射出成形金型の構造|主要部品の役割と品質への影響

更新日 2026/10/01(木)
プラスチック成形
射出成形金型の構造主要部品の役割と品質への影響

射出成形金型は、溶融した樹脂を内部へ充填し、冷却して製品形状を作る型です。固定側と可動側の金型が閉じて樹脂を受け入れ、成形品が固まった後に型を開いて取り出します。部品の役割と、樹脂の流れ、冷却、排気、取り出しが品質へ与える影響を解説します。

この記事で分かること

  1. 01固定側・可動側の役割金型が開閉して製品を取り出す流れ
  2. 02樹脂が流れる経路スプルー、ランナー、ゲートの違い
  3. 03成形不良に関わる機構冷却、ガス抜き、突出しの役割
  4. 04構造を選ぶ判断基準型開き構造、流路方式、追加機構

固定側・可動側の役割

射出成形金型とは、成形機から射出された溶融樹脂を内部に充填し、冷却して成形品の形状を作る金型です。成形機のノズル側に取り付ける固定側と、型開閉の際に動く可動側に分かれます。固定側には溶融樹脂を金型内へ導く入口があり、可動側には成形品を取り出すためのエジェクタピンやエジェクタプレートを設けるのが一般的です。

金型を閉じて溶融樹脂を充填し、保圧と冷却を行います。樹脂が固まった後に金型を開き、成形品を取り出します。キャビティとコアの形状、金型の合わせ面にできるパーティングライン、抜き勾配、突出し位置は、成形品の外観、寸法、離型しやすさに影響します。

成形品が突出し機構のある側に残るよう、型から抜く方向とキャビティ・コアの配置を検討します。

構成要素 主な役割 品質に関わる点 設計で確認する条件
キャビティ・コア 製品の外形や内側形状を作る 寸法精度、外観、パーティングライン、抜き勾配など 3Dデータ、図面、公差、外観面、組み付け時の基準面と位置など
固定側・可動側 ノズル側で樹脂を受け、一般に可動側の突出し機構で成形品を取り出す 型開き、離型、成形品が金型のどちら側に残るか、取り出し方向など 取り出し方法、後工程、製品の傷許容、搬送条件など
ガイド部品・入れ子 ガイド部品は型の位置を案内し、入れ子は部分交換を可能にする かじり・位置ずれ・摩耗による寸法ずれ・外観不良など 量産数量、交換頻度、摩耗しやすい形状の有無など

スプルー・ランナー・ゲート

ランナーを設けた金型では、成形機から射出された樹脂はスプルー、ランナー、ゲートを通ってキャビティへ入ります。ダイレクトゲートは、スプルーから直接製品部へ樹脂を流し込む方式で、ランナーを必要としません。スプルーは成形機のノズルから樹脂を受ける入口、ランナーは樹脂を各キャビティへ分配する通路、ゲートは製品部分へ流し込む直前の細い入口です。流路の形状と配置は、樹脂の流れ、ゲート跡、ランナーとして廃棄する樹脂量、必要なゲート処理に関わります。

ゲート跡を目立たせたくない製品では、外観面や組み付け面を避けられる位置を検討します。充填・保圧が必要な部分へ樹脂が届くか、ウェルドラインが機能上重要な位置にできないかも確認します。後工程でゲート跡を除去できるかも確認します。複数個を同時に成形する場合や取り出しを自動化する場合は、各キャビティへの充填バランス、ランナーの分離方法、廃棄する樹脂量、清掃・保全方法を確認してください。

流路 役割 影響しやすい項目 製品・成形の条件
スプルー 成形機ノズルから金型へ樹脂を導く入口 樹脂の流れ、スプルーの離型、廃棄する樹脂量など 使用成形機、成形材料、成形条件の前提など
ランナー 樹脂を各キャビティへ配る通路 圧力損失、各キャビティへの充填バランスなど 取り数、成形材料、製品重量、量産数量など
ゲート 製品部へ樹脂を流し込む入口 ゲート跡、ウェルドライン、ヒケ、後工程、外観など 外観面、許容できるゲート跡の位置と大きさ、組み付け面、後加工の可否など

冷却・ガス抜き・突出しの役割

成形品の品質には、キャビティとコアの形状に加え、冷却、ガス抜き、突出しが関わります。冷却回路は、成形品が固まるまでの時間と金型内の温度分布に影響します。金型内に大きな温度差があると、成形品の各部で収縮が不均一になり、反りや寸法のばらつきにつながります。ヒケは冷却に加えて肉厚や保圧による樹脂の補充も関わるため、発生場所の形状と成形条件を確認します。また、金型内の空気や樹脂から生じるガスを排出できない場合は、未充填やガス焼けが生じ、ウェルドラインが目立つことがあります。

突出し機構では、エジェクタピンの位置や太さ、押出し力のバランスを確認します。エジェクタピンの位置や押出し力が製品形状に合わない場合は、白化、変形、ピン跡、離型不良の原因になります。ベントや冷却回路の寸法は、成形材料、肉厚、金型構造によって異なります。成形材料のグレードと物性、目標とする成形サイクル、過去に発生した不良を確認し、冷却・排気・取り出しの設計へ反映します。

機構 関係する不良・課題 製品・成形の条件 機構の設計で確認する点
冷却・温調 反り、ヒケ、寸法ばらつき、サイクルタイムなど 肉厚、成形材料、外観の基準、目標とする成形サイクルなど 冷却回路、温調方式、金型内の温度差を抑える方法など
ガス抜き ショートショット(充填不足)、ガス焼け、ウェルドライン、充填不良など 薄肉部、流動末端、類似品で起きた不良、成形材料の種類とグレードなど ベント位置と寸法、清掃頻度、充填時の射出速度
突出し 離型不良、変形、白化、ピン跡など 外観面、取り出し方向、製品剛性、後工程など 突出し位置、押し出しバランス、ロボット取出しの有無など

不良の位置と金型の機構を対応させる

金型トライで不良が出た場合は、製品図に発生箇所を記し、ゲート、流動末端、ベント、突出しピンの位置と照合します。例えば、流動末端のショートショットやガス焼けでは、その場所の空気が金型の外へ抜ける経路と、ベントの汚れを確認します。

突出し後の白化や変形では、ピンの位置と押し出す順序、製品がコアから離れる動きを確認します。取り出し機を使う場合は、成形品の保持とつかむ位置、傷の発生箇所も確認してください。

記録には、金型番号、キャビティ番号、成形条件、試作品の識別番号、不良の位置と写真を残します。温調機の設定温度と実際に測定した金型温度は区別し、実測値には測定位置と、立上げ中か連続成形中かを記載します。

金型構造と追加機構の選び方

型開き構造と流路方式は、それぞれの役割に応じて検討します。型を開く面やランナーの分離方法は、2プレート・3プレート構造の特徴を基に選びます。樹脂の流路を加熱するホットランナーは、型の開き方とは異なる検討項目です。2プレート金型は主な型開き面が1か所で、構造が比較的単純です。ただし、配置できるゲート位置には制約があります。3プレート金型は、2プレート金型よりゲート位置の自由度が高く、ランナーを成形品から分離しやすい構造です。一方で、型厚、必要な型開き量、部品点数が増えます。

ホットランナーは、ランナー内の樹脂を溶融状態に保つ方式です。加熱した流路の樹脂を固めずに保つため、ランナーとして廃棄する樹脂を減らせます。小さなコールドランナーを併用する方式では、その部分の樹脂は成形のたびに固まります。ただし、金型にはヒーターや温度制御部品が加わるため、導入費用、温度管理、材料交換、清掃、保全方法を事前に確認します。スライドは、通常の型開き方向では取り出せないアンダーカット部を成形し、取り出し時に横方向へ動く機構です。傾斜コアもアンダーカットを解除するための機構で、動く方向と必要な移動量を製品形状に合わせて検討します。動く部品には摩耗や動作不良が生じる場合があるため、摺動部の保全方法を確認します。入れ子は金型の一部を別部品として組み込む構造で、部分交換や加工のしやすさに応じて使います。固定された入れ子は、スライドのように型開きに伴って動く機構とは区別します。

構造・方式・機構 特徴 選定を検討する条件 選定前の確認事項
2プレート金型 主な型開き面が1か所で、構造が比較的単純 ゲート位置とランナー分離を2プレート構造で対応できる製品など ゲート位置、外観面、ランナー処理、取り数など
3プレート金型 型開き面を増やし、ランナーを製品から分離する ゲート位置を中央寄りにしたい製品、多点ゲートなど 型厚、型開き量、コスト、メンテナンスなど
ホットランナー ランナー部の樹脂を固めずにキャビティへ送る 生産数量が多い製品、ランナーとして廃棄する樹脂を減らしたい場合など 初期費用、温調、材料替え、保全体制など
スライド 横方向へ動き、アンダーカットを解除する 型開き方向に抜けない横穴や爪などがある製品 必要な移動量、他部品との干渉、摺動部の摩耗と保全
入れ子 金型の一部を別部品として組み込む 局所的な加工や部分交換が必要な場合 取付け・位置決め、交換時の寸法と合わせ面

金型構造の選定で確認する条件

  • 製品図面、3Dデータ、成形材料、試作数、量産の生産数量
  • 外観面、ゲート跡の許容、許容できるパーティングラインの位置と段差
  • 寸法公差、肉厚、アンダーカット、組み付け時の基準面と位置
  • 目標とする成形サイクル、成形機の候補、取り出し方法、後工程
  • 類似品で起きたショートショット(充填不足)、ヒケ、反り、ガス焼け、離型不良など

製品図面や3Dデータから、外観面、寸法公差、アンダーカット、型から抜く方向を確認します。金型の型厚と必要な型開き量が成形機の仕様に収まるか、取り出し機構と成形機・周辺機器が干渉しないかを確認します。成形材料、生産数量、廃棄する樹脂量、ゲート処理と保全の方法も踏まえて、型開き構造、流路方式、追加機構を選びます。

型が開く順序と必要な移動量を確認する

3プレート金型では、成形品とゲートの分離、ランナーの取出し、成形品の取出しに必要な開き量を、金型図面と使用部品の構造で確認します。各プレートが開く順序と、その順序を保持する部品も確認してください。

アンダーカットがある製品では、スライドや傾斜コアが製品の引っ掛かりを解除できる移動量と、突出し時の動きを確認します。金型単体の動作に加え、成形機に取り付けた状態での型開き量と取出し機との干渉も確認します。

まとめ

射出成形金型は、固定側と可動側、樹脂を流す経路、冷却・ガス抜き、成形品を押し出す機構で構成されます。2プレート・3プレートは型の開き方、ホットランナーは樹脂の流路を加熱する方式を表します。スライドはアンダーカットの解除、入れ子は部分交換などの目的に応じて検討します。

製品形状、外観・寸法の要求、成形材料、生産数量、成形機の仕様を確認し、充填・冷却・離型できる構造を検討してください。

プラスチック成形・金型の相談を受け付けています

株式会社アイカタマッチングでは、プラスチック成形や射出成形金型に関する個別案件の相談を受け付けています。依頼先が分からない場合や、仕様の整理に迷っている場合も、分かる範囲からご相談ください。

問い合わせフォームから相談する技術情報を見る

よくある質問

射出成形金型はどのような構造ですか?

固定側と可動側を閉じて製品形状の空間を作り、樹脂を流し込みます。一般的な流路はスプルー、ランナー、ゲートで、ダイレクトゲートではランナーを通しません。さらに、冷却回路、ガス抜き、成形品を押し出す機構などで構成されます。

キャビティとコアの違いは何ですか?

キャビティとコアは、組み合わせて製品形状を作ります。一般にキャビティは製品の外側、コアは内側や凹凸部分を形成しますが、分け方は製品形状、パーティングライン、型から抜く方向によって変わります。

スプルー、ランナー、ゲートは何のためにありますか?

スプルーは成形機から樹脂を受ける入口、ランナーは各キャビティへ樹脂を分配する通路、ゲートは製品部分へ入る直前の細い入口です。流路の設計は、樹脂の流れやすさ、ゲート跡、ランナーとして廃棄する樹脂量に関わります。

2プレート金型と3プレート金型はどう選びますか?

2プレート金型は主な型開き面が1か所で、構造が比較的単純です。3プレート金型は、2プレート金型よりゲート位置の自由度が高く、ランナーを成形品から分離しやすい一方、型厚、型開き量、部品点数が増えます。製品形状、ゲート位置、後工程、量産数量を確認して決めます。

2プレート・3プレートとホットランナーは同じ分類ですか?

2プレート・3プレートは型の開き方やランナーの分離に関係する構造です。ホットランナーは樹脂の流路を加熱して溶融状態に保つ方式で、型開き構造とは異なる検討項目です。