プレス金型のクリアランスは、抜き加工に使うパンチとダイの刃先の隙間です。初期値は材質、板厚、必要な切断面、バリの許容範囲を基に決めます。片側・両側の計算方法と、試打ち後に切断面・バリを見て修正する手順を解説します。
この記事で分かること
- 01隙間の定義片側・両側の違いと計算例
- 02初期値の選定材質・板厚・形状・要求品質
- 03切断面の見方隙間の大小とバリ・刃先の状態
- 04試打ち後の修正測定結果と金型・材料の確認
片側クリアランスと両側クリアランス
片側クリアランスは、一方のパンチ刃先と、それに向かい合うダイ刃先の間隔を指します。丸穴の両側クリアランスは、ダイ穴径からパンチ径を引いた寸法差です。
パンチ径が10.00mm、ダイ穴径が10.20mmなら、両側クリアランスは0.20mmです。パンチとダイの中心が一致していれば、片側は0.10mmになります。これは片側・両側の違いを示す計算例で、特定の材料に推奨する値ではありません。
| 表し方 | 同心の丸穴での計算 | 上記の例 |
|---|---|---|
| 両側クリアランス | ダイ穴径 − パンチ径 | 10.20 − 10.00 = 0.20mm |
| 片側クリアランス | (ダイ穴径 − パンチ径)÷ 2 | 0.20 ÷ 2 = 0.10mm |
芯ずれがある丸穴では、直径差が同じでも位置によって隙間が変わります。上記の例でパンチの中心が一方向へ0.03mmずれたと仮定すると、その方向の片側の隙間は0.10-0.03=0.07mm、反対側は0.10+0.03=0.13mmです。両側の合計は0.20mmのままでも、二つの隙間には差があります。これは芯ずれと隙間の関係を示す計算例で、実測値や推奨値ではありません。長穴や角部を含む形状も、向かい合う刃先の位置ごとに隙間を確認します。
板厚に対する割合で指定する場合
クリアランスは、板厚に対する割合でも表します。たとえば、板厚2.00mmに対して片側0.10mmなら、片側の比率は0.10 ÷ 2.00 × 100 = 5%です。同じ例の両側0.20mmは、板厚の10%になります。
数値を記載するときは、「片側0.10mm」「両側で板厚の10%」のように、片側・両側と単位を明記してください。早見表を使うときも、その割合が片側と両側のどちらを示すか確認します。
クリアランスの初期値を決める条件
初期値は、被加工材の材質と板厚に対応する目安から選び、製品形状と必要な切断面に合わせて検討します。目安表の適用材料、板厚範囲、加工方式を確認し、使用する設備に最小クリアランスの指定があれば、その制限も確認してください。
材料の延性は、破断するまでに変形できる性質です。延性の大きい材料ではバリが出やすく、材質が変わったときは同じ板厚でも抜け方を確認する必要があります。早見表の値を初期値として試打ちし、製品の寸法・切断面・バリが要求を満たすか確認します。
角部では、直線部と同じ隙間にしても刃先の摩耗や欠けが早く生じることがあります。角部の丸みやクリアランスを検討するときは、製品形状の要求と、角部の切断面を確認してください。
せん断面を長くするための隙間と、刃先の摩耗を抑えるための隙間は、異なる場合があります。必要な切断面を得られるかに加え、加工を繰り返したときのバリの変化も確認します。
切断面とバリから分かること
通常の抜き加工の切断面には、ダレ、せん断面、破断面、バリが現れます。ダレは刃先が入る側の縁にできる丸み、せん断面は刃先によって形成される比較的滑らかな面です。破断面は材料が割れて分離した面で、バリは切断部の縁に残る突起です。
抜き加工では、パンチ側とダイ側の刃先付近から生じた亀裂がつながって材料が分離します。クリアランスが小さすぎると亀裂がつながらず、切断面の一部が再びせん断される「二次せん断」が生じることがあります。
次の表は通常の抜き加工で見られる傾向と、金型の確認箇所です。
| 隙間・刃先の状態 | 切断面やバリに見られる傾向 | 確認項目 |
|---|---|---|
| クリアランスが小さい | せん断面が長くなる傾向があり、小さすぎると二次せん断が生じる場合がある | 実際の隙間、切断面、加工荷重、刃先の摩耗・欠け |
| クリアランスが大きい | ダレや破断面の傾きが大きくなり、せん断面が短くなる傾向 | 材質・板厚に対する隙間、製品寸法、バリ高さ、反り |
| 隙間に偏りがある | 位置によって切断面やバリの大きさが異なる | パンチとダイの位置関係、取付状態、刃先の局所的な損傷 |
| 刃先が摩耗している | 加工を重ねるうちにバリが増えることがある | 刃先の丸み、欠け、加工回数、再研磨の履歴 |
通常の抜き加工では、クリアランスを小さくすると加工荷重が増えることがあるため、長いせん断面が得られるかと、刃先への負担を併せて確認します。
バリの高さは、隙間の大きさに加え、材質、刃先の摩耗、隙間の偏りにも左右されます。クリアランスを広げてバリを小さくする工具設計もあるため、隙間を変えた効果は、実際の製品でバリ高さと切断面を測って確かめます。
長いせん断面が必要な場合
通常の抜き加工で必要な切断面を得られない場合は、シェービングやファインブランキングを検討します。シェービングは、抜き加工後の切断面を薄く削って仕上げる方法です。
ファインブランキングは、小さなクリアランスと、材料を強く押さえる機構を組み合わせる精密せん断です。この加工には専用のプレス機と、板押さえや下側からの押さえを備えた金型が必要です。
試打ち後の測定と修正
試打ちで加工したプレス製品は、寸法と切断面の状態を確認し、バリの発生位置と高さを測定します。直線部、角部、バリが目立つ箇所を図面上の位置と対応させると、修正前後の同じ箇所を比較できます。
特定の位置でバリが大きい場合は、その位置の隙間と刃先を確認します。たとえば丸穴の一方向でバリが目立つなら、図面と写真へその位置を記し、反対側の切断面も比較します。ダイ穴径とパンチ径の差、中心位置、刃先の摩耗を確認し、修正後も同じ位置で測ります。これは確認手順の例であり、特定の金型でバリを改善した実績ではありません。材料ロットを変えた直後に変化した場合は、板厚や硬さなどの材料条件も比較してください。刃先の摩耗が認められる場合は再研磨や交換、芯ずれがある場合は位置や取付状態の修正を検討します。
修正前後の同じ箇所を比べる
クリアランスを変更する場合は、変更箇所と寸法を記録し、再度加工した製品の寸法・切断面・バリを確認してください。修正前後の写真と測定値を図面上の同じ位置に対応させ、使用した材料規格や板厚も残すと、隙間と製品品質の変化を比べられます。
製品のせん断面やバリの根元から、加工時のクリアランスを推定する方法もあります。ただし、刃先摩耗で根元が丸くなるなどの影響があるため、製品からの推定値と金型で確認した隙間は区別して記録します。
量産中のバリの原因調査と対策は、プレス加工でバリが発生する原因の記事で詳しく解説しています。
まとめ
クリアランスの数値には、片側・両側の区分と単位を明記します。材質・板厚・形状・必要な切断面に対応する初期値を選び、試打ちした製品の寸法と切断面、バリを評価してください。
修正する箇所は、製品の測定位置に対応する隙間と刃先の状態から検討します。隙間を変更した後も同じ位置で測定し、バリだけでなく寸法や切断面が要求を満たしているか確認します。
相型MATCHINGの登録企業へ相談する
プレス加工や金型製作を依頼する企業を探す場合は、相型MATCHINGを利用できます。無料会員登録後、対応する加工分野から企業を探し、製品図面や材質、板厚、生産数量を示して見積りを依頼できます。
よくある質問
クリアランスは片側と両側のどちらで指定しますか?
どちらの表し方もあります。数値とともに「片側0.10mm」「両側で板厚の10%」などと明記します。同心の丸穴では、ダイ穴径とパンチ径の差が両側、その半分が片側クリアランスです。
クリアランスは板厚の何%にすればよいですか?
材質、板厚、抜き形状、必要な切断面によって適した比率が異なります。目安表の片側・両側の定義と適用条件を確認して初期値を選び、試打ちで寸法・切断面・バリを確認してください。
クリアランスが小さすぎると何が起きますか?
通常の抜き加工では、加工荷重が増えたり、切断面に二次せん断が生じたりすることがあります。切断面の状態と、刃先の摩耗・欠けを確認して調整を検討します。
クリアランスが大きいとバリは増えますか?
隙間が大きすぎてバリが増える場合も、隙間を広げてバリを抑えられる場合もあります。材質と刃先の状態、隙間の偏りを確認し、変更前後の製品でバリ高さを比べてください。ダレや破断面の傾き、製品寸法も評価します。
量産中にバリが増えた場合は何を確認しますか?
バリが大きい位置の隙間、刃先の摩耗・欠け、パンチとダイの芯ずれ、抜きカスの排出状態を確認します。材料ロットを変えた場合は、板厚や硬さなどの変化も比較してください。