ABSの射出成形|乾燥管理・温度設定・外観不良の確認手順

更新日 2026/10/04(日)
射出成形
ABSの射出成形乾燥管理・温度設定・外観不良の確認手順

ABSは耐衝撃性や外観に特長がある樹脂です。射出成形に必要な予備乾燥、シリンダー・金型温度、成形収縮率の条件例と、銀条・焼け・変色が出たときの調べ方を解説します。

この記事で分かること

  1. 01成形条件の設定温度・乾燥時間・収縮率の適用条件
  2. 02予備乾燥乾燥条件と乾燥機の状態を確認する
  3. 03成形温度樹脂温度・金型温度と滞留時間を確認する
  4. 04外観不良筋や変色の出方から原因を調べる

ABS樹脂とは

ABSは、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを原料として作られる熱可塑性樹脂です。耐衝撃性や表面光沢を生かした外観部品などに使われ、塗装やめっきに適したグレードもあります。

汎用、耐熱、難燃、透明、繊維強化など、製品に必要な性能に応じたグレードが用意されています。乾燥条件や成形温度の推奨範囲はグレードによって異なります。材料の袋に表示されたメーカー名と品番に対応する技術資料で確認します。

技術資料にある条件をもとに、成形機、製品の形状・大きさ、金型構造に合わせて初期条件を設定します。トライで成形品の外観や寸法、製品に必要な物性を確認し、その結果に応じて条件を調整します。

ABSの成形条件と収縮率の確認

材料メーカーの成形条件表に示された、汎用・透明・耐熱ABSの例を下表に示します。各欄は同じ資料のグレード別条件で、すべてのABSに共通する推奨値ではありません。使用する品番の推奨条件を確認し、成形機、製品形状、金型に合わせて初期設定を決めます。

グレードの例予備乾燥温度・時間シリンダー設定温度金型温度
汎用80〜90℃・3〜5時間220〜240℃40〜80℃
透明80〜90℃・3〜5時間210〜230℃40〜70℃
耐熱90〜100℃・3〜5時間240〜260℃40〜80℃

成形収縮率は、この資料のABS製品群では通常0.4〜0.6%の例が示されています。形状や成形条件によって変わるため、金型寸法の保証値ではありません。

線寸法の収縮率を比べるときは、樹脂の流れに沿う方向と直角方向、試験片の形状、成形後の測定条件を記録します。資料の試験では、成形品を23℃・50%RHで24時間置いた後に寸法を測定しています。試作品の寸法も測定し、必要な公差に対して金型寸法を検討します。

シリンダー設定温度は、成形機のヒーターに設定する温度です。溶融した樹脂の実際の温度と区別して扱います。耐熱、難燃、透明、繊維強化などのグレードでは推奨範囲が異なるため、使用する品番の条件に合わせてください。

ABSの予備乾燥

ABSに残った水分は、成形品の表面に銀条と呼ばれる細長い筋が出る原因になります。箱型熱風乾燥機を使う場合の資料例は、80℃で3〜6時間、または90℃で2〜3時間です。使用品番と乾燥機の方式に合う条件を選びます。

乾燥不足を調べるときは、設定値に加えて、材料が実際に乾燥される時間や乾燥機の状態も確認します。乾燥温度と、材料が乾燥機内にとどまる時間を記録します。設備の点検では、温風の流れやフィルターの状態を確認してください。

点検箇所確認内容確認の目的
乾燥温度・時間品番ごとの推奨値、乾燥機の温度、材料が乾燥機内にとどまる時間材料品番に指定された温度と時間を確保する
温風の流れ温風の量、フィルターの目詰まり、温度調節器の状態設備の不調を調べる
保管・供給開封後と乾燥後の保管状態、成形機へ供給するまでの吸湿防止保管・供給中の吸湿を防ぐ

乾燥後の水分率を管理する場合は、使用品番の資料にある基準と測定方法を記録し、実際の測定結果を基準と比べます。乾燥温度や時間の上限も確認し、乾燥不足の理由に合わせて設定や乾燥機の状態を見直します。

ABSの成形温度と滞留時間

樹脂温度が低く流れにくい状態では、充填不足やウェルドラインが目立つことがあります。温度が高過ぎる場合には、樹脂の分解による焼けや変色が起こることがあります。資料に示された温度が、シリンダーの設定温度と実際の樹脂温度のどちらを指すか確認します。

滞留時間は、樹脂がシリンダーなどの内部にとどまる時間です。シリンダー内やホットランナー内での長い滞留も、熱分解による銀条の原因になります。成形を中断した前後は、樹脂が長く加熱されていないか、停止時間とシリンダーの温度記録を確認します。

金型温度は表面光沢やウェルドラインの目立ち方、残留応力に関わります。金型温度を高くすると外観が改善する場合がありますが、成形サイクルは長くなる傾向があるため、外観と冷却時間を確認して調整します。

ABSの外観不良の原因と対策

外観不良は、現れ方と発生位置を記録してから、関係する材料・成形条件・金型の状態を調べます。次の表は、不良ごとの現象と確認内容の例です。

不良現象確認する内容
銀条表面に細長い筋が現れる乾燥不足、空気の巻き込み、熱分解。乾燥記録に加え、背圧・スクリュー回転数・樹脂温度・滞留を確認する
焼け・変色成形中に樹脂の色が変わる、焼けた跡が出る樹脂温度が高過ぎないか、シリンダーやホットランナーに長く滞留していないか
光沢低下必要な表面の光沢が得られない金型温度と成形品の表面状態。温度を調整した後の光沢と冷却時間を確認する
ショート樹脂が金型内に十分に充填されず、成形品の一部が欠けた形になる樹脂の流動性、射出圧力・速度、ゲートや肉厚、ガスの抜け方
ウェルドライン樹脂の流れが合流した箇所に細い線状の跡が出る合流位置、金型温度、ゲート位置、ガス抜き。外観と必要な強度を確認する
ヒケ冷却して固まる過程で収縮し、表面にくぼみができる肉厚、保圧の圧力・時間、ゲート、冷却状態。形状や金型構造の変更が必要な場合もある

銀条が出た場合は、乾燥の記録と乾燥機の状態を確認し、空気の巻き込みや熱分解も調べます。例えば、指定条件で乾燥した後も銀条が残る場合は、乾燥記録と材料の保管状態を確かめ、背圧やスクリュー回転数、樹脂温度、停止前後の滞留を調べます。乾燥不足、空気の巻き込み、熱分解を区別して確認するための検討例です。

調整では、変更した条件と、その後の不良の出方を記録します。一度に変更する項目を絞り、どの変更で成形品がどう変わったかを確認してください。

まとめ

ABSの射出成形では、使用する品番の技術資料から乾燥条件と温度の推奨範囲を確認し、製品形状、金型、成形機に合わせて初期条件を設定します。トライで外観・寸法・必要な物性を確認し、結果に応じて調整します。

銀条や焼け・変色が出たときは、不良の現れ方と発生位置を記録し、乾燥不足、空気の巻き込み、過熱や長い滞留などを調べます。変更した条件と結果を残し、改善した点と残った不良を確認してください。

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よくある質問

ABSの射出成形では予備乾燥が必要ですか。

予備乾燥を行います。箱型熱風乾燥機を使う場合の資料例は80℃で3〜6時間、または90℃で2〜3時間です。使用品番と乾燥機の方式に合う温度・時間に設定します。

ABSの成形収縮率は何%ですか。

材料メーカーの資料にあるABS製品群では、通常0.4〜0.6%の例が示されています。形状・成形条件・測定方向によって変わるため、使用品番の値と試作品の寸法から金型寸法を検討します。

ABSの成形温度は何℃が目安ですか。

同じ成形条件表の汎用ABS例では、シリンダー設定220〜240℃、金型40〜80℃です。透明や耐熱などのグレードでは範囲が異なります。シリンダー設定値と実際の樹脂温度を区別し、使用品番の推奨範囲に合わせます。

ABS成形で銀条が出たときは何を確認しますか。

乾燥温度・時間、材料の保管状態、乾燥機の温風やフィルターを確認します。空気の巻き込みや熱分解も原因になるため、背圧、スクリュー回転数、樹脂温度、滞留の状態も調べます。