プレス加工で割れが生じる原因|被加工材・製品形状・加工条件から原因を特定する方法

更新日 2026/10/02(金)
プレス
プレス加工で割れが生じる原因 被加工材・製品形状・加工条件の確認内容

プレス加工の割れは、被加工材に亀裂や破断が生じる不良です。割れた箇所と工程を確認し、被加工材の特性、製品形状、金型の状態、加工条件から原因を検討します。

この記事で分かること

  1. 01割れとは何か亀裂・破断が生じる不良
  2. 02確認する箇所と工程パンチ肩・穴縁・曲げ外側
  3. 03割れ方ごとの確認内容深絞り・伸びフランジ・曲げ
  4. 04主な原因被加工材・製品形状・金型・加工条件

プレス加工の割れとは

プレス加工の割れとは、板材を絞る、張り出す、曲げる、穴縁を広げるなどの加工中または加工後に、被加工材へ亀裂や破断が生じる不良です。被加工材が加工に必要なだけ伸びられない場合や、特定の箇所へひずみが集中した場合に起こり、製品に求められる形状・寸法・強度を確保できません。

深絞り製品の肩付近や側壁、穴抜き後の縁、曲げ外側などで発生します。パンチ肩は金型のパンチ先端にある丸みで、この部分に接する板材の割れを調べる際は、製品上の位置と金型の位置を対応させます。

プレス金型と加工条件を確認するイメージ

割れた箇所と工程を確認する

割れが生じた工程、製品上の位置、亀裂が伸びる方向を確認します。深絞り中の割れ、穴縁の伸びフランジ割れ、曲げ外側の割れでは、考えられる原因と確認する内容が異なります。

金型、被加工材、しわ押さえ力、潤滑、加工速度を変更していた場合は、変更前後の割れ方を比較します。穴縁から割れた場合は、発生位置と板厚の減少に加え、前加工した端面の傷やバリの向きも確認します。

項目確認する内容原因を検討する手がかり確認方法
割れた工程初絞り、再絞り、穴抜き後、曲げ、成形後亀裂や破断が最初に現れた工程工程番号と使用した金型を確認する
位置・向きパンチ肩、ダイ肩、穴縁、曲げ外側、き裂の方向深絞り、伸びフランジ、曲げなどの割れ方図面と製品の写真で発生位置を確認する
被加工材規格、板厚、圧延方向、表面状態被加工材の特性や前工程との関係割れた工程・位置ごとに規格と板厚を確認する
金型と加工条件肩半径、接触位置、しわ押さえ力、潤滑、加工速度被加工材の流れ方と金型との摩擦金型との接触位置と加工条件を確認する

原因を確認する順序

  1. STEP 1割れた工程を見るどの成形工程で最初に亀裂や破断が現れたかを確認します。
  2. STEP 2位置と向きを見る図面上の位置と割れた製品の位置を確認します。
  3. STEP 3加工と発生時期を確認する深絞り、伸びフランジ、曲げのどの加工で割れたか、加工後に発生したかを確認します。
  4. STEP 4原因を挙げる被加工材、製品形状、金型、加工条件から原因を挙げます。

割れ方ごとの確認内容

割れた位置と工程によって、確認する項目は異なります。深絞り中にパンチの肩付近で破断した場合は、板厚の減少、肩半径、しわ押さえ力、潤滑状態を確認します。穴抜き後の縁から割れた場合は、打抜き端面、バリの向き、穴縁の変形を確認します。次の表に、割れた位置・工程ごとに考えられる原因と確認する内容を示します。

割れた位置・工程主な原因優先して確認する項目確認時の補足
底部・パンチ肩に接する箇所
成形中
成形荷重、肩半径、被加工材の流れ方、潤滑、被加工材の機械的性質板厚の減少、パンチとダイの肩半径、しわ押さえ力、ブランク形状しわ押さえ力を強くすると、被加工材が金型内へ流れ込みにくくなる場合がある
ダイ肩に接する箇所
側壁の一部
ダイ肩の半径や表面形状、しわ押さえ力による流入抵抗ダイ肩の半径・滑らかさ、しわ押さえ力、潤滑状態小さなダイ肩半径や大きなしわ押さえ力は、絞り時の材料の移動に対する抵抗を増す要因になる
穴縁・フランジ端伸びフランジ変形、打抜き端面、打抜き時に端部へ生じたひずみせん断面、破断面、バリの向き、穴広げ性打抜き端面の状態も穴広げ性に影響する
曲げ外側曲げ内側の半径、圧延方向、板厚、端面の傷曲げ線と圧延方向の関係、曲げ内側の半径、被加工材の機械的性質曲げ線と圧延方向、曲げ内側の半径を確認する
成形後
時間がたってから発生
材質に応じた加工硬化・残留応力。高強度鋼板では水素脆化も検討発生までの時間、保管環境、被加工材の種類、追加加工絞り後の置き割れと、高強度鋼板の水素脆化に関係する遅れ割れを、材質と加工履歴から調べる

穴縁の割れでは打抜き端面を確認する

伸びフランジ割れは、穴縁やせん断した端部を広げるときに生じます。穴広げ性には、打抜き時に端部へ生じた塑性ひずみ、傷、バリの向きが影響します。引張試験の全伸びは試験片が破断するまでの伸びを表し、穴広げ性は打ち抜いた穴を広げる試験で評価します。穴縁の成形を検討するときは、対象材料の穴広げ性と、その試験に用いた端面の加工条件を確認します。端面の加工ひずみの影響を詳しく調べる場合は、硬さ分布とき裂の進展を評価する方法があります。

端面の評価方法と試験条件は、被加工材、打抜き条件、製品形状に合わせて決めます。

CAE解析と実際の割れを比較する

CAEは、コンピューター上でプレス加工時の変形を解析する方法です。ひずみや板厚の減少が集中する位置を予測できます。解析結果は、材料モデル、摩擦係数、板厚、金型の動作条件、しわ押さえ位置によって変わります。解析で割れが予測された位置と、実際の割れ位置、板厚分布、金型との接触位置を比較します。

伸びフランジ割れの予測には、端部のひずみと、端部から離れる方向へのひずみの変化を使う方法があります。加工可否を判断するときは、解析結果と、実際の割れ位置・打抜き端面を確認します。

割れの原因を確認する

割れ方と発生位置を基に、被加工材の特性、製品形状、金型の接触状態、加工条件を確認します。複数の要因が重なって割れる場合もあります。

調査する場面割れに関係する要因対策を検討する際の確認内容
深絞り中の割れしわ押さえ力が強すぎると被加工材が金型内へ流れ込みにくくなり、割れやすくなる場合がある被加工材の特性、製品形状、肩半径、潤滑、金型との接触位置
穴縁・フランジ端の割れ打抜き端面の状態、端部のひずみ、端部周辺のひずみ分布が穴広げ性の評価に関係する打抜きクリアランス、端面の傷・加工硬化、バリの向き、穴広げ性
CAEでの予測材料モデルなどの設定によって板厚分布や破断の予測結果が変わる材料モデル、摩擦係数、板厚、金型の動作条件、解析結果と実際の割れ位置・板厚分布

試験方法は対象製品ごとに決める

原因を確かめる試験は、製品形状、被加工材、金型、プレス機、品質基準に合わせて計画します。変更する加工条件、評価する位置、合否基準は、被加工材の技術資料、金型とプレス機の仕様、図面の品質基準を確認して決めます。

例えば、穴縁を広げた後にき裂が生じた場合は、図面と写真にき裂の開始位置を示し、広げる前の打抜き端面に傷やバリがあるかを観察します。打抜き条件や穴縁の形状を変更する試験では、変更内容と、き裂の発生位置・端面状態・板厚の測定結果を記録します。これにより、変更した条件と割れ方の変化を具体的に比較できます。

まとめ

割れが生じた工程、位置、亀裂の向きを確認します。深絞り、伸びフランジ、曲げのどの加工で割れたか、加工後に発生したかを調べます。

被加工材の特性、製品形状、金型の接触状態、加工条件と割れ方の関係を調べ、対象製品に合う対策と試験方法を決めます。

プレス加工の割れについて相談できます

相型MATCHINGでは、製品条件や加工内容に合う企業探しを案内しています。割れ不良について相談する場合は、発生位置、材質・板厚、加工条件、試した対策を整理してください。

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よくある質問

プレス加工で割れたら、最初に何を確認しますか?

どの工程で、製品のどこから、どちら向きに割れたかを確認します。被加工材や金型を変更していた場合は、その内容を確認します。しわ押さえ力、潤滑、加工速度などの加工条件も確認します。

深絞りでパンチ肩付近が割れる場合、しわ押さえ力を下げれば直りますか?

しわ押さえ力が大きく材料の流入を妨げている場合は、押さえ力の調整を検討します。パンチとダイの肩半径、ブランク寸法、潤滑、板厚の減少量、被加工材の特性を確認し、しわ押さえ力を変更するか判断します。

金型の肩半径を大きくすれば、割れは必ず減りますか?

パンチ肩の半径が小さく、接する板材へ力が集中している場合は、その半径の変更を検討します。割れた位置に対応するパンチとダイの肩形状、材料の流入、図面に示された製品形状を確認して変更量を決めます。

穴抜き後の縁から割れる場合、材料の伸び以外に何を見ますか?

打抜き端面のせん断面と破断面、バリの向き、端面の傷、打抜き条件を確認します。穴広げ性は穴広げ試験で評価する性質です。対象材料の穴広げ性と試験条件、実際の打抜き端面の状態を確認します。

曲げ方向と圧延方向は、割れにどう関係しますか?

板材の機械的性質は、圧延方向とその直角方向で異なることがあります。曲げ外側の割れを調べるときは、曲げ線と圧延方向の関係、曲げ内側の半径、板厚、被加工材の機械的性質を確認します。

成形後しばらくして割れた場合も、成形中の割れと同じ確認でよいですか?

加工後の割れは、材質と加工履歴に応じて調べます。ステンレスや黄銅の厳しい絞り後には置き割れが生じる場合があり、高強度鋼板では成形ひずみ・残留応力・水素が関係する遅れ割れを検討します。発見までの時間と保管環境も記録します。

割れの原因を調べるには、どの記録が必要ですか?

割れた位置を示した図面と写真、被加工材の規格・板厚、割れた工程、割れ発生時の金型の状態と加工条件を準備します。すでに対策を試した場合は、変更内容と結果も記録します。