試作金型は製品の形状・組付け・機能を評価するために、量産金型は必要な品質で継続生産するために使います。用途に合う材料と寿命、量産金型へ移行したときの評価項目を解説します。
この記事で分かること
- 01目的の違い試作品による評価と継続生産
- 02金型材料と寿命使用樹脂や摩耗・腐食との関係
- 03量産前の評価金型が変わったときの再確認
- 04金型の選び方設計変更と必要数量からの検討
射出成形の試作金型と量産金型|目的・材料・構造の違い
試作金型では、実際に成形した部品を使って組み立てたり、使用時の機能を試験したりし、その結果を製品の設計変更に役立てます。量産金型では、繰り返し成形しても必要な寸法や外観を保てるように、金型の耐久性、冷却、部品交換のしやすさを設計します。
| 比較項目 | 試作金型 | 量産金型 |
|---|---|---|
| 目的 | 製品形状・組付け・機能を評価する | 必要な品質の成形品を継続生産する |
| 構造 | 評価に必要な形状を作り、共用の土台を利用する場合もある | 連続成形での冷却と、摩耗する部品の交換を考慮する |
| 設計変更 | 試作品の評価に応じて形状を修正する | 生産開始後に形状を修正した場合も、成形品を再評価する |
用途に合わせてアルミニウム合金と鋼材を選ぶ
試作金型にはアルミニウム合金だけでなく、鋼材を使う場合もあります。アルミニウム合金の金型を継続生産に使う例もあります。試作か量産かは、成形品を評価する目的と継続生産の条件から考えます。
アルミニウム合金は加工しやすく、金型の製作期間を短くできる場合があります。材料は、必要な成形品の精度と数量、使用樹脂、修正する形状に合わせて選びます。
簡易金型は、共用のモールドベース(金型を支える土台)を利用するなど、製作費や製作期間を抑えるために構造や製作方法を工夫した金型です。試作に使うほか、必要な品質と数量に対応できれば少量生産に使う場合もあります。
金型寿命は使用樹脂と摩耗・腐食の条件で変わる
ガラス繊維などの充填材を含む樹脂は、成形時に金型を摩耗させることがあります。そのため、使用樹脂と充填材、生産数量に応じて金型材料の耐摩耗性を検討します。
腐食性の物質が生じる樹脂を使う場合や、冷却水路に腐食が生じる場合には、耐食性も重要です。摩耗と腐食では損傷の原因が異なります。使用条件に合わせて金型材料の耐摩耗性と耐食性を検討します。
金型を何回使えるかは、これらの使用条件に加え、清掃・補修や要求される製品精度によって変わります。必要数量を作り続けるための保全や交換部品も含め、使用条件に応じた金型寿命を検討します。
試作金型での評価と量産金型で再確認する項目
試作品の強度や機能を評価する際は、量産で使用する予定の樹脂グレードで成形することが基本です。別の樹脂で試した場合は、その結果が量産材料での性能を示すとは限らないため、使用したグレードを記録します。
試作金型と量産金型でゲート(樹脂の入口)や冷却水路が変わると、樹脂の流れ方や冷え方も変わります。冷却が不均一になると変形が生じることがあるため、試作で寸法が合っていても量産金型で成形した部品を測定します。
| 評価対象 | 試作金型での評価 | 量産金型での確認 |
|---|---|---|
| 寸法・組付け | 試作品の寸法を測定し、相手部品と組み付ける | 量産金型の成形品が寸法と組付けの基準を満たすか調べる |
| 外観 | ゲートの痕やウェルドラインなどの位置と見え方を調べる | ゲートや成形条件の変更による外観の違いを調べる |
| 強度・機能 | 想定する使用条件で、必要な強度や働きを確かめる | 量産金型の成形品でも必要な性能を満たすか評価する |
ウェルドラインは、金型内で樹脂の流れが合流した部分にできる線です。外観だけでなく強度にも影響することがあるため、荷重がかかる位置に生じる場合は、製品に必要な強度を満たすか評価します。
量産金型を製作した後は、成形トライで樹脂温度、金型温度、射出速度などを調整し、得られた成形品の寸法・外観・機能を評価します。連続成形での品質やサイクル時間も、この金型を用いて確かめてから量産へ進めます。
例えば、試作金型で組付けを評価できた部品を、同じ樹脂グレードの量産金型で成形する場合を仮定します。ゲート位置や冷却水路を変えた箇所と、両金型での成形条件を記録します。量産金型の成形品を同じ寸法基準と使用条件で評価し、ゲートの痕やウェルドラインの位置、荷重がかかる部分の強度も確かめます。連続成形での冷却状態と寸法の変化を調べ、試作時の結果との違いを確認します。
試作金型と量産金型の選び方
形状変更を重ねながら部品を評価する段階では、変更する部分を修正しやすい試作金型を検討します。必要な試作品の数と使用樹脂を伝え、どの形状を変更できるかを金型の設計時に具体化します。
金型を簡略化する場合も、評価したい現象を再現できる構造が必要です。例えば、ゲートの痕やウェルドラインを評価したいならゲート位置が、冷却による変形を評価したいなら冷却水路の配置が試験結果に関わります。
継続生産に使う金型は、生産数量と期間、使用樹脂を基に、耐久性と冷却性能、清掃や部品交換のしやすさを検討します。簡易金型をそのまま少量生産に使える場合もあり、別の量産金型が必要かどうかは、必要な品質と数量を作れるかで判断します。
金型の使用回数を検討するときは、必要な良品の個数と、一回の射出で作る取り数を区別します。不良や停止がなく全ての成形品が良品になる場合を仮定すれば、必要ショット数は「必要な良品数÷一回の射出で作る個数」で求められます。計算結果に端数が出る場合は、ショット数を整数に切り上げます。実際に使う回数には、試打ちや立上げ、不良品を成形した分も含めて見込みます。
費用を比べる際は、金型の製作費に加え、形状修正、清掃・補修、交換部品にかかる費用を含めます。初期費用を抑えられても、予定する生産期間に修正や部品交換が多ければ、継続して使う費用は増えるためです。
まとめ
試作金型は製品の評価に、量産金型は必要な品質での継続生産に使います。金型材料や寿命は、この用途に加えて使用樹脂や数量、摩耗・腐食の条件から考えます。
試作品の合格結果を量産へ引き継ぐ際は、ゲートや冷却水路などの違いを踏まえ、量産金型で成形した部品も評価します。試作で調べたい性能と必要な個数を整理し、修正できる形状と量産時の生産数量を基に金型を検討しましょう。
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よくある質問
試作金型と簡易金型は同じ意味ですか?
試作金型は評価用の成形品を作るという用途を示します。簡易金型は共用の土台を使うなど、製作費や製作期間を抑える工夫をした金型で、試作にも少量生産にも使われます。実際の金型材料と構造を確認してください。
試作金型で合格しても、量産金型で評価する必要はありますか?
量産金型でも成形品を評価します。ゲートや冷却水路が変わると、樹脂の流れや冷え方が変わり、寸法・外観・強度に影響することがあるためです。量産金型で得られた成形品が、製品の基準を満たすか確かめます。
アルミニウム合金の金型は何回まで使えますか?
使用できる回数は、樹脂と充填材、製品形状、金型の損傷や保全状態によって変わります。その金型の材質・処理と摩耗状態も確認します。生産予定数量と必要な製品精度を基に、使用できる範囲と保全の条件を金型の製作時に具体化します。