プレス加工の見積りには、金型を設計・製作・調整するための金型費と、完成した金型で製品を加工する際の製品加工費があります。複数社へ見積りを依頼する場合は、数量、材料、検査、梱包などの条件をそろえ、金型費に含まれる作業範囲も確認します。
この記事で分かること
- 01金型費と製品加工費の違い
- 02プレス金型の費用が変わる主な条件
- 03プレス金型費の見積り内訳と追加費用
- 04プレス加工の見積り依頼前にそろえる情報
プレス加工の見積りには、主に「金型費」と「製品加工費」があります。金型費は金型の設計・製作にかかる費用、製品加工費は完成した金型を使って製品を加工する際の費用です。
見積りを比較するときは、総額だけでなく、金型費にどの作業が含まれるか、トライや金型修正が何回分含まれるかを確認します。製品加工費については、数量、材料、検査、梱包などの条件を各社でそろえる必要があります。
この記事では、2つの費用の違い、金型費が変わる理由、別途費用になる作業、見積り依頼前にそろえる情報を解説します。
プレス加工の見積りに含まれる金型費と製品加工費
金型費は、金型を設計・製作し、品質基準を満たす製品を加工できる状態へ調整するための費用です。設計、材料、部品加工、組付け、トライ、測定、金型修正、再トライなどが含まれます。
製品加工費は、その金型を使って製品を加工する際に発生します。見積書では1個あたりの単価で示されることが多く、数量、材料、段取り、検査、梱包などの条件によって変わります。試作・評価用の製品にも加工費は発生します。
| 費用区分 | 主な内容 | 見積りで確認すること |
|---|---|---|
| 金型費 | 設計、材料、部品加工、購入部品、組付け、仕上げ、トライ、測定、金型修正、再トライ | トライ・測定・金型修正が何回分含まれるか、合格基準を満たす前と、製品仕様を変更した後で費用の扱いがどう変わるか |
| 製品加工費 | 材料、プレス加工、段取り、製品検査、梱包など | 数量、ロット、材料の支給有無、検査方法、梱包、納入の条件が各社で同じか |
プレス金型の費用が変わる主な条件
金型費は、金型の構造、製品の形状や材質、求める精度、生産数量、納期によって変わります。複雑な構造や厳しい品質基準が必要になるほど、設計・加工・調整の工数が増えるためです。
試作型と量産型では、想定数量と耐久性が異なる
試作型は、形状確認や少量の評価に使う金型です。量産型より構造や材料を簡略化できる場合があり、初期費用を抑えやすい一方、量産型と同じ耐久性や加工速度を前提にしない場合があります。
量産型は、予定する生産数量に耐えられる材料や構造を採用し、安定した加工と保全のしやすさを考慮して設計します。試作後に量産型を製作する場合は、試作で確認する項目と、量産型の設計に引き継ぐ測定結果や不具合情報を事前に決めます。
単発型・順送型・トランスファー型で工程と費用が変わる
単発型、順送型、トランスファー型では、工程の配置と、材料や加工途中の製品を次の工程へ送る方法が異なります。
- 単発型:一つの金型で、抜きや曲げなど一つの工程を行います。複数工程が必要な場合は、工程ごとに金型を替えて加工します。
- 順送型:帯状の材料を一定量ずつ送り、一つの金型内に並べた複数の工程で連続加工します。
- トランスファー型:加工途中の製品を搬送装置で次の工程へ移しながら、複数の工程を連続して加工します。
順送型やトランスファー型は、多くの製品を連続加工しやすい一方、単発型より金型や搬送設備が複雑になり、金型費が高くなる傾向があります。型構造を比較するときは、予定数量を加工できる速度、歩留まり、段取り時間、消耗部品の交換費、保全費を確認します。
厳しい公差・複雑な形状・難加工材では金型費が高くなりやすい
厳しい寸法公差、深絞り、複雑な曲げを指定した製品や、ステンレス、高張力鋼板などの加工が難しい材料を使う製品では、金型の設計・加工・調整に時間がかかります。トライや金型修正の回数が増えるほど、金型費も高くなりやすくなります。
図面を確定する前に、機能上必要な公差と、緩和できる公差を分けます。そのうえで、要求仕様を満たせる加工方法と金型構造を、金型メーカーやプレス加工会社と検討します。
短納期では特急手配や休日対応の費用が加わることがある
短納期を指定すると、設計・加工工程の組み替え、材料の特急手配、外注加工、休日対応、特別輸送が必要になり、通常納期より費用が高くなる場合があります。希望する納期と、必ず守る必要がある最終期限を分けて伝えると、通常手配で対応できる工程を検討しやすくなります。
合格基準やトライ回数が未定だと見積額が高くなりやすい
寸法や外観の合格基準、測定方法、使用するプレス機、材料の支給条件、金型修正の範囲が決まっていないと、必要な作業量を正確に見積もれません。金型メーカーは、想定される追加作業を見積額に含めるか、条件確定後の別途見積りとする場合があります。未確定の条件と確定予定日を見積り依頼時に伝えてください。
プレス金型費の主な見積り内訳
金型費の見積書は、会社によって項目名やまとめ方が異なります。ここでは主な内訳として、設計、材料・購入部品、加工、組付け・調整、トライ・検査を挙げ、各項目に含まれる作業と追加費用が発生する条件を整理します。
| 内訳 | 費用が変わる主な理由 | 見積りで確認すること |
|---|---|---|
| 設計費 | 工程数、型構造、設計レビュー、解析、部品点数 | どこまで設計するか、提出される図面は何か、設計変更は何回分含まれるか |
| 材料・購入部品費 | 金型材、標準部品、センサー、表面処理、予備部品 | 予定する生産数量と型寿命に適した材料・部品か |
| 加工費 | 切削、研削、ワイヤーカット、放電加工、熱処理、手仕上げ | 金型部品の公差、加工深さ、加工方法が見積り条件に含まれているか |
| 組付け・調整費 | クリアランス、材料の流れ、バリ、抜け、摺動部の調整 | 調整後の合格基準と確認方法が決まっているか |
| トライ・検査費 | トライ回数、測定点数、検査成績書、金型修正、再トライ | 何回分のトライと金型修正が含まれるか、追加時は誰が費用を負担するか |
プレス金型の見積りに含まれる作業と別途費用になる作業
トライ、測定、金型修正、再トライは、いずれも金型費に関わる作業です。ただし、提示された見積額に含まれる回数や修正範囲は、会社によって異なります。当初の合格基準を満たすための作業が何回分含まれるかを確認します。
見積り後に製品図面や材質を変更した場合は、金型の追加改造や再トライが必要になり、別途費用になることがあります。合格後の追加サンプル、金型の輸送、予備部品、図面・加工データの提供も、当初の見積りに含まれているとは限りません。別途費用になる作業、その発生条件、費用の負担者を契約前に決めます。
- STEP 1見積りに含まれない作業を確認する見積書の備考欄と除外項目を読み、含まれていない作業を一覧にします。
- STEP 2別途費用になる条件を確認する仕様変更、トライ回数の超過、追加サンプルなど、費用が加わる条件を金型メーカーへ確認します。
- STEP 3数量と品質の条件を各社でそろえる試作数量、月産・年間数量、合格基準、検査方法を同じ条件にします。
- STEP 4金型費と製品加工費の合計で比較する金型製作時の費用と、予定数量を加工した場合の費用を合計します。
| 別途費用になりやすい項目 | 確認すること |
|---|---|
| 追加トライ | 当初の合格基準を満たすための再トライは何回分含まれるか。製品仕様を変更した後のトライは別途費用になるか |
| 製品仕様の変更 | 製品図面、材質、予定数量を変更した場合、再見積りが必要になる条件は何か |
| 輸送・梱包 | 金型の輸送、重量物用の車両、梱包、搬入作業の費用は含まれるか |
| 検査成績書 | 測定点数、提出書類、限度見本の作成、外観検査は含まれるか |
| 消耗部品・予備品 | パンチ、ダイ、ばね、ガイド部品の予備品は含まれるか |
| 図面・加工データ | 提供されるデータ、利用できる範囲、対価、秘密保持の条件は何か |
金型の保管・点検・修理にかかる費用
量産で長期間使用する金型には、製作時の金型費だけでなく、保管、防錆、定期点検、消耗部品の交換、修理・改造の費用もかかります。見積り段階で、金型をどの会社が保管・点検するか、保管料や修理費を誰が負担するかを確認します。
保管場所と期間、点検方法、費用負担を決める
金型の保管場所と期間、点検頻度、防錆方法、長期間使用しない場合の扱いを決めます。生産終了後に金型を返却・廃棄する条件と、その輸送費・廃棄費の負担者も契約書や仕様書に記載します。
消耗部品・予備品の交換条件を決める
パンチ、ダイ、ばねなどの交換基準と、予備品を保管する会社を決めます。部品の調達期間が長い場合は、予備品を保有する費用と、部品待ちで生産が止まった場合の損失を比較し、保有する部品と数量を決めます。
金型図面・加工データの提供条件
金型を発注しても、金型図面や加工データまで納品されるとは限りません。また、金型メーカーがもともと保有する設計ノウハウは、金型の所有権とは別に扱われます。
データの提供を依頼する場合は、提供される図面・データの種類、利用目的、第三者へ提供できる範囲、権利の帰属、対価を契約書や仕様書で決めます。中小企業庁の「知的財産取引に関するガイドライン・契約書のひな形」も参考になります。
プレス加工の見積り依頼前にそろえる情報
製品図面に加え、製品の用途・使用環境、数量、品質基準、納期、材料の支給有無を伝えます。未確定の項目には、未定であることと確定予定日を記載してください。概算見積りの前提と、正式見積りまでに追加で必要な情報が明確になります。

- 製品図面、3Dデータ、写真、現物サンプル
- 製品の用途、使用環境、組付け先
- 材質、板厚、表面処理、材料支給の有無
- 寸法公差、重要管理寸法、外観の合格基準
- 試作数量、月産数量、年間数量、量産開始予定
- 希望する納期と、必ず守る必要がある最終期限
- 使用予定のプレス機、工場条件、金型の搬入条件
- トライ回数、測定点数、検査成績書の要否
- 過去に発生した不具合、懸念点、設計変更の可能性
- 金型の保管・点検、予備部品、図面・データの必要範囲
「とにかく安く」「急ぎで」「図面は後で」「数量は未定」だけでは、金型メーカーが必要な作業量を判断できません。決まっていない項目は空欄にせず、「未定」「概算で回答希望」「相談したい」と記載してください。金型メーカーも、不足している情報を具体的に質問できます。
プレス加工の相見積りで比較する項目
安い見積りが不適切とは限りません。標準部品の使用、工程の削減、既存設備に合う型構造の採用など、合理的な方法で金型費を抑えている場合があります。一方で、トライ、測定、金型修正、検査が見積額に含まれていないため、総額が安く見える場合もあります。
各社へ、金型費に含まれる作業、別途費用になる条件、量産開始後の点検・修理の担当範囲を確認してください。さらに、同じ数量を加工した場合の製品加工費を加え、金型の製作から予定数量の加工までにかかる費用を比較します。
まとめ
プレス加工の見積りは、金型費と製品加工費を分けて確認します。金型費では、設計・製作だけでなく、トライ、測定、金型修正、再トライが何回分含まれるかを確認してください。製品加工費では、数量、材料、段取り、検査、梱包の条件を各社でそろえます。
見積額に差がある場合は、金型費に含まれる作業、別途費用になる条件、量産開始後の保管・点検・修理の費用を金型メーカーへ確認します。総額だけでなく、同じ範囲・同じ条件で比較することが重要です。
プレス加工・金型製作の見積りを相談できます
相型MATCHINGでは、図面や仕様、数量、希望納期をもとに、対応できる金型メーカー探しと見積りの相談ができます。
よくある質問
プレス加工の見積りと金型の見積りは、何が違いますか?
プレス加工の見積りには、金型費と製品加工費が記載されることがあります。金型費は、金型の設計・製作・調整にかかる費用です。製品加工費は、その金型を使って製品を加工する際の費用です。見積書では、2つの費用を分けて確認してください。
製品図面がなくても見積りを相談できますか?
写真、現物、用途、概略寸法、材質、数量、希望納期が分かれば、概算を相談できる場合があります。正式な見積りには製品図面や詳しい仕様が必要になることが多いため、未確定の項目と確定予定日を伝えてください。
最も安い見積りを選んでも問題ありませんか?
安い理由が、標準部品の使用や工程の削減など合理的なものであれば、候補にできます。ただし、トライ、検査、金型修正、保全が別途費用になっている場合は、最終的な費用が高くなることがあります。含まれる作業範囲をそろえて比較してください。