着の状態から必要な性質を考え、母材の材質と熱処理、接触する材料、使用温度に合う処理を検討します。処理前に必要な表面仕上げと、処理後の寸法への影響も確認します。
窒化とコーティングを組み合わせることはありますか?
あります。窒化によって母材の表面を硬くし、その上に膜を形成して膜を支える力を高める方法です。母材や用途に応じて、窒化の条件と形成する膜の組合せを検討します。
離型を改善するには鏡面に仕上げればよいですか?
適した表面仕上げは、製品に必要な模様や金型から取り出す際の状態に応じて選びます。樹脂成形型にシボを付ける場合は、凹凸の深さと抜き勾配を確認し、取り出した製品の側面に傷が生じていないかを調べます。
表面処理後の検査では何を確認しますか?
処理範囲と表面の傷や剥離、型の寸法と表面粗さを調べます。膜厚や窒化層の深さは処理方法に応じて確認し、組付け後の可動部と、試作した製品の寸法や外観も検査します。