射出成形機は、樹脂を溶かし、締めた金型内へ射出して製品を成形する装置です。成形後は金型を開き、成形品を取り出します。選定では、必要な型締力と1ショットの樹脂量、金型の取付寸法、目標とする成形サイクルを確認します。
この記事で分かること
- 01必要型締力投影面積・内圧・取り数の確認
- 02射出容量の確認製品重量・ランナー・可塑化能力
- 03金型取付仕様タイバー間隔・型厚・ストローク
- 04駆動方式の比較電動・油圧・ハイブリッドの判断基準
必要型締力の求め方
型締力は、樹脂を充填・保圧している間に金型が開かないように締めておく力です。必要型締力は、成形品とランナーを型開き方向から見た投影面積に、キャビティ内圧を掛けて概算します。キャビティ内圧は、材料、肉厚、流動長、ゲート、金型温度、射出速度、保圧によって変わります。
型締力が不足すると金型が開き、バリが発生する場合があります。概算値に量産時の条件変動を考慮したうえで、各機種の型締力が必要な値を満たすか仕様表で確認します。1ショットの必要樹脂量が、射出装置で安定して計量できる範囲に入るか確認します。
必要型締力の計算に使う値
| 入力値 | 確認する内容 | 過小に見積もった場合のリスク |
|---|---|---|
| 投影面積 | 成形品とランナーを型開き方向から見た面積を、すべての取り数分合計する。 | 必要型締力を小さく見積り、バリや寸法のばらつきにつながる。 |
| キャビティ内圧 | 成形品の解析結果や型内圧の実測を参考に、材料・形状・成形条件に合う圧力を見積もる。 | キャビティ内圧を低く見積もると、必要な型締力を小さく見積もるおそれがある。 |
| 余力 | 計算値に対し、量産時のばらつき、条件変更、材料変更をどこまで見るか確認する。 | 量産を始めた後に、射出圧力や速度を調整できる範囲が狭くなる。 |
投影面積と圧力の単位をそろえて記録する
投影面積は、全取り数とランナーを含む範囲を金型図で確かめ、面積の単位を記録します。型内圧は、解析や実測で確認した材料、形状、成形条件と圧力の単位を対応させます。
面積をmm²、圧力をMPaで表す場合、その積はNとなり、1,000で割るとkNになります。仕様表の型締力がkNかtonfかを確認し、同じ単位に換算して照合します。
射出容量と可塑化能力
1ショットに必要な樹脂量は、全取り数分の製品重量と、毎回固化するスプルー・ランナー重量を合計して求めます。成形機の射出体積や射出質量はスクリュー径で変わり、射出質量が基準樹脂で表示されている場合もあります。使用樹脂の溶融時の密度を用いて、必要な樹脂質量を射出体積へ換算します。仕様書がポリスチレン(PS)換算の射出質量を示す場合は、換算基準を確認し、同じ体積基準で比較します。必要な体積が、各機種で安定して計量できる範囲に入るか確認します。可塑化能力は、単位時間に溶融できる樹脂量を示し、kg/hなどで表します。使用する樹脂と、1サイクルで可塑化に使える時間から、次の射出に必要な樹脂量を用意できるか確認します。回復時間は、次の射出量の樹脂を溶融・計量するために必要な時間です。
必要量が射出容量を超えると充填できません。成形機に対して射出量が少なすぎる場合は、計量の安定性とシリンダー内の滞留時間を確認します。製品図面、成形材料のグレード、取り数、ランナー方式、再生材の有無、必要な成形サイクル、外観基準を確認します。ガラス繊維などの充填材が入る材料では、摩耗を考慮してスクリューやシリンダーの材質も確認します。
射出装置の確認内容
- STEP 11ショットの樹脂量を求める製品重量、ランナー重量、取り数を分けて整理します。
- STEP 2溶融時の密度で体積へ換算必要樹脂質量を使用樹脂の溶融時の密度で割り、必要な体積を求めます。PS換算の射出質量を示す仕様書では、その換算基準も確認します。
- STEP 3射出装置の仕様を確認射出体積、最大射出圧力、射出速度、計量ストロークを成形機の仕様書で確認します。
- STEP 4可塑化時間を確認する次のショットの樹脂を溶融・計量する回復時間を確認します。冷却と可塑化の同時動作ができる範囲は機種の仕様で確認し、目標サイクルに収まるか判断します。
| 項目 | 成形機の仕様書で確認する項目 | 選定に使う製品・成形材料の条件 |
|---|---|---|
| ショット重量 | 必要樹脂質量を溶融時の密度で体積へ換算し、各機種の安定して計量できる範囲に入るか。 | 製品重量、ランナー方式、取り数、材料グレード。 |
| 射出圧力・速度 | 薄肉、長流動、外観面、ウェルド、転写性に必要な条件を満たせるか。 | 肉厚、流動長、外観面、重要寸法、過去不良。 |
| 可塑化能力 | 使用樹脂の可塑化能力と回復時間が、目標の成形サイクルを満たすか。 | 年間数量、必要な成形サイクル、材料グレード、乾燥条件。 |
必要樹脂量と射出装置の仕様を対応させる
製品重量、取り数、毎回固化するスプルー・ランナー重量を記録し、必要樹脂量の計算に含めた範囲を明示します。実際の試作品を測定した値と、設計データから求めた値は、取得方法を添えて残します。
体積へ換算するときは、使用グレードの溶融密度とその温度条件、質量と密度の単位を確認します。必要質量をg、溶融密度をg/cm³で表すと、割り算の結果はcm³になります。
候補機の機種名、射出装置の仕様とスクリュー径を記録し、仕様表の同じ組合せで射出体積、圧力、速度を照合します。計量できる範囲や可塑化能力が資料から確認できない場合は、使用樹脂と必要量、目標サイクルを示して成形機メーカーへ確認します。
金型の取付仕様
金型を取り付けるために、外形寸法、取付板、型厚、重量、必要な型開き量を確認します。成形機の仕様書では、タイバー間隔、ダイプレート寸法、使用金型厚、型開閉ストローク、最大型開距離、エジェクタストロークを確認してください。ロケートリング、ノズル、取付穴の寸法も金型図と仕様書で確認します。
既存金型を別の成形機へ移す場合は、金型の外形寸法、型厚、重量、取付穴、ロケートリング、ノズル受け、吊り方法を記録します。油圧中子は油圧回路、ホットランナーは電源・制御、冷却回路は水配管の接続を確認します。エジェクタは必要なストロークと力、突出し位置を確認してください。工場側では、金型の搬入経路、クレーンの吊上げ能力と吊り方法も確認します。
| 金型で確認する項目 | 成形機・周辺設備で確認する項目 | 適合しない場合の支障 |
|---|---|---|
| 金型外形・重量 | タイバー間隔、ダイプレート寸法、許容金型重量。工場側の搬入経路、クレーンの吊上げ能力。 | 搬入・取付ができない、金型交換を安全に行えない。 |
| 型厚・開き量 | 最小型厚、最大型厚、開閉ストローク、デーライト。 | 製品取り出しや金型開閉に必要な距離が不足する。 |
| 突出し・中子 | エジェクタストローク、油圧・電動中子、配線・配管位置。 | 成形品の取り出し、中子の作動、周辺機器の接続に支障が出る。 |
射出成形機の駆動方式
射出成形機には、電動式、油圧式、ハイブリッド式があります。電動式はサーボモーターで各軸を駆動します。油圧式は油圧回路で型締めや射出を駆動します。ハイブリッド式は、電動機構と油圧機構を組み合わせた成形機です。型締め・射出・可塑化などの各軸の駆動方法や、油圧ポンプを駆動する仕組みは機種によって異なります。
各機種について、必要型締力、射出容量、射出圧力、射出速度、可塑化能力、金型取付仕様を満たすか確認します。成形精度、消費電力、作動油の管理、運転音、保守方法、周辺機器との接続を比較してください。
駆動方式ごとの確認内容
| 方式 | 主な構成 | 仕様書と運用で確認する項目 |
|---|---|---|
| 電動式 | サーボモーターで型締め・射出・可塑化などを駆動 | 各軸の仕様、消費電力、必要な潤滑、保守部品、金型取付仕様 |
| 油圧式 | 油圧ポンプ・バルブ・シリンダーで型締めや射出を駆動 | 作動油、油温、漏れ対策、消費電力、制御仕様、保守方法 |
| ハイブリッド式 | 電動機構と油圧機構を組み合わせる | 各軸の駆動方式、油圧設備の範囲、消費電力、保守範囲 |
射出成形機の選定に必要な情報
- 図面製品形状2D図面、3Dデータ、重要寸法、外観面を整理します。
- 成形材料樹脂条件材料名、グレード、乾燥条件、再生材の有無を確認します。
- 金型金型の仕様外形寸法、型厚、重量、取り数、ランナー方式を確認します。
- 量産年間数量と必要な成形サイクル年間数量、必要な成形サイクル、検査基準、不良履歴をまとめます。
候補機の試し打ちで成形状態と品質を記録する
試し打ちを行う場合は、機種、射出装置、スクリュー径、金型、材料グレードとロットを記録します。各試料に番号を付け、キャビティと成形日時、成形条件を対応させます。
充填時間、保圧、樹脂と金型の温度、回復時間、成形サイクルは、設定値と確認できた実際の値を分けて記録します。寸法・外観・組付けを製品仕様の基準と照合し、評価した製品数と合否を残します。
連続成形で確認する時間、試料の採取時点と数量は、製品と量産条件に合わせて決めます。条件を変更した場合は、変更内容と再評価した結果を記録して、選定する機種と量産時の条件を検討します。
まとめ
射出成形機を選ぶ際は、投影面積とキャビティ内圧から必要型締力を概算します。次に、1ショットの樹脂量、可塑化能力、金型の外形・型厚・重量、型開閉ストロークを各機種の仕様で確認します。駆動方式は、必要な成形仕様を満たす各機種について、運用方法と保守方法を比較して選びます。
各機種を比較するときは、製品図面、材料グレード、取り数、金型寸法、年間数量、外観・寸法要求、不良履歴を確認します。未確定の条件を分けておくと、追加で確認する内容が明確になります。
プラスチック成形・金型の相談を受け付けています
株式会社アイカタマッチングでは、プラスチック成形や射出成形金型に関する個別案件の相談を受け付けています。依頼先が分からない場合や、仕様の整理に迷っている場合も、分かる範囲からご相談ください。
よくある質問
射出成形機は型締力だけで選べますか?
型締力だけでは選べません。必要型締力を概算した後、射出容量、射出圧力、射出速度、可塑化能力、金型取付仕様、エジェクタ仕様を確認します。
射出成形機の型締力はどのように見ればよいですか?
一般には投影面積と金型内圧をもとに概算します。投影面積には、すべての成形品とランナーの投影面積を含めます。キャビティ内圧は、解析結果や実測を参考に、成形材料・形状・成形条件に合わせて見積もります。成形機の最大射出圧力をそのまま型内圧とはしません。
射出容量は製品重量だけで判断できますか?
製品重量と毎回固化するスプルー・ランナー重量を合計し、使用樹脂の溶融時の密度で必要な射出体積へ換算します。PS換算の射出質量で示された仕様は換算基準を確認し、同じ体積基準で比較します。各機種の仕様で、射出体積、計量ストローク、可塑化能力を確認します。可塑化能力は使用樹脂によって変わるため、次の射出量を溶融・計量する回復時間が、目標サイクルに収まるか確認します。
金型を取り付けるために、成形機のどの仕様を確認しますか?
タイバー間隔、最小型厚、最大型厚、開閉ストローク、デーライト、エジェクタストローク、取付板寸法、ロケートリングやノズル位置を確認します。必要な型締力があっても、金型の外形や型厚が成形機の対応範囲を外れると取り付けられません。
電動式と油圧式はどちらを選ぶべきですか?
製品精度、成形サイクル、クリーン性、省エネ、大型品や高圧条件、保守体制、初期費用で比較します。電動式は、位置・速度制御と消費電力を重視する場合に検討します。油圧式を含めて比較し、製品の寸法・品質基準、金型の寸法・機構、必要な成形サイクル、保守方法に合う成形機を選びます。