射出成形品の検査では、製品図面や外観の基準に基づいて、寸法と外観を確認します。寸法検査では、指定された箇所を測定し、寸法公差の範囲内に収まっているか確認します。外観検査では、傷、汚れ、変色、バリなどの有無を確認し、外観の基準に沿って合否を判定します。
この記事で分かること
- 01寸法検査の対象図面の指示から測定箇所と公差を確認する
- 02寸法測定の条件測定時期・保管状態・基準面・測定器
- 03外観検査の基準不良の種類・位置・大きさと観察条件
- 04検査結果の記録ロット・キャビティ・検査条件・判定結果を記録する
寸法検査で確認する項目
寸法検査では、製品図面に指示された寸法と幾何公差を測定します。測定箇所は、部品の組み付けや位置決めに影響する寸法、製品の外形寸法などから選びます。
検査仕様書には、図面の管理番号と改訂番号、測定箇所、基準面、測定方法、使用する測定器、許容範囲を記載します。測定に使用する基準面と製品の置き方は、図面の指示に合わせます。
| 確認する箇所 | 寸法検査の例 | 検査条件に含める内容 |
|---|---|---|
| 部品の取付部 | 穴径、軸径、溝幅、穴位置 | 基準面、測定位置、測定方向、公差 |
| 製品の外形 | 全長、全幅、高さ、反り | 製品の置き方、支持位置、測定時期 |
| 位置決め部 | 穴ピッチ、中心間距離、段差 | 基準面、基準穴、測定順序、測定器 |
| 肉厚 | 指定箇所の肉厚 | 測定位置、測定方法、測定点数 |
寸法検査と外観検査の条件を決める手順
- STEP 1基準を確認図面、製品仕様書、外観仕様書の改訂番号を確認する
- STEP 2検査項目を決める測定箇所と、確認する外観不良を決める
- STEP 3条件を決める測定方法、観察方法、合否基準を決める
- STEP 4結果を記録ロット、キャビティ、測定値、外観判定を記録する
寸法測定の条件
射出成形品の寸法は、成形後の収縮によって変化します。吸湿性のある材料では、吸湿による寸法変化も確認します。測定結果を比較する場合は、成形から測定までの時間、保管・調湿状態、測定時の温度と湿度、基準面、製品の置き方をそろえます。
寸法検査の記録項目
寸法検査の記録には、図面の改訂番号、材料名とグレード、成形日時、測定日時、保管・調湿条件、測定環境、測定器、基準面、製品の置き方、測定箇所を記載します。温度、湿度、調湿時間は、材料の特性、製品仕様、適用規格に合わせて定めます。
| 確認する条件 | 記録する内容 | 結果が異なる場合の確認 |
|---|---|---|
| 図面の改訂番号 | 測定箇所と公差 | 同じ図面を使用したか |
| 成形後の経過時間 | 成形日時と測定日時 | 同じ時期に測定したか |
| 保管・調湿状態 | 保管環境と調湿時間 | 吸湿や温度履歴に違いがないか |
| 基準面・置き方 | 支持位置と測定姿勢 | 同じ基準面と置き方で測定したか |
| 測定器 | 測定器名、管理番号、分解能、校正状況 | 同じ測定方法を使用したか |
ノギス、マイクロメータ、ハイトゲージ、画像測定機、三次元測定機などから、測定箇所の形状、公差、測定範囲に合う測定器を選びます。測定器の分解能、精度、校正状況を確認し、製品の公差に合う測定方法を検査仕様書に記載します。
測定値が許容範囲から外れた場合は、同じ測定条件で再測定します。再測定でも同じ結果となった場合は、材料ロット、金型の状態、成形条件、測定条件の変更履歴を確認します。
薄い樹脂成形品を測定するときの確認例
例えば、薄い壁のある成形品をノギスで挟むと、測定力で壁が変形する場合があります。接触する位置、製品の支持位置と姿勢、測定力を確認します。
変形の影響がある場合は、一定の低い測定力で測る器具や、画像測定などの非接触測定を検討します。測定器の選定では、測る形状、公差、測定範囲、製品の支持方法を照合します。
測定方法を変更するときは、同じ試料をそれぞれの方法で測り、測定位置と条件、実際の値を記録します。結果に差がある場合は、接触・支持による変形と測定条件を確認し、検査に使う方法を検査仕様書へ反映します。
外観検査の方法
外観検査では、傷、バリ、ヒケ、ウェルドライン、フローマーク、シルバーストリーク、黒点、色むらなどを確認します。外観不良ごとに、許容する位置、大きさ、長さ、個数、色の差を合否基準に定めます。
外観不良ごとに基準を決める
| 外観不良 | 確認する内容 | 基準に含める項目 |
|---|---|---|
| 傷・異物・黒点 | 発生位置、大きさ、個数 | 許容する位置、最大寸法、個数 |
| バリ・ショートショット | 発生位置、長さ、高さ、欠損範囲 | 許容する位置と寸法 |
| ヒケ・ウェルドライン・フローマーク | 発生位置、長さ、幅、明暗差 | 確認箇所、許容範囲、限度見本 |
| 色むら・シルバーストリーク | 発生位置、範囲、基準色との差 | 照明、背景、限度見本、測色条件 |
観察条件をそろえる
外観の見え方は、照明、背景色、観察距離、観察角度によって変わります。外観仕様書には、照明の種類と明るさ、背景色、製品の向き、観察距離、観察角度を記載します。
限度見本を使う場合は、見本の識別番号、承認日、有効期限、保管方法を定めます。見本に傷や変色が生じたときは、承認された見本と交換します。
外観不良が見つかった場合は、発生位置、キャビティ、ロット、外観不良の種類と大きさ、写真番号を判定票に記録します。
外観の判定が異なったときの照合手順
同じ成形品の傷やヒケについて判定が異なった場合は、外観仕様書の版と限度見本の識別番号を確認します。対象の面と不良の位置を特定し、照明、背景、製品の向き、観察距離と角度をそろえて再確認します。
判定票には、試料の識別、不良の種類・位置・大きさ、写真番号、照合した基準と観察条件を記録します。許容範囲への解釈に差がある場合は、判定を保留して、検査仕様で定めた判定担当者へ確認します。
決定した合否と理由、判定者、判定日時を記録し、基準を改訂した場合は新しい版を検査担当者へ共有します。
検査結果の記録
検査記録には、対象製品、図面と検査仕様書の改訂番号、ロット、キャビティ、検査日時、検査条件、測定値、外観判定、判定者を記載します。限度見本を使用した場合は、その識別番号も記録します。
| 記録区分 | 記録する内容 | 確認する目的 |
|---|---|---|
| 対象製品 | 品番、材料、色、ロット、キャビティ | 検査した製品を特定する |
| 使用した基準 | 図面と検査仕様書の改訂番号、限度見本の識別番号 | 合否判定に用いた基準を特定する |
| 寸法検査 | 測定箇所、測定器、測定条件、測定値 | 測定方法と結果を確認する |
| 外観検査 | 観察条件、不良の種類、位置、大きさ、写真番号 | 外観判定の根拠を確認する |
| 判定 | 合格、保留、不合格、判定者、判定日時 | 判定者と判定日時を明確にする |
前のロットと結果が異なる場合は、材料と色、キャビティ、成形条件、金型修正、測定器、測定条件、外観の観察条件、限度見本の変更履歴を確認します。不適合品には識別表示を付け、検査記録と関連付けて管理します。
検査する個数と不適合品の扱い
寸法・外観の検査項目ごとに、全数検査か抜取検査か、検査する個数と頻度を検査仕様書に記載します。検査段階、製品の重要特性、適用する規格や合意した基準に応じて定めます。
多数個取りでは、検査した試料とキャビティを対応させて記録します。不適合品の再検査では、最初の測定値と判定、再検査の方法と結果、その後の処置を関連付けて残します。
まとめ
射出成形品の寸法検査では、図面に基づいて測定箇所、基準面、測定方法、許容範囲を定めます。成形後の経過時間、保管・調湿状態、測定環境、製品の置き方もそろえます。
外観検査では、不良の種類、位置、大きさ、個数などの合否基準と、照明、背景、観察距離、観察角度を定めます。検査結果には、使用した図面と検査仕様書、ロット、キャビティ、測定値、外観判定を記録します。
プラスチック成形・金型の相談を受け付けています
プラスチック成形や射出成形金型に関する個別案件の相談を受け付けています。製品条件や金型仕様に未確定の点がある場合も、分かる範囲からご相談ください。
よくある質問
寸法検査では、どの寸法を測定しますか?
製品図面に指示された寸法と幾何公差から、部品の取り付けや位置決めに影響する箇所、製品の外形などを測定します。検査仕様書には、測定箇所、基準面、測定方法、使用する測定器、許容範囲を記載します。
寸法検査では、なぜ測定時期や保管条件をそろえる必要がありますか?
成形後の収縮と、吸湿性のある材料の吸湿による寸法変化を、同じ測定条件で比較するためです。成形後から測定までの時間、保管・調湿方法、測定時の温度と湿度、基準面、製品の姿勢を記録し、各ロットで同じ測定方法を使います。
外観検査の合否基準には、何を定めますか?
確認する外観不良の種類、許容する位置、大きさ、長さ、個数、色の差などを定めます。照明、背景色、観察距離、観察角度も外観仕様書に記載します。
限度見本は、どのように管理しますか?
識別番号、承認日、有効期限、保管方法を定めます。見本に傷や変色が生じたときは、承認された見本と交換します。
検査結果が前のロットと異なる場合、何を確認しますか?
材料と色、キャビティ、成形条件、金型修正、測定器、測定条件、外観の観察条件、限度見本の変更履歴を確認します。確認内容は検査記録へ残します。