送り装置は、被加工材の材質・板厚・板幅、送りピッチ、必要な生産速度、送り精度をもとに選びます。金型内の位置決めや材料を解放するタイミングも確認し、量産前に試運転します。
この記事で分かること
- 01被加工材を確認する幅・板厚・送りピッチ・外観基準
- 02送りと矯正を分ける送り機構・矯正・ライン構成
- 03金型やプレス機の仕様を確認する送りピッチ・取付寸法・ストローク数
- 04導入後の確認事項送り精度・停止原因・安全装置
プレス加工の送り装置とは
プレス加工の送り装置とは、コイル材や帯材をプレス機の動きに合わせて一定の長さずつ金型内へ供給する周辺装置です。順送加工では、プレス機のストロークに合わせて材料を次の加工位置へ送ります。材料を送り、所定の位置で止め、金型のパイロットで位置を修正するときには材料の保持を解きます。この保持を解く動作をリリースと呼びます。
送り装置は、プレス機の動作タイミング、金型の送りピッチ・パイロット・材料ガイド、被加工材の材質・板厚・板幅・表面状態に合わせて使います。コイル材を使う設備では、アンコイラーが材料をほどき、レベラーが巻き癖やひずみを矯正し、送り装置が設定した長さだけ材料を送ります。レベラーと送り装置を一体にしたレベラーフィーダーもあります。
送り装置を選ぶ前に確認する情報
送り装置を選ぶときは、材料幅、板厚、コイル質量、送りピッチ、外観基準、矯正の要否、必要な生産数を整理します。金型設計者には、送りピッチ、パイロット位置、材料ガイド、リリースのタイミングを確認します。装置の送り性能は、設定するプレス機の回数と、材料を送れる時間に合わせて検討します。
金型内の加工位置と材料の送りピッチは、ストリップレイアウトで確認します。製品配置、加工順序、パイロット穴、材料ガイド、スクラップの排出経路を金型設計者と共有してください。バリの向きや反りの許容範囲は、製品図面の要求として伝えます。
送りピッチとパイロットの位置修正・リリースを金型の仕様で確認し、候補機種の材料条件と送り性能を比べます。
| 項目 | 選定に必要な情報 | 金型で確認する箇所 | 送り装置で確認する仕様 |
|---|---|---|---|
| 板幅 | コイルの板幅、板厚、公差、材料端部の状態 | 材料ガイド、ストリップ幅、端材幅 | 対応する板幅・板厚、材料の押さえ方 |
| 送りピッチ | 製品寸法、歩留まり、工程数 | ステーション間隔、パイロット位置 | 送り長さ、繰返し精度、制御方式 |
| 必要な生産速度 | 1時間当たりの必要生産数、1ストローク当たりの製品数、プレス機のストローク数(spm) | 加工と送りのタイミング、スクラップの排出 | 送り速度、加速度、1回の送りに必要な時間 |
| 材料の状態 | 外観基準、表面処理、巻き癖 | 外観基準がある面、金型・ガイドとの接触箇所 | ロールの押さえ力、材料をつかむ方法、レベラーの矯正能力 |
| 安全装置と作業手順 | 作業範囲、材料交換・詰まり除去、停止後の復帰手順 | 金型内センサー、材料が詰まる箇所 | 安全囲い、インターロック、非常停止 |
候補機種の仕様書では、材質・板厚・板幅の組合せ、送り長さ、送り回数、送り精度を確認します。空気圧を使う機種では、必要な空気圧と供給条件も装置メーカーへ確認してください。取付寸法、送り線の高さ、信号の受け渡しは、金型とプレス機・送り装置の担当者で確認する項目です。
送り機構と矯正・ライン構成の違い
ロールフィーダーとグリッパーフィーダーは、材料を送る機構の違いです。レベラーは材料を矯正する装置であり、レベラーフィーダーは矯正と送りを組み合わせた装置です。コイルフィーダーラインは、アンコイラー、レベラー、フィーダーなどの設備構成を指します。下表では、送り機構と周辺装置の構成を分けて確認します。
ロールフィーダーは、ロールで帯材を挟み、ロールを回転させて送ります。グリッパーフィーダーは、材料をつかむ部分を移動させて送ります。ロールの押さえ力や材料をつかむ位置は機種の設定範囲を確認し、実測した送り長さと材料表面の跡を試運転で記録します。レベラーフィーダーでは、矯正後の反りも製品の要求と比べます。
| 装置・構成 | 確認する仕様 | 注意点 | 選定時に共有する情報 |
|---|---|---|---|
| NCロールフィーダー | 板幅、板厚、送り長さ、送り回数 | ロールの押さえ力、滑り、材料表面の傷、材料を解放するタイミング | 材質、外観基準、送りピッチ、必要な生産速度 |
| グリッパーフィーダー | 材料をつかむ位置、送り長さ | つかむ部分の長さ、取付空間、材料の変形 | ストリップ幅、端材幅、金型周辺スペース |
| レベラーフィーダー | 材質、板厚、板幅、コイル質量、送り長さ | 矯正後の反り、材料表面の傷 | コイルの巻き癖、許容する反り、外観基準 |
| コイルフィーダーライン | アンコイラー、レベラー、フィーダーの構成 | 設置寸法、材料交換、停止後の復帰、安全囲い | コイル質量、材料交換の頻度、設置場所の寸法 |
送り方式を決める前に確認すること
- STEP 1 材料を確認 材質、板厚、板幅、巻き癖、材料表面の外観基準を整理する。
- STEP 2 金型との関係を確認 ストリップレイアウト、パイロット位置、材料ガイド、材料を解放するタイミングを確認する。
- STEP 3 必要回数と送り時間を確認 必要生産数と1ストロークの製品数から回数を求め、材料を送れる時間内に設定ピッチを送れるか確認する。
- STEP 4 安全装置を確認 安全囲い、非常停止、材料交換・詰まり除去、停止後の復帰手順を確認する。
送り精度を比べるときは、仕様書の測定条件を装置メーカーへ確認します。送り長さ、材料条件、回数、リリースの有無など、実際に使う条件と仕様書の条件を整理してください。
必要な回数と送り時間を計算する例
計算の考え方を示す仮定例として、必要生産数を4,800個/時、1ストローク当たりの製品数を2個とします。停止や不良を含めない理論上の必要回数は、4,800÷60÷2=40spmです。1ストロークの時間は60÷40=1.5秒になります。実際の生産数を検討する際は、材料交換や停止、不良による損失を別途見込みます。
1.5秒は1ストローク全体の時間です。材料を送れる時間は、金型の動きと送り開始・終了のタイミングから装置の担当者と決めます。その時間内に加速・減速を含めて設定した送りピッチを送れるか、候補機種の送り性能図で確認してください。サーボプレスでは、使用するスライドモーションに合わせて送り時間を確認します。
送り速度・位置精度・レベラーの仕様
量産前の試運転は、プレス機・送り装置・金型の担当者と安全な実施条件を決めて行います。量産で使用する材料と回数で、実際の送り長さ、パイロット穴の状態、製品寸法を測定します。送り不足、蛇行、表面傷、スクラップ詰まりがあれば、発生位置と装置の設定を記録してください。
パイロットは、加工前に穴へ入って材料位置を修正します。送り装置による位置合わせ、パイロット穴とピンの関係、材料ガイド、材料のリフト、リリースのタイミングを金型設計者と確認します。送り装置の繰返し精度と製品の寸法精度は別の評価です。試加工した製品の寸法を図面の要求値と比べ、穴やピンの状態も観察してください。
不具合が発生したときは、下表の現象や部位を観察し、発生時点の設定と合わせて原因を調べます。
| 不具合・停止 | 観察する現象 | 確認する箇所 | 主な相談先 |
|---|---|---|---|
| 送り不足 | 穴の位置ずれ、工程間の干渉、送りミス | 送り長さ、加速度、材料を解放するタイミング | 送り装置メーカー、加工会社 |
| 材料の蛇行 | 端材幅の変動、材料ガイドとの接触、傷 | 材料ガイド、レベラー、コイルの状態 | 金型メーカー、送り装置メーカー |
| 材料表面の傷 | 外観基準がある面の打痕、ロール跡 | ロールの押さえ力、材料をつかむ位置、表面処理 | 送り装置メーカー、品質担当 |
| スクラップ詰まり | 設備停止、カス上がり、金型の損傷 | 排出経路、プレス金型内の加工工程、センサー | 金型メーカー、加工会社 |
| 安全機能による停止 | 安全機能の検出による停止、運転開始の制限 | 検出した箇所、安全囲い、インターロック、復帰手順 | プレス機・送り装置のメーカー、安全管理担当者 |
送り装置付きの自動ラインでは、安全囲い、インターロック、非常停止、材料交換・詰まり除去、停止後の復帰手順を安全管理担当者と確認します。動力プレスは、資格を持つ自社の検査者または登録検査業者が行う特定自主検査の対象です。2026年1月1日から適用される検査基準に沿って管理してください。動力プレスを5台以上有する事業場で行う当該機械による作業では、技能講習修了者からプレス機械作業主任者を選任します。設備と作業に応じた対応は、所轄の労働基準監督署へ確認してください。
送り装置の選定に必要な情報
- 製品図面、材質、板厚、板幅、表面処理、外観基準がある面
- ストリップレイアウト案、送りピッチ、工程数、パイロット位置
- 1時間当たりの必要生産数、1ストローク当たりの製品数、プレス機のストローク数(spm)、材料交換の頻度、コイル質量
- 既存設備を使う場合は、送り装置の型式、対応する板幅・板厚、制御方式
- 材料表面の傷、蛇行、送り不足、スクラップ詰まりなど、過去の不具合
- 安全囲い、非常停止、材料交換・詰まり除去の手順、担当者
設備を新設する場合と既存設備へ取り付ける場合では、用意できる情報が異なります。既存設備では型式と仕様書、新設では候補の設備構成を添え、未確定の条件はその内容と確定予定日を伝えてください。
まとめ
選定の相談には、材料条件、ストリップレイアウト、必要な生産数、候補機種の仕様をそろえます。金型の送りピッチと位置修正、装置側の送り可能時間と対応範囲を担当者間で共有してください。
試運転の記録には、材料と回数、送り長さ、製品の要求寸法と測定値を残します。不具合が起きた位置と設定を添え、送り装置の設定や金型の修正が必要か担当者と検討してください。
プレス加工・金型の相談を受け付けています
株式会社アイカタマッチングでは、プレス加工やプレス金型に関する個別案件の相談を受け付けています。依頼先が分からない場合や、仕様の整理に迷っている場合も、分かる範囲からご相談ください。
よくある質問
送り装置を選ぶときは何を確認しますか?
材質、板厚、板幅、送りピッチ、必要な生産速度、送り精度、外観基準を確認します。送りピッチ、パイロット位置、材料ガイド、材料を解放するタイミングは金型設計者に確認し、候補機種の対応範囲や設定値は送り装置メーカーに確認します。
材料幅と板厚だけで送り装置を選べますか?
材質、板厚、板幅に加え、送りピッチ、必要な生産速度、送り精度、外観基準を確認します。材料を解放する方法、金型内の位置決め、安全装置も確認します。
ロールフィーダーとグリッパーフィーダーは何が違いますか?
ロールフィーダーは、送りロールで帯材を挟み、ロールを回転させて送ります。グリッパーフィーダーは、材料をつかむ部分を前後に動かして送る装置です。候補機種の材質・板厚・板幅・送り長さに加え、材料表面の傷、取付空間、金型との干渉を確認してください。
レベラーフィーダーはどんな場合に必要ですか?
コイル材の巻き癖やひずみを矯正する必要がある場合に、レベラーを検討します。矯正と送りを一体にする構成では、候補機種の材質・板厚・板幅の対応範囲と、矯正後の反りを確認してください。
送り装置付きの自動プレスでは、どの安全装置と作業手順を確認しますか?
安全囲い、インターロック、非常停止、材料交換・詰まり除去、停止後の復帰手順を確認します。動力プレスの特定自主検査を実施し、5台以上有する事業場の当該機械による作業では、技能講習修了者からプレス機械作業主任者を選任します。