射出成形品の製品単価は、材料費、成形加工費、検査・二次加工費、段取り費などを製品1個当たりへ割り振って計算します。金型費は、製品単価へ割り振る場合と、製品代とは分けて見積書に記載する場合があります。材料使用量、1回の成形で得られる製品数(取り数)、成形にかかる時間、良品率から、単価を計算する方法を解説します。
この記事で分かること
- 01単価に含む費目材料費・成形費・後工程費の範囲を確認
- 02材料費の計算ランナーと材料損失を製品へ割り振る
- 03機械費の計算サイクル・取り数・機械レートを確認
- 04単価計算の前提条件検査・二次加工・金型費の扱いをそろえる
射出成形品の製品単価を構成する費用
製品単価は、射出成形品1個当たりに設定する金額です。材料費や検査費を製品単価へ含めるか、金型費を製品代とは分けて見積書に記載するかは、見積条件によって異なります。
| 費用区分 | 主な内容 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 材料費 | 製品部、樹脂の流路(スプルー・ランナー)、パージ(機内の樹脂の排出・置換)、廃棄分、着色材 | 材料単価、支給・調達の別、実際の再投入量、良品率の反映方法 |
| 成形加工費 | 成形機の稼働、作業者、立上げ、条件調整 | マシンレートの範囲、サイクル、取り数、停止時間の扱い |
| 後工程費 | 検査、ゲート処理、印刷、塗装、組立、二次加工 | 実施する後工程、検査方法、対象ロット、不合格品の選別・再加工・廃棄にかかる費用 |
| ロット単位で割り振る費用 | 段取り、材料替え、色替え、洗浄、梱包準備、最低ロット差額 | 1回当たりか、1個当たりか、生産予定数量が変わると再計算するか |
| 金型関連費 | 新規金型、修正、保全、交換部品、保管 | 製品単価へ含めるか、製品代とは分けて見積書に記載するか、所有、単価へ割り振る数量・期間、修正範囲 |
費用を積み上げた原価と、取引先へ提示する販売単価は異なります。販売単価には、見積りに含める管理費や利益、契約条件も関係します。
試作では、成形機の使用時間に応じた料金が、量産品1個当たりの製品単価とは別に示される場合があります。材料費、金型費、成形条件の調整費、測定費を含むかは見積条件によって異なります。
製品1個当たりの材料費
材料費は、製品の図面重量だけでは計算できません。まず、1回の成形(1ショット)へ投入する材料量と、立上げ時のパージや色替えなどロット単位の材料損失を把握します。次に、スプルー・ランナーや不良品から回収した材料のうち、材料仕様と品質条件を満たして実際に再投入する量を総投入量から差し引きます。
材料費の計算手順
- STEP 1ショットごとの総投入量製品部とスプルー・ランナーへ使う材料量を確認します。
- STEP 2ショットごとの良品数取り数と良品率から、良品として得られる個数を求めます。
- STEP 3実際の再投入量とロット損失再生材として実際に再投入する量と、パージや色替えの損失を集計します。
- STEP 4新規材料費を計算製品1個当たりの新規材料使用量へ材料単価を掛けます。
次の概算式は、未使用の新材と、同じ材料を工程内で回収した再投入材を使う場合を対象とします。同じ製品を同じ取り数で成形するロットを前提にします。1ショット当たりの総投入量と再投入量には、計算対象のショットの平均値を使います。良品率は、そのショット群の良品数を成形した製品の総数で割った値です。例えば98%なら0.98を代入します。取り数や製品が変わる場合は、同じ条件の部分ごとに計算します。
計算の考え方:製品1個当たりの新規材料使用量(概算)={1ショット当たりの総投入量 − 1ショット当たりに実際に再投入する再生材量}÷(取り数 × 良品率)+ 前半に含めていない立上げ・色替え・パージの新規材料消費量 ÷ ロットの良品数。ロットの良品数は、計算対象のショット群から得た良品数にそろえます。ここで差し引くのは、発生したランナーや不良品の全量ではなく、実際に再投入する量です。良品率で既に反映した不良分は、ロット単位の材料損失へ重ねて加えません。この新規材料使用量に材料単価を掛けると、良品1個当たりの新規材料費が求まります。購入再生材や着色材を別に投入する場合は、この単純化した式をそのまま使わず、材料ごとの使用量にそれぞれの単価を掛けて合計します。
| 項目 | 確認事項 | 注意点 |
|---|---|---|
| 製品部の重量 | 成形品の形を作る金型内の空間(キャビティ)ごとの製品重量と取り数 | 図面値と成形品の実測値が異なる場合がある |
| スプルー・ランナー | 流路の方式と実重量。流路を加熱するホットランナーでは、パージ等の実消費量 | 金型方式と条件で発生量が変わる |
| 再利用 | 計算対象のショットへ実際に再投入する量と、認められた配合条件 | 材料仕様、外観・強度の基準、使用材料や製造履歴を追跡する必要性で変わる |
| 良品率 | 計算対象のショット群の良品数 ÷ 同じショット群で成形した製品の総数 | 製品形状、金型の取り数と流動バランス、樹脂温度・金型温度・射出速度、不良の判定基準で変わる |
| 材料単価 | グレード、色、添加材、購入量、支給・調達条件 | 同じ樹脂名でも仕様と購買条件が異なる |
ランナーを再粉砕できても、すべてを次の成形へ戻せるとは限りません。再生材の使用可否と配合条件は、樹脂メーカーの推奨、製品の品質要求、顧客との合意に従います。廃棄する樹脂の購入費は、新規材料使用量の計算に含め、重ねて加算しません。再粉砕・混合・乾燥の作業費と廃棄物の処理費は、材料単価やマシンレートに含まれる分を確認し、含まれない分を計上します。
材料を再投入しないロットの計算例
新材を一種類使い、ランナーや不良品を材料として再投入しない場合は、ロット全体の新材消費量から材料費を求められます。計算対象は、同じ製品の生産と検査が完了したロットです。
- 材料の払い出し記録から、このロットへ渡した新材量を確認します。
- 未使用で戻した新材量を引きます。終了後に残った未使用材も戻し量に含め、前後のロットへ持ち越す材料がないことを確認します。
- 差し引いた消費量に、このロットへ適用する材料単価を掛けます。
- 得られた材料費を、このロットの検査合格数で割ります。
良品1個当たりの新材費(円/個)=(払い出した新材量 − 未使用で戻した新材量)(kg)× 材料単価(円/kg)÷ ロットの検査合格数(個)
この消費量には、廃棄したランナー、不良品、パージに使った新材も含まれます。それらの材料費は上の式に計上済みなので、同じ分を再加算すると二重計上になります。
再粉砕などの作業費や廃棄物の処理費は、新材の購入費とは別の費用です。材料単価や成形加工費へ含めた分を確認し、未計上分を加えます。
購入単価が異なる材料を使った場合は、材料ごとに消費量と単価から費用を求めて合計します。再投入材がある場合は、その在庫と実際の再投入量を含めた材料収支が必要になるため、この単純な例の適用範囲から外れます。
成形加工費の計算
成形加工費のうち、ショット中の成形機稼働費は、成形機の時間料金であるマシンレートと、良品1個当たりの稼働時間から計算します。サイクルタイムは、1ショットを繰り返すためにかかる時間です。計算には、同じ製品・取り数で成形したショット群の平均サイクルタイムと良品率を使います。マシンレートを時間単位で示す場合は、秒と時間の単位をそろえて計算します。
計算の考え方:マシンレートが1時間当たりの金額の場合、良品1個当たりのショット中の稼働時間(時間)= サイクルタイム(秒)÷ 3600 ÷(取り数 × 良品率)です。この稼働時間にマシンレートを掛けると、ショット中の成形機稼働費を概算できます。式に含めていない段取り・調整・停止の費用は、見積条件に従ってロットごとに求め、良品数で割り振ります。作業者、付帯設備、電力の費用を含め、マシンレートに織り込み済みの費用は重ねて加算しません。
| 項目 | 内容 | 確認事項 |
|---|---|---|
| マシンレート | 時間当たりの機械費を計算する基礎 | 成形機サイズ、付帯設備、作業者、電力、管理費の範囲 |
| サイクルタイム | 充填、保圧、冷却、型開閉、取出しを含む1ショットの時間 | 外観・寸法などの品質基準、停止時間、後工程の処理速度 |
| 取り数 | 1ショットで得られる製品数を増減させる | 金型費、成形機に必要な型締力、キャビティ間の充填・冷却差、点検・修理費、良品率 |
| 良品率 | 同じ稼働時間で得られる良品数を決める | 対象ショットの範囲、不良の判定基準、検査後の不合格、再加工品の数え方 |
| 段取り・停止 | 生産数量の少ないロットでは1個当たりの負担額が増えやすい | 材料替え、色替え、金型交換、洗浄、条件調整の回数 |
稼働記録から成形機の費用を計算する例
成形機の稼働記録と検査合格数がそろっていれば、平均サイクルからの概算に加え、実際の時間から良品1個当たりの稼働費を計算できます。ここで集計するのは、段取りや停止を除いたショット中の時間です。
- 計算対象のショット群について、成形機がショットを繰り返した時間を合計します。
- 稼働費を計算するマシンレートが円/時間なら、合計秒数を3600で割って時間へ換算します。
- その時間にマシンレートを掛け、同じショット群から得た検査合格数で割ります。
良品1個当たりのショット中の稼働費(円/個)= ショット中の合計時間(秒)÷ 3600 × マシンレート(円/時間)÷ 同じショット群の検査合格数(個)
検査合格数には、取り数と不良の影響が既に反映されています。この式の結果をさらに取り数や良品率で割ると、同じ条件を重ねて反映した誤った費用になります。
式に含めていない段取り・調整・停止の費用は、見積条件に従って別途求めます。作業者や電力の費用がマシンレートへ含まれている場合は、その分も計上済みです。
サイクルタイムと品質
冷却や取出しにかかる時間を短くし、1ショット全体のサイクルタイムが短縮すれば、停止時間を除く1時間当たりのショット数は増えます。しかし、反り、寸法、外観、離型の不良が増えれば良品率が下がり、再調整や選別の時間も発生します。製品単価の条件には、想定する成形サイクル、良品率、外観・寸法の基準と、その根拠となる試作結果を含めます。
取り数と金型費・保全費
取り数が増えると、同じショットで得られる製品数は増えます。一方で、金型の大型化、成形機の選択、キャビティ間の充填・冷却差、保全箇所の増加が費用へ関係します。製品単価では、成形費と、金型製作・修理・保管にかかる費用の扱いを明確にします。生産予定数量に対する総費用を求め、製品1個当たりへ割り振ります。
製品単価に含める検査・二次加工・金型費
材料費と機械費だけでは、納入できる製品1個当たりの費用は確定しません。検査、ゲート処理、印刷・組立、梱包、段取り、金型にかかる費用は、製品単価に含める場合と、製品代とは分けて見積書に記載する場合があります。最低請求額が設定されている場合は、必要数量で計算した金額に加えて差額が生じることがあります。各費用の計算単位が1個・ロット・月のどれかも、見積条件によって異なります。
ここでいう金型償却は、見積り上、金型費を生産予定数量や期間に応じて単価へ割り振る扱いを指します。会計上の減価償却とは分けて確認します。
| 項目 | 単価に影響する内容 | 注意事項 |
|---|---|---|
| 検査 | 測定項目、抜取・全数、外観基準、成績書、使用材料や製造履歴の追跡 | 成形加工費に含める範囲と、検査費の記載方法 |
| 二次加工 | ゲート処理、印刷、塗装、溶着、組立、治具、支給部品 | 工程別単価、立上げ費、治具費、不合格時の負担 |
| 梱包・物流 | 入り数、通い箱・個装、ラベル、納入頻度、納入場所 | 製品単価に含める範囲と、梱包費・運賃の記載方法 |
| 最低ロット | 1回の製造数量、年間数量、納入頻度、在庫の所有 | 最低請求額、余剰品、分納、材料在庫の扱い |
| 金型費 | 新規・既存、所有、保管、修正、交換部品、生産予定数量 | 製品代と分けて記載するか、単価へ割り振るか。割り振る場合の数量・期間と、数量変更時の再計算 |
生産予定数量と単価への割り振り
段取り費や金型費を生産予定数量で割って単価へ含める場合、実際の数量が少なければ未回収額が残ります。数量が増えた場合も、単価をいつ見直すかは契約条件によって異なります。製品単価の条件には、基準数量、見直しの条件、金型の所有、途中終了時の精算方法を含めます。
製品単価を計算する前提条件
図面と3Dデータが同じ改訂内容の製品仕様を示しているか確認します。製品単価の計算には、材料グレード、色、製品重量、ランナー方式、取り数、生産数量と納入頻度、品質基準、検査、二次加工、梱包、金型の所有・状態をそろえます。途中で条件を変えた場合は、変更前の金額を使わず、変更後の条件で再計算します。
まとめ
射出成形品の製品単価は、材料費、成形加工費、検査・二次加工費、段取り費、金型費などに分けて計算します。新規材料費は新規材料使用量と材料単価から、ショット中の成形機稼働費はマシンレート、サイクルタイム、取り数、良品率から求めます。購入再生材や着色材を使う場合は材料ごとに費用を計算します。段取りや停止などの費用は、既に計上した分と重複させないように加えます。
製品単価は、同じ改訂番号の図面、材料、数量、品質基準、納入条件を前提にします。各費用が1個単位・ロット単位・期間単位のどれで計算されるか、製品単価に含まれるか、製品代とは分けて見積書に記載されるかを確認し、生産予定数量に対する総額を求めます。
プラスチック成形・金型の相談を受け付けています
株式会社アイカタマッチングでは、プラスチック成形や射出成形金型に関する個別案件の相談を受け付けています。製品条件や金型仕様に未確定の点がある場合も、分かる範囲からご相談ください。
よくある質問
射出成形品の製品単価には材料費まで含まれますか?
見積書によって異なります。材料費を含む製品単価として示す場合と、成形加工費だけを示す場合があるため、材料、成形、検査・二次加工、梱包、金型関連費のどこまでを含むか確認します。
ランナーや不良分は材料費へどう反映しますか?
新材と同じ材料の工程内再投入材を使う場合、同じショット群の平均総投入量から平均再投入量を差し引き、取り数と良品率から求めた良品数で割ると、良品1個当たりの新規材料使用量を概算できます。この計算に含めていないパージや色替えの新規材料消費量は、ロットの良品数で割って加えます。同じ不良分を重ねて加えません。購入再生材や着色材を別に投入する場合は、材料ごとの使用量と単価から費用を求めます。
サイクルタイムが短くなれば加工単価は必ず下がりますか?
必ず下がるとは限りません。同じ良品数を作る場合、取り数と良品率が変わらなければ、成形サイクルの短縮によって成形機の稼働時間は減ります。ただし、不良や設備停止が増えると短縮による効果が相殺され、良品1個当たりの費用が高くなる場合もあります。
取り数が多い金型なら必ず安くなりますか?
取り数が増えると1ショット当たりの製品数は増えますが、金型費、成形機サイズ、キャビティ間の充填・冷却差、点検・修理の作業時間と費用も変わります。良品率と金型関連費を含む総額から、製品単価への影響を判断します。
金型費は製品単価に含まれますか?
金型費は、製品代とは分けて見積書に記載する場合、生産予定数量へ割り振る場合、一定期間の製品単価へ含める場合があります。途中で数量が変わる場合の未回収額や金型修正費の扱いも見積条件へ記載します。
製品単価を計算する前に何をそろえればよいですか?
同じ改訂内容の図面と3Dデータ、材料グレード、色、生産予定数量、納入頻度、品質基準、検査、二次加工、梱包、金型の所有・状態、材料の支給または調達条件をそろえます。