プラスチック射出成形は、溶かした樹脂を金型に充填し、固めて取り出す工法です。ここでは、加熱すると軟らかくなり、冷やすと固まる熱可塑性樹脂の射出成形を中心に、機械の仕組み、工程、製品設計の要点を解説します。
この記事で分かること
- 01射出成形の基本工程と、金型が果たす役割
- 02射出成形に適した製品と、他の工法が適する製品
- 03設計段階で確認したい肉厚・抜き勾配・アンダーカット
- 04成形機の仕組みと、材料・金型構造の関係
射出成形では、成形機が樹脂を溶かして金型に送り込み、金型が製品の形を作ります。
同じ形状を繰り返し作るためには、樹脂の流れ、冷却、取り出しまで考えた設計が必要です。
射出成形の仕組みと工程
射出成形機は、樹脂を溶かして押し出す射出装置と、金型を開閉して締め付ける型締装置を備えています。
金型内部の製品形状を作る空間をキャビティと呼びます。
| 工程 | 主な役割 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 可塑化・計量 | 樹脂を溶かし、射出する量をためる | 材料ごとの乾燥・温度条件 |
| 型締め・充填 | 金型を閉じて保持し、樹脂を流す | 型締力、流動距離、ゲート位置、空気抜き |
| 保圧 | 冷却に伴う樹脂の収縮を補う | ヒケ、重量、圧力を加える時間 |
| 冷却・取り出し | 形を保てるまで冷やし、金型から外す | 反り、取り出し傷、冷却時間 |
可塑化・計量と型締め
ホッパーから投入した樹脂は、シリンダー内で加熱とせん断を受けて溶融します。
スクリューは回転しながら後退し、先端側に射出する量の溶融樹脂をためます。この量を整える工程が計量です。
射出する前に金型を閉じ、樹脂の圧力で金型が開かないように型締装置で保持します。
金型への充填と保圧
スクリューが前進すると、溶融樹脂がノズルから金型へ送り込まれます。
一般的な流路では、樹脂はスプルー、ランナー、ゲートを通ってキャビティに入ります。
ゲートはキャビティへの入口で、位置や大きさが樹脂の流れ方に関係します。
充填後は保圧に切り替え、樹脂が冷えて収縮する分を補います。
冷却と取り出し
金型内で形を保てるまで冷却した後、金型を開いてエジェクタピンなどで製品を押し出します。
冷却不足のまま取り出すと変形するおそれがあるため、製品の肉厚や材料に合う冷却時間を設定します。
取り出し後は次の成形を繰り返します。
各工程の時間や温度の適切な値は、材料グレードや製品形状によって異なります。
冷却中に次のショットの樹脂を計量する
保圧を終えた後、金型内の成形品を冷却している間に、スクリューを回転させて次のショットの樹脂を計量します。1ショットは、樹脂を金型へ射出する1回分を指します。
冷却と計量は同時に進むため、工程表の各時間を単純に足した値が成形サイクルになるとは限りません。サイクルを確認するときは、成形機で表示される充填・保圧・冷却・計量の時間と、型開き・取り出しの動きを確認します。
成形条件と製品の状態を記録する
条件を調整するときは、樹脂のグレード、乾燥条件、シリンダーと金型の設定温度、射出速度、保圧と時間、冷却時間を記録します。条件を変えた時点と成形品の識別番号を対応させ、重量、外観、必要な寸法を比較してください。
例えば、保圧の条件を変えた場合は、ヒケの位置と状態、重量、図面で指定された寸法を確認します。金型温度を測定する場合は、温調機の設定値に加え、実測した位置と温度を記録します。
射出成形に適した製品
射出成形は、金型を用意した後に同じ形状を繰り返し成形できる点が強みです。
リブやボス、はめ込み用の爪などを一体で成形できる形状もあります。
同じ形状を繰り返し作る部品
生産数量が増えると、金型費をより多くの製品に分けて負担できます。
外観カバー、コネクタ、ギア、クリップなどが製品例です。
金型を製作する初期費用と期間が必要で、完成後の形状変更には金型の修正が伴う場合があります。
他の工法との違い
試作や少量生産では、金型を使わない切削加工や積層造形も比較対象になります。
一定の断面が長く続く製品には押出成形、加熱したシートを型に沿わせる製品には真空成形という選択肢があります。
製品形状、生産数量、必要な精度をそろえ、金型費を含む総費用を比較します。
肉厚・抜き勾配・アンダーカット
射出成形品の設計では、樹脂が金型内を流れることと、固まった製品を取り出せることの両方を考えます。
肉厚の変化とリブ
厚肉部では内部の冷却が遅れ、収縮に伴って表面にヒケが出たり、内部に空隙ができたりすることがあります。
剛性が必要な部分では、基本肉厚をそろえながらリブで補強する方法を検討します。
リブ自体が厚すぎると、その付け根の反対面にヒケが出ることもあります。
肉厚を変える箇所は、急な段差を避けて滑らかにつなぎます。
抜き勾配とアンダーカット
抜き勾配は、成形品を金型から外しやすくするため、型開き方向に設けるわずかな傾斜です。
型開き方向に引き抜くと引っ掛かる形状をアンダーカットと呼びます。
アンダーカットがある場合は、横方向へ動くスライド機構などを設けるか、引っ掛かりを減らす形状変更を検討します。
樹脂材料と金型構造
製品に必要な性能を満たす材料を選び、その樹脂の流れ方や収縮に合わせて金型を設計します。
材料を変える際は、元の金型と成形条件をそのまま使えるとは限りません。
材料特性と使用条件
材料選びでは、使用温度、荷重、接触する薬品、必要な衝撃強度などを確認します。
例えばABS樹脂では、材料メーカーの技術資料に乾燥、シリンダー温度、金型温度などの条件が示されています。
同じ樹脂名でもグレードや強化材の有無で特性が変わるため、使用するグレードの資料で確認します。
材料別の特徴は「射出成形用プラスチック材料の選び方」でも解説しています。
金型の取り数と樹脂の流れ
一度に成形する製品数を取り数と呼びます。
多数個取りの金型では、複数のキャビティに樹脂が行き渡るよう、流路と充填のバランスを考えます。
必要な生産数量に加えて、成形機の射出容量や金型を取り付けられる大きさも確認します。
まとめ
射出成形は、樹脂を溶かして計量し、閉じた金型へ充填した後、保圧・冷却を経て製品を取り出す工法です。
成形機の動きと樹脂の通り道を理解すると、金型や工程の役割を把握しやすくなります。
製品設計では肉厚と取り出し方向、材料選びでは使用条件とグレードを確認します。
金型費や試作・量産の計画まで比較したい場合は、関連記事の金型費用やメーカー選びも参照してください。
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よくある質問
射出成形は少量生産にも使えますか?
使えますが、金型の製作費と期間が必要です。
数量や形状に応じて、切削加工や積層造形も含めた総費用と品質を比較します。
射出装置と型締装置は何が違いますか?
射出装置は樹脂を溶かして金型へ送り込み、型締装置は金型を開閉して、射出中に金型が開かないよう保持します。
樹脂が冷えるとき、なぜ保圧が必要ですか?
金型内で冷えて収縮する樹脂を補うためです。
ゲートが固まると樹脂を送り足せなくなるため、保圧の時間とゲートの状態を合わせて検討します。