鍛造は、材料に圧力や打撃を加えて形を作る加工方法です。 鍛造品の設計では、完成部品の寸法に加え、型から取り出す方向、ばりを取り除く位置、加工に残す材料を検討します。 この記事では型鍛造を中心に、完成図と鍛造図を使って依頼先へ伝える条件を整理します。
この記事で分かること
- 01取出しの設計分割面・抜き勾配
- 02形状の検討ばり・丸み・肉厚
- 03後加工の準備加工代・加工基準
- 04図面と試作要求の共有・評価条件
完成図と鍛造図で加工する範囲を分ける
完成図には、使用する部品の形状、寸法、公差と必要な特性を示します。
鍛造図では、鍛造で作る形状と、後加工のために残す材料を依頼先と確認します。
完成図だけを渡して、すべての面を鍛造で仕上げるのか、どこを加工するのか曖昧にしないようにしましょう。
型鍛造では、金型の形状に合わせて材料を成形します。
自由鍛造など、同じ型構造を使わない方法もあるため、工法を確認してから形状の条件を相談してください。
熱間・温間・冷間という温度の区分と、自由鍛造・型鍛造という加工方法の区分は分けて伝えます。
図面へ添える情報
材料と使用条件、生産予定数量に加え、鍛造肌のまま使う面と加工する面を示します。
熱処理、表面の処理、機械加工、検査まで、どの工程を依頼するかも伝えましょう。
鍛造直後の形状と、熱処理や加工後の完成形状を同じ状態として扱わず、寸法を評価する時点を確認します。
分割面と抜き勾配は取出し方法に合わせる
分割面は、金型を分ける境界です。
抜き勾配は、製品を型から取り出しやすくするため、取出し方向に沿って側面へ付ける傾斜です。
分割面を検討するときは、製品を取り出す方向、型の構造、型ずれの影響、ばりを除去する位置と後加工を合わせて相談します。
投影面積が大きい面を選ぶという目安だけで、あらゆる部品の分割面を決めないようにしてください。
勾配を相談するときの確認点
必要な抜き勾配は、形状の深さ、内側か外側か、材料と温度、使用設備、取出し機構などに合わせて検討します。
すべての鍛造品に共通する角度を先に指定するのではなく、依頼先から提案を受けましょう。
勾配を付ける面が相手部品と接する場合は、傾斜を許容できるか、加工で完成形状にするかを示します。
深い凹部や高い突出部では、取出し方向と必要な形状を図面上で確認してください。
勾配を小さくしたい理由が組付けや機能にある場合は、その要求も伝えて検討します。

ばりの役割と、ばり抜き後の要求を区別する
ばりを出す型鍛造では、型の隙間へ余分な材料を逃がします。
ばり部での流れの抵抗は、型の内部へ材料を充填する条件にも関係します。
ばり厚さが小さい場合は鍛造荷重が高くなる側、大きい場合は充填が不足する側の検討が必要です。
厚さだけを変えれば不良が解消すると考えず、材料の量、温度、製品形状、設備と合わせて依頼先へ確認してください。
ばりを出さない工法もあるため、すべての鍛造品でばりの発生を前提にする必要はありません。
ばり抜き後に確認すること
ばりを除去した後の輪郭、ばりの残り、切断面の状態と、必要な二次処理を相談します。
手で触れる箇所や相手部品と接する箇所は、図面上で位置と要求を示してください。
型の分割位置を変える場合は、ばり抜きと後加工への影響も確認します。
金型、成形、後加工まで含む製作範囲を揃えて、各提案の費用を比較しましょう。
丸み・肉厚・メタルフローを使用条件と合わせて検討する
隅の丸みや断面の変化は、材料の流れ、型への充填、型に加わる負荷を考えて検討します。
角が鋭い箇所、急に厚さが変わる箇所、薄いリブなどは、形状を変更できる範囲を示して相談してください。
丸みを付けると相手部品と干渉する場合は、必要な接触位置と逃がせる範囲を伝えます。
すべての材料と工法に共通する最小半径や肉厚を、ここで一律の数値として決めることはできません。
メタルフローと性能評価を分ける
メタルフローは、鍛造による材料の流れに沿って生じる内部組織の筋を指します。
部品に荷重が加わる方向と、加工で取り除く部分を踏まえて、材料の流れを依頼先と検討します。
完成部品の性能は、メタルフローだけで決まるものではありません。
材料、熱処理、加工後の形状、使用条件に応じた評価を相談してください。
鍛造で形が作れることと、要求する強度や寿命を満たすことを分けて確認します。
加工代と加工基準を完成寸法へつなげる
加工代は、機械加工で完成寸法を作るために、鍛造形状へ残す材料です。
鍛造の寸法ばらつき、型ずれ、打痕、加工基準のばらつきと、表面を除去する範囲を合わせて検討します。
加工代が足りなければ、加工する面に鍛造肌が残ったり、必要な完成寸法を作れなかったりするおそれがあります。
多く残す場合も、切削量、加工時間、材料使用量を含めて確認してください。
熱処理を行う場合は、加工の前後関係と、熱処理後に評価する寸法を相談します。
鍛造肌とスケールを区別する
鍛造肌のまま使う面と、表面を削って仕上げる面を図面で分けます。
加熱時に生じる酸化物であるスケールの除去と、完成寸法を作るための機械加工は区別して相談してください。
「黒皮を除去する」という指示だけでは、どの面をどこまで仕上げるかが曖昧になるため、対象面と完成時の要求を示します。
加工基準とつかみ方を確認する
部品を加工設備に取り付けるときの基準面、つかむ箇所、姿勢を相談します。
完成図の寸法基準と、実際の加工・測定で使う基準をどうつなげるか確認してください。
鍛造段階の面を基準に使う場合は、その面のばらつきや変形の影響も含めて検討します。
部位ごとに図面へ添える条件
次の表は、設計と後加工の相談に使う確認項目です。
| 検討箇所 | 確認する条件 | 図面へ添える情報 |
|---|---|---|
| 型から取り出す側面 | 勾配、取出し方向、相手部品との干渉 | 傾斜を許容できる面と加工する面 |
| 型の分割付近 | 型ずれ、ばり抜き、ばり残り | 接触位置、輪郭と仕上げの要求 |
| 加工する穴と面 | 加工代、基準面、つかむ箇所 | 完成寸法、公差と加工する範囲 |
| 熱処理後の重要部位 | 加工との工程順、寸法を評価する状態 | 処理の要求と測定時点 |
穴付きの部品で整理する例
ここでは、外周は鍛造肌のまま使い、穴と相手部品に当たる面を加工する部品を想定します。
これは図面情報の整理を示す例で、実製品の加工条件や費用実績ではありません。
外周については、抜き勾配とばり残りが組付けへ影響する位置を示します。
穴と当たり面については、完成寸法、公差、加工の基準と加工代を依頼先と確認します。
熱処理を行うなら、穴と当たり面を仕上げる時点と、寸法を測定する状態も揃えましょう。
図面の承認から試作評価まで条件を共有する
鍛造、金型、熱処理、機械加工、検査を別の担当が行う場合も、同じ図面と要求条件を共有します。
設計変更は図面の版を管理し、変更した面、寸法、材料と工程を明確に伝えてください。
図面の検討で確認する範囲
| 共有する資料 | 依頼先と確認する内容 |
|---|---|
| 完成図と鍛造図 | 加工範囲、勾配、分割面、加工代の対応 |
| 材料と使用条件 | 材料の仕様、熱処理、必要な性能評価 |
| 工程と担当範囲 | ばり抜き、表面処理、後加工、検査の分担 |
| 試作と評価条件 | 測定する状態、重要寸法、外観と機能の合否条件 |
試作では、形状が作れたことに加え、要求寸法、外観、必要な機能をどの状態で確認するか決めます。
解析を行う場合も、解析の条件と実機で確認する項目を依頼先へ尋ねてください。
解析結果だけを、完成部品の寸法や性能を確認した結果として扱わないようにしましょう。
量産で設備や工程を変える予定がある場合は、試作の評価を使える範囲と、再評価が必要な項目を確認します。
まとめ
まずは完成図に、鍛造肌で使う面、加工する面、相手部品と接する箇所、重要寸法を示してください。
その情報を基に、分割面と抜き勾配、ばり抜き後の要求、加工代と基準面を依頼先と相談します。
熱処理と加工・検査の工程、試作を評価する状態も揃え、鍛造図と完成図の対応を確認しましょう。
角度や加工代を一律に決める前に、変更できる形状と必ず満たす機能を伝えることが大切です。
費用・見積りの相談ができます
図面や仕様、希望条件をもとに、候補企業探しや見積り相談を進められます。
よくある質問
抜き勾配は何度にすればよいですか?
必要な角度は、形状の深さ、内外形、材料と温度、設備、取出し機構に合わせて相談します。
相手部品との接触など、勾配を付けにくい理由を図面へ添え、加工を含む提案を受けてください。
ばりをなくせば費用は下がりますか?
ばりを出さない工法もありますが、金型と成形、後加工を含む範囲で費用を確認します。
ばり抜きだけの費用を比べず、必要な形状と数量を伝えて提案を比較してください。
すべての面に加工代を付けますか?
鍛造肌で使う面と加工する面を区別します。
加工する面では、寸法ばらつき、型ずれ、基準と表面の除去範囲を踏まえて加工代を相談してください。
試作ではどの状態で寸法を測りますか?
鍛造後、熱処理後、加工後など、どの工程の状態を評価するか決めます。
完成寸法の確認と工程ごとの確認を分け、測定する箇所、基準と合否条件を共有してください。