プレス機を選ぶときは、工程ごとの加工荷重を求め、能力線図で使用できる範囲を確認します。打抜き荷重の式、曲げ・絞りで必要な条件、仕事能力、偏心荷重、金型取付寸法まで解説します。
この記事で分かること
- 01加工荷重の計算打抜き・曲げ・絞りで使う条件
- 02能力線図荷重とスライド位置の関係
- 03仕事能力と偏心荷重加工エネルギーと荷重中心を確認
- 04金型と設備の仕様取付寸法・ストローク・生産条件
プレス機の加圧能力計算で求める加工荷重
プレス機は、金型を取り付けたスライドを動かし、被加工材へ荷重を加えて切断や成形を行う設備です。加圧能力は、プレス機の構造上、安全に使用できる最大荷重を示す仕様です。機械プレスで使用できる荷重はスライド位置によって異なるため、必要荷重を計算し、対象機種の能力線図と比較して選びます。
打抜き加工の荷重計算式
打抜き加工では、切断する輪郭の合計長さ、板厚、被加工材のせん断抵抗から打抜き力を求めます。
加工周長には、外形と穴を同時に抜く場合の切断長さを含めます。シャー角を設ける場合や切断する箇所の荷重が異なるタイミングで生じる場合は、対象金型の形状に適した式で荷重の変化を求めます。打抜き仕事量は、打抜き力、板厚、被加工材が破断するまでに刃先が板厚へ食い込む割合から求めます。
外形と穴を同時に抜く計算例
平行な刃先で、外形60mm×40mmの長方形と直径10mmの丸穴2個を同時に抜く場合を考えます。板厚は1mm、せん断抵抗は300N/mm²と仮定します。寸法・板厚・せん断抵抗は、この例の計算用条件です。実部品では図面の切断寸法・板厚と、対象材料のせん断抵抗を入力します。
| 計算する量 | 計算式 | 計算結果 |
|---|---|---|
| 外形の加工周長 | 2×(60+40) | 200mm |
| 丸穴2個の加工周長 | 2×3.14×10 | 62.8mm |
| 合計加工周長 | 200+62.8 | 262.8mm |
| 打抜き力 | 262.8×1×300÷1000 | 78.84kN(約78.8kN) |
円周率は3.14として計算しました。外形と穴を抜くタイミングを変える金型では、各切断箇所の荷重が生じるスライド位置を求め、同じ位置で重なる荷重を計算します。この例の計算結果から設備を選ぶ際も、実際の加工位置、仕事能力、許容偏心荷重、機種ごとの使用範囲を確認してください。
曲げ・絞り加工の荷重計算条件
曲げ荷重は、曲げ方式、曲げ長さ、板厚、被加工材の引張強さ、Vダイ幅などで変わります。絞り加工では、ブランク径、パンチ径、板厚、被加工材の引張強さ、絞り深さに加え、しわ押さえ力と加工に必要なエネルギーを確認します。対象の曲げ方式や絞り形状に適用できる計算式と係数を選び、図面寸法と材料特性を代入します。
| 加工工程 | 計算に使う条件 | 求める値 | 設備選定で確認する内容 |
|---|---|---|---|
| 打抜き | 加工周長、板厚、せん断抵抗、シャー角 | 打抜き力、打抜き仕事量 | 同時に抜く箇所、ブレークスルー、金型刃先の状態 |
| 曲げ | 曲げ方式、曲げ長さ、板厚、引張強さ、Vダイ幅 | 曲げ荷重 | 金型の耐圧、曲げ角度、スプリングバック |
| 絞り | ブランク径、パンチ径、板厚、引張強さ、絞り深さ | 絞り力、しわ押さえ力、加工エネルギー | 割れ、しわ、加工油の供給状態、絞り工程数 |
| 順送・複合加工 | 工程ごとの荷重、荷重が加わる位置、工程ピッチ | 同時に働く荷重、荷重中心 | 能力線図、許容偏心荷重、仕事能力 |
加工荷重の計算からプレス機を選ぶ手順
- STEP 1工程と被加工材を確認加工方式、被加工材の材質、板厚、加工寸法を確認する
- STEP 2加工荷重を計算工程ごとの荷重と同時に働く荷重を求める
- STEP 3能力線図を確認荷重が生じる区間の各スライド位置で使用できる加圧力を確認する
- STEP 4設備と金型の仕様を確認仕事能力、偏心荷重、取付寸法、安全装置を確認する
荷重はNやkN、被加工材のせん断抵抗や引張強さはN/mm²やMPaで示されます。入力値の単位をそろえ、式へ代入した数値と単位を残すと、設計・設備担当者が計算内容を後から確認できます。
加工に必要な荷重と能力線図の確認
機械プレスの能力線図は、下死点からのスライド位置と、その位置で使用できる加圧力の関係を示します。公称能力を発生できる最も高い位置が能力発生位置です。加工荷重が生じるスライド位置の範囲を求め、その区間の荷重を能力線図と比較します。最大荷重の位置に加え、加工開始から終了までの各位置で使用できる加圧力を超えないか確認してください。
下死点から離れた位置で大きな荷重が必要な加工では、公称能力以内の計算結果でもトルク能力を超える場合があります。深絞りのようにスライドが長い距離を移動する間も荷重が続く加工や、連続運転する加工では仕事能力を確認してください。仕事能力は、1ストロークで使用できるエネルギーと、モーターが一定時間に補給できるエネルギーの範囲を示します。
抜き加工では、被加工材が破断した直後に金型とプレス機に蓄えられた弾性エネルギーが解放され、振動と騒音が発生します。この現象をブレークスルーと呼びます。打抜き力と打抜き仕事量を求め、対象機種で許容される使用範囲に収まるか確認します。
| プレス機の仕様 | 確認する内容 | プレス機の選定に使う情報 |
|---|---|---|
| 加圧能力 | 公称能力、能力発生位置、使用できる荷重の範囲 | 最大加工荷重、荷重が生じるスライド位置 |
| トルク能力 | 下死点からの各位置で発生できる加圧力 | 加工開始位置、加工深さ、荷重線図 |
| 仕事能力 | 1ストロークの加工エネルギー、連続運転で使えるエネルギー | 必要な加工エネルギー、1分間当たりのストローク数、連続運転時間 |
| 許容偏心荷重 | 荷重中心の位置に応じて使用できる荷重 | プレス金型内の加工工程、各工程の荷重と位置、荷重中心 |
余裕の取り方は、加工方法と対象機種の使用範囲に合わせます。加工荷重とスライド位置は能力線図、加工エネルギーとストローク数は仕事能力、荷重中心のずれは許容偏心荷重線図で確認します。
プレス機選定で確認する偏心荷重・仕事能力・取付寸法
加工荷重の中心がプレス機の中心からずれた状態を偏心荷重と呼びます。順送金型、複数穴の同時抜き、左右非対称の曲げでは、工程ごとの荷重と位置から荷重中心を求め、許容偏心荷重線図の範囲内か確認します。1ポイントプレスでは、荷重中心をプレス機の中心に近づけるように金型内の加工位置を決めます。
新しく金型を製作する場合は、使用するプレス機のダイハイト、ボルスター寸法、クランプ位置、ストロークに合わせて金型の外形と取付部を設計します。既存金型を使う場合は、金型を閉じたときの高さがプレス機のダイハイト調整範囲に収まるか確認します。金型の外形寸法と取付穴は、ボルスター寸法と取付部の位置に合わせて確認してください。
| プレス機の選定に使う情報 | 内容 | 選定時に確認する仕様 |
|---|---|---|
| 製品と被加工材 | 製品図面、CADデータ、被加工材の材質、板厚、公差 | 加工方法、工程数、加工荷重 |
| 工程と荷重 | 工程案、工程ごとの荷重と位置、荷重が重なる時点 | 加圧能力、トルク能力、許容偏心荷重 |
| 生産条件 | 必要な生産数、1分間当たりのストローク数、連続運転時間 | 仕事能力、モーター容量、使用できるストローク数 |
| 金型 | 外形寸法、閉じたときの高さ、重量、取付穴、クランプ位置 | ダイハイト、ボルスター寸法、許容金型重量、取付方法 |
| 既存設備 | メーカー、型式、設置年、改造履歴 | 対象機種の能力線図、取付寸法、安全装置 |
プレス機の選定に使う情報
プレス機の選定には、製品図面、被加工材の材質と板厚、工程案、工程ごとの荷重と位置、必要なストローク数、加工時のスライド速度、金型の外形寸法・高さ・重量を使います。曲げ・絞り加工では、荷重が生じ始める位置と加工が終わる位置も確認します。既存設備を使う場合は、メーカーと型式を特定し、該当機種の能力線図と使用範囲を確認してください。
作業者の安全を確保するため、安全装置と実際の作業方法を確認します。安全囲い、光線式安全装置、非常停止装置、金型交換や材料供給時の作業方法は、使用するプレス機、周辺装置、作業内容に適用される法令と取扱説明書に基づいて確認します。
まとめ
加工に必要な荷重は、打抜き、曲げ、絞りなどの工程ごとに計算します。機械プレスでは、荷重が生じるスライド位置の範囲を能力線図と比較し、仕事能力と許容偏心荷重も確認します。
製品図面、被加工材、工程案、工程ごとの荷重と位置、必要なストローク数、金型寸法を基に、使用するプレス機を選びます。加圧能力、トルク能力、仕事能力、許容偏心荷重、取付寸法が使用範囲内か確認してください。
プレス加工・金型の相談を受け付けています
株式会社アイカタマッチングでは、プレス加工やプレス金型に関する個別案件の相談を受け付けています。依頼先が分からない場合や、加工荷重、使用設備、金型寸法に迷っている場合も、分かる範囲からご相談ください。
よくある質問
加工に必要な荷重はどのように計算しますか。
打抜き、曲げ、絞りなどの工程ごとに加工荷重を計算します。同時に加工する工程がある場合は荷重が重なるスライド位置を求め、その区間の荷重を能力線図と比較します。仕事能力、許容偏心荷重も確認して使用するプレス機を選びます。
打抜き加工の荷重はどの式で求めますか。
打抜き力P(kN)は、加工周長l(mm)×板厚t(mm)×せん断抵抗σs(N/mm²)÷1000で求めます。実際の設備選定では、シャー角、同時に抜く箇所、ブレークスルー、金型刃先の状態も確認します。
計算荷重にどのくらい余裕を加えますか。
使用できる荷重の範囲は、加工方法とプレス機の機種によって変わります。計算荷重、荷重が生じるスライド位置、加工エネルギー、偏心量を基に、対象機種の選定基準と使用範囲を確認してください。
プレス機の公称能力を超えなければ使用できますか。
公称能力に加え、荷重が生じるスライド位置を能力線図で確認します。加工エネルギーは仕事能力、荷重中心のずれは許容偏心荷重、金型の取付可否はダイハイトやボルスター寸法で確認します。
プレス機の選定には何が必要ですか。
製品図面、被加工材の材質と板厚、工程案、工程ごとの荷重と位置、必要なストローク数、加工時のスライド速度、金型の外形寸法・高さ・重量を確認します。既存設備を使う場合はメーカーと型式も特定してください。