プレス加工の工程設計|抜き・曲げ・絞りの順番を決める考え方

更新日 2026/10/02(金)
プレス
プレス加工の工程設計 抜き・曲げ・絞りの順番を決める考え方

プレス加工の工程順は、完成品の基準面と重要寸法、曲げ・絞りで生じる変形、被加工材の送り方と工程間の搬送方法を基に決めます。この記事では、製品図面から工程案を作り、試作で確認する方法を解説します。

この記事で分かること

  1. 01工程設計の考え方加工順と各工程の内容を決める
  2. 02図面で確認する内容基準面・形状・外観・後処理を確認
  3. 03加工順の決め方完成品の基準と各工程の変形から決める
  4. 04工程案の確認寸法・成形不良・搬送を試作で確認

プレス加工の工程設計では加工順と各工程の内容を決める

プレス加工は、金属板などの被加工材に金型で力を加え、せん断・曲げ・絞りなどを行う加工方法です。工程設計では、完成品に必要な形状と寸法を得るために、加工の順番と各工程で決める形状・寸法を設定します。

製品図面から寸法の基準、変形を許容できない部分、外観面、バリ方向、後処理、検査方法を確認します。各寸法と形状がどの工程で決まり、その後の曲げや絞りで変化するかを整理します。

穴位置を平板の状態で決めるか、曲げ後の立ち上がり面を基準に決めるかによって、加工順が変わります。図面の寸法値と、組立・測定で基準にする面や穴を確認します。

項目工程設計の確認内容図面・仕様の情報
基準面・基準穴どの工程で位置と寸法が決まるかデータム、重要寸法、公差
曲げ形状穴・切欠きの変形、スプリングバック曲げ角度、高さ、測定方法
絞り形状被加工材の流れ、しわ・割れ、板厚変化絞り深さ、隅R、外観面
外観・バリ工具接触面、バリ方向、打痕リスク外観基準、使用面、後処理
搬送・保持工程間で保持できる部分、製品の姿勢、キャリア設備方式、取り出し条件

プレス加工の工程順は完成品の基準と各工程の変形から決める

抜き・曲げ・絞りの工程順は、完成品の基準面と重要寸法から検討します。各工程で変形する部分を完成形からさかのぼって確認し、順送金型では加工中の変形と金型の干渉も確認します。

プレス加工の工程順を検討する流れ

  1. STEP 1完成品の基準を確認する組立・測定で使う面と穴を特定します。
  2. STEP 2各工程の変形を確認する曲げ、絞り、切り離しで寸法や形状が変わる部分を確認します。
  3. STEP 3保持方法を決める被加工材の送りや製品の把持に必要な部分を確認します。
  4. STEP 4別工程にする加工を決める穴加工、切削、表面処理、検査を金型内で行うか、別工程にするかを決めます。

穴を抜く時期は曲げ後に必要な位置精度から決める

平板の状態で穴を抜くと、被加工材の送りと穴の位置決めを同じ金型内で行いやすくなります。ただし、穴が曲げ部に近い場合や、曲げを挟んだ二つの穴に位置精度が必要な場合は、曲げによって穴の形状や位置が変わることがあります。この場合は、曲げ後に穴を抜く方法や、別工程で穴を加工する方法を検討してください。

立ち上がり面に穴がある製品の工程案を比べる

曲げた立ち上がり面に穴がある製品では、図面で穴位置の基準となる面と、必要な位置精度を確認します。穴を平板の状態で抜いてから曲げる案では、曲げ後の穴位置と穴形状を試作で測定します。

曲げ後に穴を加工する案では、工具を入れる方向、加工中の保持方法、金型や製品との干渉を確認します。完成品の基準から穴位置を測定できるかも確かめます。

各案の穴位置・穴形状の測定結果を図面要求と照合し、位置決めと搬送を含む加工手順を比較してください。図面要求を満たせる工程案について、使用する設備と必要な生産速度を確認します。

絞り工程は割れ・しわと板厚減少を確認して分ける

深い絞り形状を一度に成形すると、割れ、しわ、局所的な板厚減少が生じる場合があります。これらの不良が生じる場合は、絞り工程を分け、各工程後の形状、板厚、割れ・しわ、しわ押さえ力、潤滑、被加工材の流れを確認します。フランジのトリミングや穴加工を絞り後に行う方法も検討します。

順送加工では製品を切り離す工程までキャリアで保持する

順送加工では、キャリアやつなぎ部で加工途中の材料を保持し、次の工程へ送ります。順送加工で製品を途中で完全に切り離すと、その後の工程へ送るための保持部分がなくなります。製品を切り離す工程まで安定して保持できるキャリアの幅と強度を確保し、スクラップの排出と製品の取り出しが干渉しない配置にします。

プレス加工の工程案は試作で確認する

工程案を作成したら、各工程を想定どおりに加工できるか試作で確認します。完成品と各工程後の加工途中品を測定し、重要寸法が最初に公差を外れた工程、割れ・しわ、外観、搬送状態を確認します。工程を変更した場合は、後続工程の位置決め、加工荷重、被加工材の保持、測定基準への影響も確認します。

確認する対象確認する状態見直す内容
寸法精度曲げ後の穴位置、送りピッチの累積誤差、工程ごとの測定基準精度が必要な穴を後工程で加工、関連する穴を同じ工程で加工
被加工材の流れ絞り時のしわ・割れ、板厚変化、潤滑絞り工程を分ける、各工程の形状・しわ押さえ条件を変更
搬送キャリアの強度、把持位置、加工途中品の姿勢、金型との干渉キャリアの幅・保持位置、製品を切り離す工程を変更
加工荷重各工程の加工荷重、金型内の荷重の偏りステーション配置や工程分割を変更
後処理・検査洗浄、表面処理、測定具への載せ方マスキング、基準面の保護、検査工程の追加

単発加工、順送加工、トランスファー加工のどれを選ぶかも、試作結果と生産条件から決めます。生産数量、工程数、コイル材・板材など被加工材の供給方法、キャリアとして残す幅、金型構造、プレス機と搬送装置の連動方法、設計変更時に修正する金型の範囲を確認してください。

まとめ

プレス加工の工程設計では、製品図面から基準面・基準穴、重要寸法、外観、バリ方向、後処理を確認します。曲げ・絞りで生じる変形と、順送加工やトランスファー加工での保持・搬送を考慮して加工順を決めます。

工程案は、重要寸法、割れ・しわ、板厚変化、搬送状態、加工荷重、検査方法を試作で確認します。工程案の検討に使う図面、被加工材の材質・板厚、重要寸法、生産予定数量、使用予定のプレス機、後処理を整理し、まだ決まっていない条件も明記してください。

プレス加工・金型の相談を受け付けています

株式会社アイカタマッチングでは、プレス加工やプレス金型に関する個別案件の相談を受け付けています。依頼先が分からない場合や、仕様の整理に迷っている場合も、分かる範囲からご相談ください。

問い合わせフォームから相談する技術情報を見る

よくある質問

抜き・曲げ・絞りは、どの順番にするのが一般的ですか?

抜き・曲げ・絞りの工程順は、完成品の基準面と重要寸法、曲げによる穴位置の変化、絞り時の被加工材の流れ、工程間の保持・搬送方法を確認して決めます。

穴は曲げる前と後のどちらで抜きますか?

穴が曲げ部から離れ、曲げ後も位置精度を満たせる場合は、曲げ前に穴を抜く方法があります。穴が曲げ部に近い場合や、曲げを挟んだ穴同士に位置精度が必要な場合は、曲げ後の穴抜きも検討してください。

順送加工にすれば工程はすべて金型内へまとめられますか?

順送加工で金型内へまとめる工程は、キャリアで加工途中の材料を保持できるか、各工程を金型内に配置できるか、加工荷重が一部に偏らないかを確認して決めます。検査、切削、表面処理などは別工程にする場合もあります。

工程設計の相談前に何を準備すればよいですか?

図面と3Dデータ、被加工材の材質・板厚、重要寸法、外観面、バリ方向、数量、使用予定のプレス機・送り装置、後処理、検査条件を分かる範囲で整理します。決まっていない条件もそのまま伝えてください。