射出成形品の量産立ち上げ|製品設計・試作から初回生産まで

更新日 2026年10月1日
プラスチック成形
射出成形品の量産立ち上げ 製品設計・試作から初回生産まで

量産立ち上げは、製品設計、必要に応じた試作、量産金型の製作、金型トライ、成形品の評価、量産条件の承認を経て、初回生産へ進む一連の作業です。試作や設計変更の回数、金型の製作期間、トライ後の修正回数によって、初回生産までの日程は変わります。

この記事で分かること

  1. 01量産立ち上げの流れ製品設計から初回生産までに行う作業を確認する
  2. 02試作と金型トライ目的と実施する時期の違いを理解する
  3. 03量産開始までの日程設計完了日・金型完成日・量産承認日を確認する
  4. 04外部へ依頼するときの見積り金型製作から初回納入までの対象範囲を確認する

射出成形品の量産立ち上げの流れ

射出成形品の量産立ち上げの代表的な流れでは、製品設計、必要に応じた試作・評価、量産金型の設計・製作、金型トライ、量産承認、初回生産の順に進みます。各段階の主な作業と確認事項は、次のとおりです。

製品の用途、形状、要求品質、同等品の設計・評価実績によって、試作方法や作業の順序は変わります。試作を省く場合や、製品設計と金型設計の一部を並行する場合もあるため、初回生産までに必要な日数は案件ごとに異なります。

段階実施事項確認事項
製品設計製品の用途と機能を確認し、製品図面と3Dデータを作成して、成形材料、寸法、外観などの要求事項をまとめる試作で確かめる内容と評価方法が決まっている
試作・評価形状、組付け、機能などを試作品で確かめ、必要な設計変更を行う量産金型へ反映する製品形状と要求事項が決まっている
量産金型の設計・製作生産数、成形材料、製品形状、使用する成形機を基に、取り数、ゲート、パーティングラインを決めて金型を設計する金型が完成し、成形材料と成形機を用意できている
金型トライ完成した金型で成形し、成形条件と成形品の寸法・外観・機能を確認する修正する対象と、再トライで確かめる内容が決まっている
量産承認量産で使用する成形条件、検査方法、提出資料を確定する量産を始める条件を満たし、必要な承認が完了している
初回生産・納入承認した条件で成形し、必要な二次加工、検査、梱包を行う初回生産品の数量、検査方法、納入日が決まっている

製品設計と試作・評価

製品設計では、使用環境や必要な強度・耐久性などの要求仕様を整理し、製品の形状、成形材料、寸法、外観、組付け方法を決めます。必要に応じてCAE(コンピューターによる解析)を用い、流動解析で金型内の樹脂の流れを、構造解析で製品の変形や強度を検討します。

製品設計がまとまったら、その設計で安定して量産できるかを検討します。プラスチック製品を射出成形するには、金型から無理なく取り出せる形状か、樹脂を充填できる形状かを確認します。バリが生じやすい箇所、ゲート痕やパーティングラインの位置、許容できる外観の範囲については、製品設計者と金型設計者で合意します。金型の設計や成形品の品質に懸念があれば、製品形状や図面を修正します。

類似品の生産実績がなく、設計データだけでは製品の品質を判断しにくい場合は、試作品を作って現物の形状・機能・品質を確認します。試作には、3Dプリンターや切削加工で作ったモデル、試作用の金型で成形した部品などがあり、確認したい内容に合う方法を選びます。金型を使った試作では、製品形状を成形できるかも評価します。

試作品が要求仕様を満たさない場合は、製品形状や成形材料を見直して再度評価します。試作の目的に合わせて方法と数量を決め、量産時に検査する箇所、測定方法、合否基準も整理します。

製品の試作では、量産金型を作る前に設計内容を確かめます。金型トライでは、完成した金型と成形条件で要求を満たす成形品を作れるか確かめます。

試作を行うか、どの方法を使うかは案件ごとに異なります。試作を省略する場合は、過去に作った同等品の評価結果など、製品形状、組付け、機能を確認できる根拠があるかを確かめます。

量産金型の設計・製作

製品設計が完了し、試作を行った場合はその結果も確認します。量産可能と判断し、採算の見通しが立った後、量産用金型の設計・製作へ進みます。

量産金型は、生産予定数、成形材料、製品形状、要求される寸法と外観、使用する成形機を基に設計します。製品設計と試作・評価の結果を反映し、取り数、ゲート、パーティングライン、冷却、成形品の取り出し方法などを決めます。

製品設計と金型設計を一部並行して進めることはあります。ただし、金型加工を始めた後に製品形状を変更すると、金型部品の再加工や作り直しが必要になる場合があります。金型加工の開始後に製品形状を変更する場合は、金型部品の再加工や作り直しが必要か確認し、必要であれば金型の完成予定日を見直します。

金型の製作では、金型材料と標準部品を手配し、金型部品の加工、組立、仕上げを行います。金型が組み上がった日は金型トライを始められる目安ですが、量産開始日ではありません。金型トライに向けて使用する成形機を決め、成形材料、測定設備、検査装置、取出機や搬送装置などを準備します。

金型トライから量産承認まで

金型トライでは、完成した金型を成形機へ取り付け、予定する成形材料を使って成形します。得られた成形品の寸法、外観、組付け、機能を確認し、成形条件も記録します。成形品が要求を満たさない場合は、金型、成形条件、製品設計、測定方法のどこを見直すかを決めます。

試作時と量産時で製品形状、成形材料、金型構造、成形条件が異なる場合は、その変更が成形品に与える影響を重点的に確認します。多数個取りの金型では、キャビティごとの充填状態や寸法・外観のばらつきも評価します。

トライ用と量産用の成形機が異なる場合は、量産用の成形機でも成形品の寸法・外観・機能を評価します。トライ用の成形機で良好な結果が得られていても、量産用の成形機では成形条件の調整や金型修正が必要になる場合があります。

  1. STEP 1成形品を評価する寸法、外観、組付け、機能を、製品ごとに定めた方法で確認します。
  2. STEP 2修正する対象を決める金型を修正するのか、成形条件または製品設計を見直すのかを決めます。
  3. STEP 3再トライを行う変更した内容に応じて成形品を作り、必要な寸法・外観・機能を再評価します。
  4. STEP 4量産条件を承認する量産で使う成形条件、検査方法、提出資料を確定します。

初回トライで量産承認まで進むとは限りません。日程には、金型修正、再トライ、成形品の再評価にかかる日数も見込みます。量産開始の条件は、成形品が製品ごとの品質基準を満たし、量産で使う成形条件と検査方法が決まった状態です。

自動車部品など、指定された承認手順や提出資料がある案件では、その準備と評価期間も必要です。承認手順と提出資料は、業界や納入先の要求に合わせます。

変更内容と再評価の記録

設計変更や金型修正の後は、どの図面と金型で作った成形品を、どの方法で評価したか分かる記録を残します。記録する項目の例は、次のとおりです。

  • 製品図面の番号と版、変更した寸法・形状、金型番号と修正した箇所
  • 使用した成形機、成形材料のグレード、温度・圧力・時間などの成形条件
  • トライ日、評価した試料の番号、多数個取りの場合はキャビティ番号
  • 寸法・外観・機能の評価方法、合否基準、評価結果、量産を承認した内容

例えば寸法を変更した場合は、その変更を反映した図面の寸法と公差で成形品を評価し、測定値と判定結果を記録します。再トライでは金型の修正内容と成形条件の変更も記録し、変更前後の結果を確認します。納入先から記録の書式や提出資料を指定されている場合は、その要求に従います。

量産開始までの日程

量産立ち上げの日程を確認するときは、製品設計の完了日、試作品の評価完了日、量産金型の完成日、金型トライ品の提出日、量産承認日、初回生産品の納入日を確認します。

管理日確認事項
製品設計完了日製品図面と3Dデータが完成し、成形材料と要求品質が決まっている
試作評価完了日試作品で確認した結果が製品設計へ反映されている
量産金型完成日金型の加工、組立、仕上げが終わっている
トライ品提出日完成した金型で成形したトライ品が提出されている
量産承認日量産で使う成形条件と検査方法が決まっている
初回生産品納入日承認した条件で作った初回生産品の納入が完了している

初回生産までの日程には、設計や金型製作にかかる時間だけでなく、試作品の評価期間、金型材料や部品の入荷待ち、成形機と測定設備を使用できるまでの待ち時間、量産承認に必要な期間も含めます。製品設計の変更が続けば量産金型の設計開始日が変わり、金型部品の入荷が遅れれば金型完成日が変わります。トライ品の評価が予定より長くかかれば、金型修正日と量産承認日を見直します。

外部へ量産を依頼するときの見積り

射出成形品の量産を外部の成形メーカーへ依頼する場合、見積りの対象は依頼内容によって異なります。量産金型の製作だけを対象とするのか、金型トライ、成形品の評価、金型修正、初回生産・納入までを含むのかを確認します。

複数の成形メーカーへ相見積りを依頼する場合は、各社に同じ製品図面と3Dデータを渡します。成形材料、生産予定数、試作で確認する内容、量産金型の仕様、トライ品の評価方法、二次加工、検査、梱包の条件も各社でそろえます。量産金型の完成までの見積りと、量産承認後の初回納入までを含む見積りでは、含まれる作業の範囲が異なるため、総日数だけでは比較できません。

見積項目実施事項
製品の試作試作品の製作、組付け・機能・外観の評価、設計変更
試作金型試作用金型の設計・製作、成形、試作品の評価
量産金型金型設計、金型材料・部品の手配、加工、組立、仕上げ
金型トライ・承認トライ成形、測定、金型修正、再トライ、量産条件の決定
初回生産成形、二次加工、検査、梱包、納入

製品設計が未確定の段階では、設計変更によって試作回数や金型の製作日程が変わる可能性があります。その場合は、見積りの前提にした製品データ、試作で確かめる内容、製品形状を確定する予定日を明記します。

まとめ

製品の形状や成形材料を決め、必要に応じて試作・評価を行った後、量産金型を設計・製作します。完成した金型でトライと成形品の評価を行い、量産条件を承認してから初回生産に進みます。

日程を確認するときは、製品設計の完了日、試作評価の完了日、量産金型の完成日、トライ品の提出日、量産承認日、初回生産品の納入日を確認します。設計変更に備える期間、金型材料・部品の入荷待ち、成形機と測定設備を使用できるまでの待ち時間、成形品の評価と承認に必要な期間も日程に含めます。

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よくある質問

量産金型を設計する前に、何を決めますか?

製品の用途、機能、形状、成形材料、寸法、外観、組付け方法などを決めます。必要に応じて試作品で形状、組付け、機能を確認し、その結果を量産金型の設計に反映します。

量産金型を作る前の試作は必須ですか?

すべての案件で同じ試作が必要とは限りません。新しい形状や機能を確かめる必要がある場合は、3Dプリンター、切削加工、試作用の金型などから目的に合う方法を選びます。試作を省略する場合は、過去の同等品の評価結果など、製品形状、組付け、機能を確認できる根拠があるかを確かめます。

製品の試作と金型トライは同じですか?

目的と実施する時期が異なります。製品の試作では、量産金型を作る前に形状、組付け、機能などを確認します。金型トライでは、完成した金型を使い、成形条件と成形品の寸法・外観・機能を確認します。

金型が完成すれば、すぐ量産できますか?

量産金型の完成後に金型トライを行い、成形品を評価します。成形品の寸法、外観、機能が製品ごとの品質基準を満たさなければ、金型修正、成形条件の見直し、再トライを行います。量産で使用する成形条件と検査方法を承認してから初回生産へ進みます。

試作金型と量産金型は何が違いますか?

試作金型は、製品形状、組付け、機能を確認するための試作品を作る目的で使います。量産金型は、予定する数量の成形品を、定めた品質基準に沿って継続生産するために設計します。金型材料と構造は、予定する成形数、成形材料、成形品の品質基準を基に決めます。取り数は、生産計画と使用する成形機の仕様を基に決めます。

量産立ち上げの日程を決めるには、何を確認しますか?

製品図面と3Dデータが揃っているか確認します。成形材料、生産予定数、試作で確認する内容、要求する寸法・外観・機能、二次加工、検査、梱包の条件を決めます。あわせて、試作評価、量産金型完成、トライ品提出、量産承認、初回生産品納入のうち、どの完了日を目標とするかを決めます。